Wednesday, 17 April 2024

オバマ政権、TPP発効に不可欠な議会の支持獲得断念

オバマ政権、TPP発効に不可欠な議会の支持獲得断念

成立絶望的、自由化停滞、世界の経済成長も減速の恐れ

2016年11月12日


オバマ政権が、環太平洋連携協定 (TPP) 発効に不可欠な議会承認の年内獲得を断念したことが11月11日に明らかになった。

米議会の支持を得るのは困難と判断した。

日米など12か国が中国に対抗し、アジア太平洋地域の経済ルール確立を目指した野心的な協定の発効は、TPP脱退を主張する次期大統領のトランプ氏が方針転換しない限り、絶望的となった。

米国の内向き化に伴い、貿易自由化の流れが停滞し、世界経済の成長が一段と減速する恐れがある。

トランプ氏は、代替策として日本に2国間の貿易協定締結を打診する可能性もある。

オバマ政権は大統領選でトランプ氏だけでなく、民主党候補クリントン氏もTPP反対を掲げたため、自身の任期が終わる前の年内の議会承認に全力を挙げていた。

しかし、クリントン氏よりも強硬に反対し、脱退を訴える共和党のトランプ氏が勝利したことで、上下両院の過半数を共和党が握る議会の支持を得るのは不可能と判断したとみられる。

アディエモ大統領副補佐官も11日、TPPについて「議会が次期大統領と協議する課題と考えているのは承知している」と述べ、年内の議会承認が極めて困難になったとの認識を示した。

米議会の共和、民主両党首脳部は政権側に承認手続きを進める意向はないと伝えた。

上院共和党のトップであるマコネル院内総務は9日の記者会見で「TPPが年内に議会提出されることは確実にない」としていた。

オバマ大統領はアジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議が今月開催されるペルーでTPP参加国首脳と会談する予定で、大統領選後の状況について説明する。

トランプ氏は選挙戦でTPPを破棄する代わりに「それぞれの国と個別に協定を結ぶ」 と主張。

17日にニューヨークで安倍首相と会談する際に、TPP破棄の意向を伝え、日本との2国間協定の締結を持ち掛ける可能性がある。

TPPによる輸出増や投資拡大を狙った安倍政権の通商戦略は修正を迫られそうだ。


(2016年12月1日号掲載)