Thursday, 28 March 2024

知らない / 知らなかった

 

▽母はスイカを知らなかった。別のスイカは知っている。入院中の親戚を訪ねるため、仙台駅に降りた母は「スイカ発売中」という横断幕を目にした。夏の見舞い品にふさわしい。JRとJA (全農) が提携してスイカを売っていると早合点し、駅員さんに売場を尋ねると「券売機で買えますよ」。最初に引換券を買い、それを渡したら持ってきてくれるのね。引換券の購入ボタンが見当たらない。同じ駅員さんに「代金をここで払います。小ぶりでもいいわ。1個運んできてもらえません?」とお願いする母。全てを理解した駅員さん。「ICカードのことです。申し訳ございません」と深々と頭を下げていたが、肩がユサユサと揺れていた。母は「(横断幕に)  Suicaと書いてくださる? カタカナにはアクセント記号が必要ね。スイイカは違うのよ」と憤慨していた。▽東京生活を高校から始めた2年目の冬。私は上京した同郷の3人を得意気に案内していた。中野サンプラザを目指して中央線特快に乗り込ませたら、新宿駅始発は中野駅に停車しなかった! 知らなかった! 慌てて逆方向の電車に飛び乗ったものの、M男の提案で彼らの貴重品を入れていたボックスを棚に忘れる。ドタバタ騒動は誰の責任か、という無益な審議が始まり、“東京人” を鼻にかけた私のチョンボが元凶とされた。 (SS)
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▽いくつになっても、知らないことが多い。最近、ピーナッツは「ナッツ」ではないことを知って驚いた。アメリカ人の2020年の平均寿命は77.3歳。コロナの影響で前年より1歳半も短くなり、第2次世界大戦以来の大きな落ち込みとのことだ。世界第1位の日本人女性と10歳も違う。「取り付く島もない」が正しく「取り付く暇もない」は間違いだと知ったのは、社会人になってから。「ひ」と「し」が入れ替わる浅草のおじさんの方言が元凶かもしれない。結婚当初、「40のスペルは Fourty じゃなくて Forty」と旦那に言われ、自分の無知ぶりを痛感した。でもなぜ Forty なのか、未だに分からない。▽知らなかったと言えば、友人が先月送ってくれた「手動瞑想」という動画。手を動かして行うマハサーティー (Mahasati Meditation) というビギナー向けの瞑想で、試しに数日ほどやってみたところ、これがとても良い。意図的に手を動かすので、集中力が維持しやすく、今まで1分も持たなかった自分でも5分も続けることができた。瞑想をすると幸せホルモンの「セロトニン」が出るらしい。瞑想の効果が、医学的、科学的に証明されて、今、多くの一流企業が瞑想を研修に採用しているとのこと。ご機嫌でいるためのスキルとして、毎日、数分間続けていきたい。(NS)
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yoko
私は西日本出身だ。アメリカに留学して、ホストファミリーと1年過ごした後、アパートを借りた。初めての一人暮らし。日本の食材が買いたくなると、日系マーケットに行っていた。そこで判明した知らなかったこと。西と東では食べ物が違う (ものもある)。例えば、ひなあられ。子供の頃から食べ慣れたひなあられは、しょうゆ味の茶色と緑、エビ味のピンク色、塩味の黄色、 海苔味の黒のまだら、そして一番好きだった甘いマヨネーズ味の白色のあられがミックスされたお菓子。なのに、ひなまつりの時期に日系マーケットに並んでいたのは、パステルカラーの砂糖菓子。「最近、ひなあられは、こういうのに変わったんだ——。残念」と思っていた。数年後に、関東と関西のひなあられが違うということを知った。それから海苔。お店で売っているおにぎりは「海苔に味がなくて美味しくない」と思っていた。西は味付け海苔がメジャーなのに対して、東は焼き海苔なのも知らなかった。うちの方では焼き海苔は手巻き寿司の時にしか使わない。日系とは関係ないが、ハーフアンドハーフも1% や Fat Free等のミルクの一種だと思っていた。ある時、シリアルにかけて食べたら、ビックリ! (YA)
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reiko-san
△ガラパゴスケータイを略してガラケーということを、ほんの少し前まで知らなかった。周辺地域から海によって隔離され、独特の生態系を維持してきたガラパゴス諸島が由来、とのこと。こんな名称を考えつくなんて奇天烈 (きてれつ) すぎる…。△アメリカ育ちの夫と付き合っていた頃、彼を日本の私の実家に連れて帰った。年の離れた私の弟にローラーブレードのやり方を説明する彼。「ニーをベンドして!」 kneeもbendも知らなかった小学生の弟、何をどうすればよいかわからずポカーン。△日本に住んでいた頃、OBの誰それさん、OGのあの方など、なんの違和感もなく聞いたり使ったりしていたが、OB=Old Boy、OG=Old Girl だということ知らなかった! ていうか、知っている人、いるのだろうか? 確かにOldかもしれないけれど…。こちらだと alumni/alumna になると思うが、交換留学でサンディエゴに来た頃、 私はこの言葉を知らなかった。留学先の大学キャンパス内の店で、デザインに惹かれて「ALUMNI」と大きくプリントされたスウェットシャツを購入 (言葉の意味を把握せずデザインに走るのは、私の昔からの悪いクセ)。卒業生でもないのに堂々とよく着ていたな〜。知らないって怖いもの知らず (笑)。(RN)
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suzuko-san
私の友人の一人に、非常に (異常に?) 猫好きの人がいる。私と彼女はインドに約3か月、インド料理を習いに行った仲だが、その際、飼っていた猫13匹の世話を旦那に押し付けて出かけ、旦那は迷惑三昧の日々だった。その彼女に「ねえねえ、あれ知っている? これ知っている?」と尋ねると「ううん、あれも、これも知らない。私に恥をかかせないで!」と真顔で憤慨する。「私があなたより知っていることは、 猫以外には何もない」とも。もちろんこれは謙遜だが。私は普通に生きてこなかった分だけ、確かにいろいろな経験から、ほんの少しだけ多めの雑知識があるかもしれないが、しかし、しかし、世の中見渡してみても、まさしく知らないことだらけ!である。こんな私に、日本語を教え続けて14、15年の生徒がいる。小学校の低学年だった彼は今では大学4年生になり、勉強に励んでいる。最近のレッスン内容は、この『ゆうゆう』 の記事の理解に努めることと、自由会話。時事問題だったり、宗教関係だったり、映画やお酒の話題だったり。23歳の彼はかなり博学で「先生、これ知っている?」と聞かれるたびに、「知らない」と答えなくてはいけない自分がそこにいる。件 (くだん) の彼女ではないが 「〇〇君より知っていることは、日本語以外に何もない!」。ああ、情けない! アーメン! (Belle)
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jinnno-san
ラテン音楽やニューオーリンズ・ジャズ、西欧フォークソング系が好きなわたしは、車内で聴くのは、もっぱらティファナのラジオ局でスペイン語放送 笑。日本の歌謡曲? (いつの間にか Jポップって呼ばれてる? 笑) は、ぜーーーんぜんと言っていいほど知らない。知ってる知ってる!って思う曲は、よーく考えると、実は2年に一度行くかどうかのカラオケ屋さんで、他人が歌っているのを聞いたことあるから 笑。それを歌ってるご本人は、もちろん曲名さえ知らない 笑。耳に残るはカラオケだけ 笑。友達のH部長は、いつも車でJポップらしきものを聴いている。知ってると思う曲は、他人が歌ってたカラオケ。知らない曲は「誰コレ? 新人?」と尋ねると15年前の曲だったり 笑。新人でも新曲でもない 笑。世の中では懐 (ナツ) メロなんだろうけど、わたしが知らないばっかりに、わたし的には、その曲は新曲で新人さんになってしまう。知らないって、ある意味いいよ~。だって、これから知る楽しみがあるじゃーん! ということで、皇室ご婚約ニュースなどと比べても、ホットでも何でもない4年前の記事を知らなかったもんだから、今頃読み出して楽しんでいるわたしであった (つまり、、ニュースも音楽も10歩ぐらいズレていながら充分に楽しめる、便利なわたしってこと 笑)。(りさ子と彩雲と那月と満星が姪)
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少しだけ知った「障害者の世界」。私には中学1年生の時に出会った親友がいる。同じ高校に進学し、通学は毎日一緒、高校時代の青春を謳歌し、成人して国内外を問わず、あちこち旅行した。彼女は中学、高校時代、学年一のモテモテ女で、市のミスコンで1位になった。サンディエゴにも会いに来てくれた。そして、15年ほど前に「私、病気になった。脊髄小脳変性症だって」と言われた。それは『1リットルの涙』という映画やTVドラマ化もされた病気。国指定の難病で、徐々に体が動かなくなる病気だ。彼女の症状は進行し、やがて障害者用の車に乗り始め、仕事は障害者枠、杖をついて生活していた。その後は、車、仕事も諦めて車椅子生活。現在は施設で暮らしている。上手に指が動かせないので、テキストではなく、 ライン電話で彼女がゆっくり話すのを聞いている。帰省する時しか会えないけれど、私も彼女のおかげで「障害者の世界」を学ぶことができている。車椅子の使い方、外出時のトイレの確認とサポート、 誤飲を防ぐための食べ物の確認など。一番辛いのは、周りにいた人が次第に離れていき、孤独を感じることだ。まだまだ足らないが「障害者の世界」をもっと知り、彼女を支えていきたいと思う。(IE)
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△アメリカでは、子供の望ましくない行動を注意しても繰り返してしまった時、年齢×1分を、椅子や部屋の隅で過ごさせ、脳をクールダウンさせる「Time Out」というしつけ方法があるのは知っていたが、寝かしつけ時に赤ちゃんをひとりにして、泣いてもすぐにあやしたりせず放置する「Cry it out」という sleep training があることを、つい数日前に近所のママさんから教えてもらった。うちの子はもう大きいので必要ないけど、知っていたとしても、泣かせたまま放置するのはできなかったかも。赤ちゃんの頃から別の部屋でひとりで寝かせるのは知られていることだが、日本人の私には、なかなかワイルドな子育てだなと感じた。 △つい最近、あの有名な『チョコレート工場の秘密』(原題:Charlie and the Chocolate Factory) の作者が児童に大人気のロアルド・ダールであることを知らなくて、11歳の娘に手厳しく叱られた。これ、知らないとダメでしょうか? △自分の母方の祖父母の名前をつい最近まで知らなかった。母がまだ高校生の時に祖母は亡くなっているし、祖父も私が生まれる前には他界していたので、あまり話を聞いたことがなかったのもあるけど、どうして一度くらい、私も尋ねなかったのだろうと、今さらながら思った。(SU)

(2021年11月16日号に掲載)