マイホーム

 

30数年前に最初のマイホームを手に入れた。家屋の造りや外観はどうでもよく、いささかの居住空間と仕事環境を確保したかった。物質は幸せの本質を与えてくれない。漂泊俳人・種田山頭火 (たねだ・さんとうか) のように “草庵の安住感” だけでOK。新居の条件は会社まで車で1分以内の距離という一点のみ。殺風景ながら最初の物件が条件に適い、電光石火の早業 (はやわざ) で購入。見たのは1件だけ。所要時間15分。知人に話したら「よほどの大物か大馬鹿者」とのコメント。床の一部はレッドオークのハードウッドフロアだった。10年後、全体を同じ床板にしようと、フローリング専門業者に張り替えを依頼する。 事前に材料費 (かなり高額)、工事終了時に作業費を支払うことで合意。初日に様子を見に行くと、家全体がレッドオークになっていた。仕事が早すぎないか? 何かがおかしい。業者に尋ねると、口ごもりながら「絨毯を剥がしたら、全部ハードウッドフロアだったよ」。し、知らなかった!!  材料費の返金要求に抵抗する業者。オリジナルの床材は古く、サンディングマシーンで研磨した後、傷跡や隙間をウッドフィラーで塗り替え、縁取りを整える着色と、ウレタン塗装でツヤを出す作業が必要で、相当額になると説得される。どう考えても高くついた。マイホームに無頓着すぎた私の大ポカ。大物? 大馬鹿者? 後者かもしれない。(SS)
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▽「田舎の家とおんなじだべ〜」と祖母。その昔、白川郷の合掌造りの家を見学していた時のこと。 確かに、福島県会津の故郷の茅葺 (かやぶ) き屋根の生家と同じだった。黒光りしている柱や梁 (はり)、土間には釜戸があって、囲炉裏 (いろり) の周りで食事をとり、日差しが気持ちよい縁側もあり、屋根裏で蚕 (かいこ) を飼い、ごく当たり前に、米農家として自給自足の生活をしていた。子どもの頃は、寒くて古い家だと思っていたが、都会暮らしをしてみると、里山と共生したとてもエコな家だと思うようになった。▽テスラやスペースXの代表イーロン・マスクが豪邸を売り払い、5万ドルの狭小住宅暮らしを始めたそうだ。彼が住んでいるBoxabl製の折りたたみ式ユニットCasitaは、台所、浴室、電気、配管、冷暖房が全て工場でセットアップされているので、目的地に到着したら広げるだけでOK。基礎に取り付け、電気、ガス、水道につなげれば生活が始められるとのこと。おしゃれなワンルームマンションのようなもので、すでに5万人以上が順番待ちリストに名を連ねている。さらに大きめのユニットも登場するらしい。▽小さなマイホームが好きだ。35年以上も前に移り住んだ現在の家を丸ごと片付けて、夫婦一つずつのカシータを持てば、やもめになった時の準備もできる。友人夫妻もカシータ計画に乗り気で「同じ敷地に建てよう」と盛り上がっている。(NS)
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yoko
今の家に暮らし始めて12年目に入った。もともと築40年のコンド。12年も住み続けると、いろいろとガタが出てくる。ごく最近では、家の中の半分で電気が使えなくなった。エレクトリシャンを呼び、点検してもらったところ、コンセントの一つが壊れたために、そこと繋がっている全ての所は電気が使えなくなっていた。数年前は水漏れで、バスタブのオーバーフローとシャワーのパイプを取り替えないといけなくなり、シャワールームの壁とタイルも張り替えた。今でも直したいところが沢山ある。ベッドルームのドア (枠が壊れているので閉まらないし、ドアノブを回さないでもドアを押すと開く)、バスルーム: 床 (ラミネートが剥がれてきている)、壁 (穴あり、ペイントも途中止まり)、シンクの上の電燈 (夫が数年前に外してそのまま)、メディスンボックス (夫が数年前に外してそのまま)、タオルハンガー (同様)。キッチンカウンターのタイル (割れている箇所がいくつかある)、キッチンの壁 (ペイントやりかけ途中)。リビングルーム (大雨が降ると窓から雨漏りする)。などなどいろいろあるが、生活に困らないので、そのままになっている。今年こそはどうにかしたい。 (YA)
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suzuko-san
 私はUTC 住まいだが、このコンドに住み始めて22年弱。期待も計画もしないうちに、ここの住所が人生で一番長くなってしまった。確かに、この辺りはゴールデントライアングルと称され、フリーウエイへのアクセスは5、805、52に至近でとても便利。スーパー5店、ドラッグストア2店、ショッピングモール5、6件、数々のレストラン、映画館さえも歩いて行ける距離にある。田舎で人里離れたところで暮らす方を好む人もいるが、私は便利な都会のど真ん中に住みたい、という願望の持ち主なので、ぴったり。おまけに、高層ビルディング群に背を向ければローズキャニオンがあり、複数のハイキングトレイルが楽しめる。実際に、このキャニオンの幾つもあるコースを日々歩いている。まさに都会と自然が共生しているエリアで、引っ越す理由が見当たらないのだ。最初は、まあ2、3年と踏んでいたこの住まいも、長くなるにつれ、このライトが気に入らない、キッチンが古臭い、壁の色がちょっと暗い、などの不満が生じてきて、昨年夏に3度目の改装をし、私のマイホームをほぼ自分色に染めることができた。東京で最後に15年住んだマンションでも「この部屋はなぜか落ち着く」と、人からよくお世辞を言われていたが、マイホームで落ち着けなかったら、どこで落ち着く!? (Belle)
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jinnno-san
区画整理で実家が取り壊しになり、両親が新築を建てた。そこには “わたしの部屋” がある (らしい)。コロナ渦で帰省してないから、わたしの部屋に入ったことがない 笑。わたしがお料理教室を 開けるようにと (料理教室はしたこともないし、やる、とも言ってないけど、、笑)、広い台所 (家の中で最大面積 笑) を設計し、わたしがお茶を教えられるようにと (ちょっと待って。お茶は習っていたけど教えられん 笑)、 炉とにじり口のある茶室まで作った! お母さんも親戚も、だーーーれもお茶を点てた姿を見たことない 笑。どうしよう、、こんなにわたし仕様に作ってもらって、活用できなかったら、、というプレッシャー?を感じて、、いない 笑。誰かが何とかするでしょう! 笑。話は変わるけど、80歳になるお友達は、NM州に2エーカーとか気が遠くなるような広大な土地を買い、小屋を建てて住んでいた。近所は見えない 笑。しばらく留守にして帰ってみると、知り合いが勝手に小屋の隣にトレーラーを据えて、フェンスまで立てて彼女の土地に住みついていた 笑。しかも、その人も2エーカーの土地を隣に持っているのに、なぜ、わざわざ他人の土地に? 笑? 一つ言えるのは、マイホームって住んでる人が違うから、いろんなストーリーがあってウけるーー! (持ち家のない、お気楽なわたし~ 笑) (りさ子と彩雲と那月と満星が姪)
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昔からモデルハウスを見学するのが好きだ。日本の実家の近くに、マイホームセンターという住宅展示場があり、暇があると散歩がてらに、いろいろな家を見学していた。見学しながら、将来はこんな家に住みたいな〜とか、素敵なインテリアに囲まれて優雅な生活をしたいな〜、などと妄想するのが楽しいのだ。渡米してからも相変わらず、豪邸が建ち並ぶ住宅街を見て回ったり、モデルハウスを見学するのが好きだったが、オシャレな生活を夢みることはなくなった。最近、新居を購入し、これを機に部屋をモデルハウスのようにしたいと思ったが、自分が思い描いていたような空間がどうしても作れないのだ。インテリアのセンスもないし、どうしてもゴチャゴチャした感じになってしまう。それもそのはず、部屋を片付けても、すぐ そばから子供たちや犬が汚してくれる。娘たちが学校から帰ってきた後、バックパックや脱ぎ捨てられた靴下がソファの上に放置されていたり、犬の ベッドがなぜかリビングのど真ん中に移動されていたりする。家をオシャレにするどころか、片付けるだけで手一杯になる。やっぱり、オシャレなマイホーム生活は諦めて、モデルハウスを見て妄想するだけにしよう。(SU)

(2022年2月1日号に掲載)