スプリントとTモバイル合併へ、主導権渡したソフトバンク

スプリントとTモバイル合併へ、主導権渡したソフトバンク

孫正義氏の神通力、米携帯市場に通じず、米当局の審査待つ

2018年5月1日

ソフトバンクグループ傘下の米携帯電話業界4位スプリントと、3位TモバイルUSが4月29日、合併することで合意した。

統合により契約者数1億2,000万人を超え、ベライゾン・コミュニケーションズ、AT&Tの上位2社に対抗する第3の勢力となる。

事業基盤を拡大し、次世代通信網への投資に備える。

来年半ばまでの完了を目指すという。

新会社名はTモバイルUS。

株式の保有比率はドイツテレコムが約42%、ソフトバンクが約27%。

Tモバイルのジョン・レジャー最高経営責任者 (CEO) がトップに就任。

ソフトバンクの孫正義会長は取締役に就く。

合併後の経営権はTモバイル側が握ることになり、ソフトバンクの孫氏の神通力でも米携帯市場は攻略できなかった。

スプリントとTモバイルの合併交渉は3度目で折り合いがついた。

前回はソフトバンクと、Tモバイルの親会社ドイツテレコムが経営権をめぐって争い、破談した。

今回、ソフトバンク側が譲歩する形で急転直下決着した背景に何があったのか。

周辺関係者は 「孫氏は投資に夢中だ」と明かす。

実際、最近のソフトバンクは英半導体開発大手アーム・ホールディングスを買収したり、米配車大手ウーバー・テクノロジーズの筆頭株主になったりと大型投資が続く。

アーム・ホールディングスは多様な機器がインターネットにつながる IoT、ウーバーは今後大きな潮流になると言われるシェアリングエコノミー (共有型経済) への布石といい、孫氏の興味が「通信の先」に移りつつあるようにみえる。

孫氏の「携帯離れ」は日本でもみられ、4月には上場準備中の携帯子会社ソフトバンクの経営体制を変更。

孫氏は代表権のない会長に退き、宮内謙社長のワントップ体制に改めた。

孫氏は今後一段と投資家色を強めるとみられる。

合併新会社の成否の鍵を握るのが 「第5世代 (5G)」と呼ばれる新たな高速通信網。

「白黒テレビとカラーテレビぐらい違う」 と言われ、現実の光景に架空の物体を重ねて映し出す「拡張現実」 や、自動運転車など幅広い分野で活用が見込まれる。

巨額投資が必要となり、顧客基盤の弱いTモバイル、スプリントは、ともに資金面で限界があった。

両社は合併後3年間で次世代通信網整備などに最大400億ドル (約4兆3,000億円) を投資する方針を打ち出した。

米国では、企業合併に際して競争環境への影響が厳しく審査される。

市場は規制緩和を掲げるトランプ政権が合併を認めることを期待するが、米メディアは「トランプ政権でも当局が反対した事例は多い」「当局を納得させるのは難しい」といった専門家の意見を伝えており、合併実現は依然として流動的という見方もある。


(2018年5月16日号掲載)