トランプ政権のビザ規制強化、進む知能流出

 

トランプ政権のビザ規制強化、進む知能流出

有能なインド人などのIT 技術者、続々カナダへ

2018年12月5日


移民に厳しいトランプ政権が専門職向け査証 (ビザ) の締め付けを強めたことで、有能なインド人IT 技術者らの隣国カナダ移住が相次いでいる。

「知能の流出で米国は大損だ」と皮肉る技術者。

世界のIT 産業を牽引してきたシリコンバレーには危機感が募る。

「駐車場を探し回ったことはありませんか」。

インド西部ジャイプール出身のショ ビット・カンデルウェルさん (28) は駐車予定時間や地域を入力すれば、最も安い近隣の 駐車場に誘導してくれるスマートフォンのアプリを開発、インドの地方都市で実験を始めた。

「成功したら大企業に売り込みたい」と意気込む。

カンデルウェルさんはニューヨークの名門コロンビア大と同大学院を修了。

大手銀行やシリコンバレーで働いた経歴を持つ一流のIT 技術者だ。

米国で転職後、 就労ビザを更新できず、8 月にカナダ経済の中心地トロントに移住。

米国時代の 貯蓄を元手に同じ境遇の仲間と会社を立ち上げた。

高度な技能を持つ人向けの米就労ビザ「H-1B」は例年10 万人余りに発給され、うち7 割がインド人だ。

低賃金で有能な人材を求めるIT 産業に重宝されてきたが、トラ ンプ政権は「米国人の雇用を奪い、賃金を押し下げている」として手続きを厳格化した。

更新できない人が相次ぎ、同じ英語圏のカナダなどに新たな職を求める人が続出。

トランプ政権が発足した2017 年にカナダの永住権を取得したインド人は、高度技能者を中心に3万人超で前年の3倍以上。

「トランプ支持者の白人労働者には到底できない仕事」 と自負するカンデルウェルさん。

「移民を切る政策は米国の体力 を弱め、国への背信行為だ」 と手厳しい。

IT 技術者向け転職サイトをトロントで運営するインド西部ムンバイ出身のビクラム・ラングニカさん (38) もシリコンバレーで働いていた技術者だ。

勤務していた交流サイト大手「リ ンクトイン」が買収され、規制強化によって新たな勤務先ではビザを更新できず、米国生活 を諦めた。

米国と比べてカナダの永住権取得は極めて容易で、社会保障も充実し治安もいい。

カナダにも「税収が増え、有能な経験者を雇える」という利点があると指摘する。


(2019年1月1日号掲載)