Friday, 29 March 2024

日本政府、集団的自衛権行使の共同訓練先送り、米国不満

日本政府、集団的自衛権行使の共同訓練先送り、米国不満

キャンプ・ペンドルトン周辺海域等で実施の RIMPAC でも慎重姿勢

2016年5月1日


日本政府は、安全保障関連法で可能となった、集団的自衛権行使などの新任務を反映させた他国との共同訓練を夏の参院選後に先送りする方針を固めた。

安保法には依然として世論の反発が強く、新任務適用に先立つ訓練も抑制して、参院選への影響を回避する狙いがあるとみられる。

自衛隊と米軍による、在日米軍基地や自衛隊基地・駐屯地で行われる1~2月の日米共同統合演習「キーン・エッジ」も従来範囲にとどまり、日本の慎重姿勢に米側が不満を訴えたことも判明した。

複数の関係者が5月1日に明らかにした。

さらに、夏に米海軍がキャンプ・ペンドルトン海兵隊基地の周辺海域やハワイで実施する環太平洋合同演習 (RIMPAC=リムパック) でも、新たな活動に対応した訓練は見送ると米側に伝達した。

共同通信が4月29、30日に実施した全国電話世論調査では、参院選の投票先を決める際、安保法を判断材料にするとの回答が59.5%に上った。

安保法施行に伴い、政府が「存立危機事態」と認定すれば、自衛隊は集団的自衛権を行使して米艦防護などが可能となる。

日米両政府はさまざまな事態を想定し、事前の協議を踏まえた上で共同訓練や演習を重ねる方針だが、日本側は当面、日米間の協議にとどめ、訓練は実施しない考えだ。

キーン・エッジは、北朝鮮による弾道ミサイル発射など周辺有事を想定し、1月12日から2月2日にかけて、在日米軍横田基地 (東京都福生市など) の指揮所を中心に実施された。

図上シミュレーションに基づき、自衛隊と米軍を一体運用するための「同盟調整メカニズム (ACM)」を初めて使って検証し、運用能力の維持、向上を図った。

関係者によると、米軍は昨年9月の安保法成立を受け、演習内容の刷新を求めたが、自衛隊は時期尚早だと受け入れなかった。

米側はアジア重視戦略「リバランス」に基づき、日本側に安保環境の変化に対応する「応分の負担」 (防衛省幹部) を求める姿勢を強めることが予想される。


(2016年5月16日号掲載)