Thursday, 28 March 2024

トランプ氏、ビジネス訴訟担当判事への差別発言繰り返す

トランプ氏、ビジネス訴訟担当判事への差別発言繰り返す

サンディエゴ連邦地裁ゴンザロ・クリエル判事のルーツめぐり

2016年6月20日


大統領選の共和党候補指名が確定した実業家トランプ氏が、自身のビジネスをめぐり訴えられた民事訴訟を担当するサンディエゴ連邦地裁のゴンザロ・クリエル判事を「メキシコ出身だから私を憎んでいる」と差別的発言を繰り返し、問題になっている。

共和党内からもトランプ氏の発言を「受け入れられない」と批判が噴出。

クリエル判事はメキシコ系だが、インディアナ州生まれの米国人。

1979年にインディアナ大学ロースクールを卒業した。

メキシコからサンディエゴに流れ込む麻薬密売人の一斉処罰を断行した実績があり、ティファナ地区で勢力を伸ばしていた麻薬組織「アレヤノ・フェリックス・カルテル」から命を狙われる危険に晒 (さら) されたこともある。

2012年にオバマ大統領の指名を受けて連邦地裁判事に任命された。

ビジネスで大成功を収めたトランプ氏は、不動産投資の手法を教える目的で2005年にセミナー 「トランプ大学」 を設立。

元受講生から、授業料をだまし取られたとして提訴されている。

「メキシコ移民は犯罪者だ。

彼らを止めるために国境に壁を建設する」 と主張し続けているトランプ氏は6月、選挙演説などで、クリエル判事を「メキシコ系」「メキシコ人」 と呼び、「私を憎んでいる。

公平な判断ができない」 とし、「担当を外れるべきだ」と主張した。

11月の本選で民主党から8年ぶりの政権奪還を狙う共和党にとって、ヒスパニック (中南米系) 票の獲得は最優先課題。

トランプ氏の反ヒスパニック発言に反発して優秀な党スタッフが辞職するなど悪影響が出ていたところに、今回の発言が飛び出し、党首脳は頭を抱えている。

党実力者のライアン下院議長は「典型的な人種差別発言だ」 と非難。

党上院トップのマコネル院内総務は「彼が次に何を言うか、みんな疑心暗鬼だ」と語った。

本選で対決予定の民主党クリントン前国務長官も、発言を繰り返し批判している。

トランプ氏は発言が「誤解された」と釈明に追われているが、批判は簡単にはやみそうになく、今後、共和党がどのように処理するのかが注目される。




(2016年7月1日号掲載)