アマゾン、「3 本社」 体制に … NY、ワシントン近郊も
サンディエゴ落選も、将来の企業誘致に追い風?
2018年12月5日
インターネット通販大手アマゾン・コムは11 月中旬、ニューヨーク市ロングアイランドシ ティーと、ワシントン近郊のバージニア州アーリントン郡に本社機能を持つ新拠点を設置 すると発表した。
現在の西部シアトルの本社と合わせ「3本社」体制にする。
2つの新拠点には計50 億ドル ( 約5,700 億円) を投資し、それぞれ25,000 人以上 雇用する。
平均年収は15 万ドル ( 約1,700 万円) 超で、いずれも2019 年か ら採用を始める。
アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者は声明で「われわれが顧客のための発明を続け るのに役立つ世界的な才能を引き付けられる」と述べた。
ロングアイランドシティーはニューヨーク市クイーンズ区にある。
ウォールス トリートを擁する金融/ビジネスの中心地とニュースメディアが集まる全米第1の都市を 選んだ。
もう一つは、ポトマック川を挟んだワシントンDC の対岸にあるバー ジニア州アーリントン郡ナショナルランディング ( 別称:クリスタルシティー)。
首都から約5 キロの地点に位置し、連邦政府との関係を深めるには理想的な 地の利がある。
アマゾンは第2、第3本社の拠点を常識的な基準で選んだと言える。
そこに意外性は感じられなかった。
アマゾンが新本社建設計画 (HQ2) を発表したのは2017 年。
サンディエゴ を含む55 都市圏が名乗りを上げた。
同社が提示した条件は具体的だった。
候補となる都市圏の人口は100 万人以上。
ビジネスフレンドリーな 環境に恵まれ、潜在的な技術労働人口が豊かで、国際空港へのアクセスが45 分以内、 そして第1本社のあるシアトルを始め、ベイエリア、ニューヨーク、ワシントンDC への直 行便が出ている都市に限られた。
誘致を表明した55 都市圏中、20 都市圏が実質的なコンペティターと言われ、サンディエゴも有力候補地の一つだったが「強味」と「弱点」が混在していた。
サンディエゴ都市圏は科学、技術、工学、数学分野の教育水準が高く、エンジニアの確 保については有利とみられていたが、全体的な労働力はニューヨークとワシントンDC の 経済圏には及ばない。
一人当たりの通勤時間は他の大都市圏と比べると短く、 有利な条件と言えたが、住宅価格の高さや事業コストの面ではマイナス要因となった。
オンライン不動産データベース社「ジロー」のエコノミストは、サンディエゴが最終的候 補地の一つに数えられた事実が優れたビジネス拠点としての認知度を高め、今後の企業 誘致に恩恵をもたらすとコメントしている。
(2019年1月1日号掲載)