イノヴィオ、サンディエゴで 開発中
2020年7月1日
サンディエゴのソレントバレーに研究開発センターと創薬施設を持つ製薬企業イノヴィオ (本社:ペンシルバニア州) は4月から新型コロナワクチンの開発を続けている。
同社は6月30日、臨床試験のフェーズ1 (第1段階) として、18歳〜50歳の健康な成人36人に投与したところ、34人に免疫反応が見られたとの暫定結果を明らかにした。
地元メディアが伝えた。
臨床試験に参加したボランティア全員が8週間の期間に2度接種を受けたところ、治験者の94%に抗体値の上昇が確認され、免疫細胞の活動が高まったという。
10人に副作用が見られたが、その多くは接種を受けた場所が赤みを帯びるという軽症だった。
ケイト・ブロデリック博士 (イノヴィオ社上席副社長) は「今回の結果はCOVIDワクチン開発への大きな励みとなった。
反応度、奏効率も高く、新型ワクチンの臨床的有用性を暗示している」と自信を深めている。
イノヴィオは今回の結果を医療専門誌に掲載する。
フェーズ1では安全性の確証を主目的に臨床試験が進められ、新型コロナ感染で重症化しやすい高齢者の治験も行う。
イノヴィオは食品医薬品局 (FDA) の許可を待って、7月以降にフェーズ2、フェーズ3の臨床試験を実施する予定。
米企業でフェーズ2に進むのはモデルナ (本社:マサチューセッツ州) に次いでイノヴィオが2番目。
7月1日現在、世界で17の企業/グループのワクチンが臨床試験を始めている。
最も早く最終フェーズ (フェーズ3) に進んでいるのはアストラゼネカ社 (英国) のワクチン。
イノヴィオが開発しているのは「遺伝子ワクチン」。
ヒトの細胞の遺伝子に働きかける新しいタイプのワクチンで、ウイルスそのものは使わない。
ウイルスの表面には「スパイク」と呼ばれる “トゲ” のような突起部があり、スパイク部分の設計図である遺伝子を人工的に作り出し、体内に投与する。
スパイクが次々と生まれ、免疫メカニズムが反応して抗体が作られることで、感染や重症化を防ぐことができると考えられている。
トランプ政権は新型ウイルスワクチンの開発、生産、供給を強力に推進する「ワープスピード作戦」 (Operation Warp Speed) を展開し、有力企業に巨額の投資を行っている。
その中にイノヴィオも含まれる。
ワープスピード作戦は2021年1月までに3億人分の新ワクチンを準備し、実用化することを目標としている。
それを実現するには安全性と実効性の確立が最終ハードルになる。
(2020年7月16日号掲載)