Tuesday, 15 October 2024

ワクチン治験好結果、次段階へ

 

イノヴィオ、サンディエゴで 開発中

2020年7月1日

サンディエゴのソレントバレーに研究開発センターと創薬施設を持つ製薬企業イノヴィオ (本社:ペンシルバニア州) は4月から新型コロナワクチンの開発を続けている。

同社は6月30日、臨床試験のフェーズ1 (第1段階) として、18歳〜50歳の健康な成人36人に投与したところ、34人に免疫反応が見られたとの暫定結果を明らかにした。

地元メディアが伝えた。

臨床試験に参加したボランティア全員が8週間の期間に2度接種を受けたところ、治験者の94%に抗体値の上昇が確認され、免疫細胞の活動が高まったという。

10人に副作用が見られたが、その多くは接種を受けた場所が赤みを帯びるという軽症だった。

ケイト・ブロデリック博士 (イノヴィオ社上席副社長) は「今回の結果はCOVIDワクチン開発への大きな励みとなった。

反応度、奏効率も高く、新型ワクチンの臨床的有用性を暗示している」と自信を深めている。

イノヴィオは今回の結果を医療専門誌に掲載する。

フェーズ1では安全性の確証を主目的に臨床試験が進められ、新型コロナ感染で重症化しやすい高齢者の治験も行う。

イノヴィオは食品医薬品局 (FDA) の許可を待って、7月以降にフェーズ2、フェーズ3の臨床試験を実施する予定。

米企業でフェーズ2に進むのはモデルナ (本社:マサチューセッツ州) に次いでイノヴィオが2番目。

7月1日現在、世界で17の企業/グループのワクチンが臨床試験を始めている。

最も早く最終フェーズ (フェーズ3) に進んでいるのはアストラゼネカ社 (英国) のワクチン。

イノヴィオが開発しているのは「遺伝子ワクチン」

ヒトの細胞の遺伝子に働きかける新しいタイプのワクチンで、ウイルスそのものは使わない。

ウイルスの表面には「スパイク」と呼ばれる “トゲ” のような突起部があり、スパイク部分の設計図である遺伝子を人工的に作り出し、体内に投与する。

スパイクが次々と生まれ、免疫メカニズムが反応して抗体が作られることで、感染や重症化を防ぐことができると考えられている。

トランプ政権は新型ウイルスワクチンの開発、生産、供給を強力に推進する「ワープスピード作戦」 (Operation Warp Speed) を展開し、有力企業に巨額の投資を行っている。

その中にイノヴィオも含まれる。

ワープスピード作戦は2021年1月までに3億人分の新ワクチンを準備し、実用化することを目標としている。

それを実現するには安全性と実効性の確立が最終ハードルになる。


(2020年7月16日号掲載)