2022年3月19日
米国の大都市圏で路線バスの運転手不足が深刻化し、運転本数の削減が相次いでいる。
新型コロナウイルス禍からの景気回復で企業などが人材獲得を強化する中、運転手がより好待遇の仕事に流出し、新規雇用も苦戦しているため。
バスの減便はコロナ禍からの経済活動再開に冷や水を浴びせかねず、当局は待遇改善を打ち出して運転手を呼び込もうと必死だ。
「バスが定刻を大幅に過ぎても来ない」。
首都ワシントン近郊のバス停。
車社会の米国で、路線バスはマイカーを持たない低所得者層の通勤や買い物の足だ。
だが、人手不足に運転手のコロナ感染も追い打ちをかけ、ワシントン首都圏交通局は1~2月に一時、平日のバス運転本数を約25%減らした。
同交通局は2月、新規採用の運転手に最大2,500ドル (約30万円) の契約金を支払う制度を導入した。
サンディエゴ都市圏交通システム (MTS) もバス運転手不足に直面しており、住民が通勤や通学に利用する一部の路線で運行本数を減らさざるを得ない状況。
MTSのバス運転手の一人は「大変なことになっている。私たちの勤務時間はバラバラ。週6日勤務する必要があり、長時間労働という厳しい環境の中で戦っている」と語った。
MTSバスの車内には「ドライバー不足のため、バスに遅れが出る可能性があります」と乗客に注意を促す看板が掲げられた。
ロサンゼルス郡都市圏交通局も昨年12月、採用者へ最大3,000ドルの契約金支給を始めた。
今年2月26日にロサンゼルス市で採用イベントを開催。
オレゴン州ポートランド都市圏の交通機関「トライメット」は2,500ドルの契約金を導入し、「フルタイム勤務ならば3年後の年収は最低でも68,000ドルに達する」とアピールする。
だが、効果は見通せない。
コロナ禍で需要が増えたインターネット通販の運送業者や、スクールバスの運行事業者などともドライバーの奪い合いとなっている。
路線バス運転手の一部が、待遇への不満からストライキを検討する動きも出た。
運転手不足を解消する道は険しそうだ。
(2022年4月1日号掲載)