「米中戦争」想像し回避を 元海軍大将の小説、話題に

 

2021年7月5日


2034年の南シナ海を舞台に、米国と中国が戦争に突入する--緊迫する両国関係の近未来像を描いた小説『2034』が米国でベストセラーとなり、話題を呼んでいる。

著者のジェームズ・スタブリデス退役海軍大将は共同通信とのインタビューで、衝突の危険は間近に迫っていると指摘。

「米中の戦争がいかに背筋の凍るものになるか想像し、回避策を考えるべきだ」と訴えた。
 

スタブリデス氏は北大西洋条約機構 (NATO) 欧州連合軍の最高司令官などを歴任し、地政学に関する著作もある。

冷戦期には米国と旧ソ連の戦争を想定した映画や小説が数多く登場し「悲惨な事態をイメージでき、戦争の抑止に一役買った」と話す。

米中関係が「新冷戦」と言われるほど悪化する中、衝突の具体的なシナリオを描こうと思い立った。
 


南シナ海で「航行の自由」作戦を実施していた米駆逐艦が不審船に近づき、同じころ、イラン上空で米海兵隊の最新鋭ステルス戦闘機F35が制御不能に陥る。

中国のサイバー攻撃で米国の軍事的優位性は消滅。

誤解と誤算に、ホワイトハウスと中国共産党内の主導権争いも絡み、事態は核攻撃へとエスカレート--。
 


エリオット・アッカーマン元海兵隊員と共同執筆し、今年3月に発売された小説はすぐに反響を呼んだ。

外交官や米軍幹部からは「一点だけ大きな間違いがある。衝突は2034年よりもずっと早く起きるかもしれない」と言われたという。
 

スタブリデス氏は、中国との戦争を回避するため、米国は明確な戦略を立てるべきだと指摘し、米軍の近代化などによる抑止力強化を訴えた。

「中国のような権威主義国家に対し、民主主義国家は一致して立ち向かうべきだ」と述べ、日米、インド、オーストラリアの協力枠組み「クアッド」 (Quad) などの連携が重要になると強調した。


小説の日本語訳版は9月に出版予定。


Picture:“2034” by Elliot Ackerman and James Admiral Stavridis USN / Penguin Press.


(2021年7月16号掲載)