弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮、安倍政権のジレンマ

弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮、安倍政権のジレンマ

軍事力行使も辞さない米政権に警戒、「日本が戦域に入る」

2017年4月5日

北朝鮮が繰り返す弾道ミサイル発射を受け、安倍政権が、軍事力行使もちらつかせるトランプ政権の動きに神経を尖 (とが) らせている。

「武力衝突となれば日本も戦域に入りかねない」 (日本政府筋) ためだ。

絶対に避けなければいけないのは、自暴自棄に陥った北朝鮮が日本列島に弾道ミサイルを撃ち込む最悪の事態。

日本の平和と安全を大前提とした対処方針を米政権と策定できるのか。

安倍外交の力量が試される。

「軍事オプションが含まれていることを、政府として解説するのは差し控えたい」。

菅義偉 (すが・よしひで) 官房長官は、北朝鮮が新型中距離弾道ミサイルを発射した4月5日の記者会見で、北朝鮮対策を巡り「あらゆる選択肢」を検討しているトランプ政権の姿勢を評価しつつ「武力行使」の選択肢についての論評を避けた。

懸念は首相官邸、外務省内で静かに広がっている。

複数の外交筋によると、安倍晋三首相の訪米を控えた2月上旬、日本政府高官がワシントンを訪れ、軍事オプションに関する日本の考えを米国務省幹部に伝達。

その際、日本が「戦域」に含まれることへの不安にも言及したとされる。

こうした見方を裏付けるように、首相は3月7日、北朝鮮による4発の弾道ミサイル発射を受けたトランプ大統領との電話会談で「日米間で擦り合わせ、戦略目標を共有することが重要だ」と訴えた。

安倍政権幹部は「日本への事前連絡もなしに米軍が軍事作戦に踏み切ったら、目も当てられない」と身構える。

米本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル (ICBM) が開発途上とされる北朝鮮の技術力の現状も、日米協力に影を落とす。

配備済みの弾道ミサイルの射程圏内に収まっている日本にとっては、戦火に巻き込まれずに事態を打開することが何よりも重要になる。

これに対して米国は、米本土向けの新型ミサイルを完成させる前に北朝鮮を押さえ込むことに力点を置いている。

温度差があるのは否めない。

対米外交に携わる政府関係者は「弾道ミサイルがハワイと米本土の間に落ちようものなら、米国は黙っていない。朝鮮半島有事が起きる可能性がないとは言えない」と予測する。

米軍の軍事力行使をめぐる議論が日本国内で盛り上がれば、安倍政権の対米協力のあり方に焦点が当たり、対応に苦慮しかねない。

外務省幹部は「トランプ政権は、あらゆる選択肢の一つに軍事があると言っているだけだ。冷静に受け止めてほしい」と記者団に語った。

*写真 (左上) は、北朝鮮の弾道ミサイル発射について、国連安全保障理事会の決議案へのあからさまな挑戦と非難する韓国メディア (4月5日)


(2017年4月16日号掲載)