偽痛風 Psuedogout(2015.4.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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偽痛風

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偽痛風というのは、痛風のような症状を起こす関節炎で、正式名をピロリン酸カルシウム沈着症 (CPPD) といいます。

痛風のような症状を起こし、痛風との共通点も多いですが、原因はまったく異なります。

偽痛風の原因

痛風は尿酸塩結晶による関節炎ですが、偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶によって引き起こされる関節炎です。

ピロリン酸カルシウム結晶が関節のショックアブソーバー (関節にかかる衝撃を和らげ、滑らかな動きを助ける) である軟骨組織に沈着し、その結晶が関節内に遊離し炎症を起こします。

ピロリン酸カルシウム結晶の形成は年齢と関係があり、年齢が高くなるにしたがって結晶が関節内で形成されやすくなります。

85歳では、半数近くの人がこの結晶が存在すると言われています。

偽痛風は変形関節症と関係があり、高齢者ほど変形関節症を罹患しているのと関係があるのかもしれません。

ただ、この結晶が関節内に存在しても必ずしも偽痛風を発症するわけではなく、実際には、ほとんどの人は偽痛風を発症しません。

それが何故かは理解されていません。

偽痛風のリスク

上述したように、偽痛風は年齢と関係があり、偽痛風を発症する大半の人が60歳以上です。

年齢以外に偽痛風を発症しやすくするリスクとしては、関節の外傷や手術、遺伝的要素、血液中の電解質異常 (異常に高値のカルシウムや鉄分、血中マグネシウムの低値など)、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、脱水、アミロイド-シスなど。

また、痛風のある人は偽痛風にもなりやすく、関節内に尿酸塩結晶とピロリン酸カルシウム結晶が同時に存在していることがあります。

偽痛風の症状

痛風と同じように突然に関節痛が起こりますが、痛風の好発部位が足の第一指の付け根なのに対し、偽痛風の場合は膝関節です。

膝以外には、手首、足首、肩、手足の指などの関節に起こります。

症状は関節の腫れ、痛み、熱感、硬直などです。

腫れが高度な場合は、膝が曲げにくくなるだけでなく、歩行にも障害が出てきます。

急性の発作は通常5~12日くらいで収まります。

偽痛風の診断

偽痛風は、実は、痛風、変形関節症、関節リューマチに間違えられることがあります。

それは、関節液の検査や関節のX線検査 (レントゲン) で特徴的な所見を認めないと診断できないからです。

一番確実な診断は、特殊な顕微鏡による関節液の検査で、ピロリン酸カルシウム結晶の存在を証明することです。

痛風があれば、尿酸塩結晶が同じ検査で発見できます。

また、関節の感染が同時に存在していることがあるので、関節液の検査は大事です。

関節のX線検査では、関節の損傷や軟骨組織へのカルシウムの沈着を調べます。

軟骨組織へのカルシウムの沈着は、軟骨石灰化症 (chondrocalcinosis) と呼ばれています。

血液検査では、偽痛風のリスクになる他の疾患、電解質の異常、炎症の程度などを調べます。

偽痛風の治療

他の関節炎同様、急性期の治療は関節を冷やしたり安静にし、抗炎症鎮痛薬を服用します。

よく使用される非ステロイド性抗炎症鎮痛薬としては、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシンがあります。

特に、インドメタシンは強力な抗炎症鎮痛薬で、痛風の急性発作にも使われます。

コルヒチンは痛風の発作に使われる薬ですが、偽痛風の急性発作にも効果があります。

抗炎症鎮痛薬やコルヒチンが服用できないか、効果がない場合は、経口ステロイドが使われます。

ステロイドの長期服用は、骨粗鬆症、白内障、糖尿病、体重増加などのリスクになるので要注意です。

関節の腫脹 (しゅちょう) が高度な場合は、針を関節内に挿入し関節液を抜く関節穿刺 (せんし) を行います。

関節にかかる圧力を和らげ、ピロリン酸カルシウム結晶をある程度除去できます。

これによって得られた関節液は検査に使われるので、検査と治療が同時にできて一石二鳥です。

関節液を抜いた後で、ステロイド剤単独あるいは局所麻酔薬と一緒に関節内に注入することがあります。

偽痛風の予防

偽痛風は、痛風のように、食事との関連が知られていません。

従って、痛風のような特定の食事療法はありません。

偽痛風を誘因する疾患があれば、その治療を第一に行います。

頻回に発作のある人は、急性期の発作に使われるコルヒチンによる予防が可能です。

 

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2015年4月1日号掲載)

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