関節リウマチ Rheumatoid Arthritis (2017.8.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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関節リウマチ 

Rheumatoid Arthritis

       
       

関節痛や関節の腫れなど関節炎の症状があると、一般的に「リウマチ」 と呼ばれることがありますが、この一般的に言われている「リウマチ」 と医学的に診断された関節リウマチは必ずしも同じとは限りません。

「リウマチ」と言われている関節炎の大半は変形性関節症という高齢に伴う関節炎で、本当の関節リウマチとは異なります。

関節炎の症状があると、便宜上「リウマチ」という病名が使われているだけのこともあります。

 

 

関節リウマチの名称

関節リウマチというのはRheumatoid Arthritis の日本語訳で、昔は慢性関節リウマチという名称が使われていましたが、関節リウマチは必ずしも慢性とは限らないので、2002年に日本リウマチ学会総会で「関節リウマチ」という病名が正式に決定されました。

 

 

関節リウマチの原因

関節リウマチは、遺伝、ホルモン、環境など、様々な要因の相互作用により発病するわけですが、自己免疫疾患の一つと考えられています。

すなわち、自身の抗体が関節を覆う滑膜を攻撃して起こる病気なのです。

その結果、炎症が起こり、滑膜が分厚くなり、関節内の軟骨や骨を破壊していきます。

関節を保持している腱や靭帯も弱くなり、伸びきっていきます。

関節が徐々にその形や統合性を失っていくのです。

リウマチのきっかけがウイルスや細菌の感染で、それによって自己免疫疾患状態になる考えもあります。

 

 

関節リウマチになりやすい人

関節リウマチになりやすい人は、女性、40〜60歳 (小児、高齢者でも発症します)、喫煙者、太った人などです。

 

 

関節リウマチの症状

症状や徴候の出かたは、人によって大きく異なってきますが、一般的に、関節が赤く熱く腫れ、痛みを伴います。

通常、関節症状は左右対称に起こります。

関節のこわばり、特に朝や、しばらく動かしていない後に起きます。

朝のこわばりは1時間以上して改善してきます。

初期の場合は、手指の関節など小さな関節を侵します。

病気が進行すると、肘、膝、足首、股関節、肩関節など、より大きな関節を侵すようになります。

指の関節は、指先に近い関節よりは、指の真ん中の関節と手関節を侵します。長期的に関節は変形していきます。

関節リウマチのある人の約4割の人は関節以外の症状も発症します。

疲労、熱、体重減少、気分不快、発熱以外の全身症状のほか、皮膚、目、肺、心臓、腎臓、唾液腺、神経、骨髄、血管なども侵すのです。

合併症としては、骨粗しょう症、シェーグレン症候群 (目や口が渇く)、感染、異常な体の組成 (脂肪の割合が多くなる)、手根管症候群、心臓疾患、肺疾患、リンパ腫などがあります。

 

 

関節リウマチの診断

初期では症状が他の病気に似ているので、診断が困難です。

また、ある特定の検査だけで診断できるわけではありません。

2010年に、米国リウマチ学会と欧州リウマチ連盟が共同で、23年ぶりにそれ以前使われていた米国リウマチ学会の診断基準を改定しました。

その新しい診断基準では、関節浸潤 —— 大または小関節の何か所浸潤しているか、血液検査による血清学検査の結果、同じく血液検査での急性炎症反応の有無、罹病期間などを総合して、点数制で6点以上を関節リウマチと診断する方法が取られています。

血液検査では血沈 (赤血球沈降速度) やCRP (C反応性蛋白) など、急性炎症反応を表す数値が高くなります。

血液検査で、リウマトイド因子 (リウマチ因子) や抗CCP抗体という血清学的検査結果が高くなります。

手や足のレントゲン検査 (X線検査) で、骨の浸潤、関節の亜脱臼などが認められますが、初期の場合はレントゲン検査では異常の見られない時があります。レントゲン以外の画像検査としては、超音波検査やMRIがあります。CTも行われる時があります。

 

 

関節リウマチの治療

<薬物療法>

関節リウマチを完治する治療法は存在しませんが、病状の進行を抑えたり、症状を改善する治療法はあります。

特に最近は、様々な抗リウマチ薬が登場してきています。病気の早期に治療を始めれば病気の進行を抑えることが可能です。

症状や病期に従って下記の薬物療法を行います。

ここに掲げた以外にも様々な薬物が開発中です。

 

= 非ステロイド系抗炎症鎮痛薬 (NSAIDs)=

痛みや炎症などの症状を抑えます。

市販の薬では、イブプロフェンやナプロキセンなどがあります。

ボルタレンやインドメタシンなど処方箋薬ではもっと強力な薬も存在します。

また、セレブレックスなどの胃に優しい薬もあります。

 

= ステロイド =

プレドニゾンなどのコルチコステロイドは炎症、痛みを抑え、関節の破壊を抑えます。

副作用で骨がもろくなったり、体重が増えたりします。

 

 

= 抗リウマチ剤(DMARDs) =

関節リウマチの病気の進行を抑え、関節や他の組織を恒久的な破壊から守ります。

これに属する薬としては、メトトレキサート (商品名=Trexall、Otrexup、Rasuvo)、レフルノミド (Arava)、ヒイドロキシクロロキン (Plaquenil)、スルファサラジン (Azulfidine) などがあります。

副作用は、肝機能障害、骨髄抑制、肺の感染症などです。

 

 

= 生物学的製剤 (分子標的剤)=

新しい抗リウマチ薬です。

このグループに属する薬としては、アバタセプト=abatacept (商品名=Orencia)、アダリムマブ=adalimumab (Humira)、 アナキンラ=anakinra (Kineret)、セルトリズマブ= certolizumab (Cimzia)、エタネルセプト=etanercept (Enbrel)、ゴリムマブ=golimumab (Simponi)、インフリキシマブ=infliximab (Remicade)、 rituximab (Rituxan)、トシリムマブ=tocilizumab (Actemra) and トファシティニブ =tofacitinib (Xeljanz) などがあります。

これらの薬は炎症を起こす免疫システムの一部に働きかけます。副作用として感染症を起こすことがあります。

 

 

<他の治療>

理学療法、職業療法、手術 —— 滑膜切除術、腱再建術、人工関節置換術など、手術には出血、感染、などのリスクがあります。

関節ブレース、補助具、ウォーカーの使用などもあります。

 

 

<代替医療>

鍼灸や指圧。

グルコサミン、コンドロイチン、フィッシュオイル (オメガ3) などのサプリメントは研究の結果では限られた効果しかなく、効果にも個人差があるようです。

 

 

<自分でできること>

症状が落ち着いている時は、運動を行います。

運動は痛みを和らげ、関節の柔軟性を増し、体重のコントロールも助けるのでとても重要です。

特に太極拳、水泳、柔軟体操などの関節にあまり負担のかからない運動が勧められています。

薬物療法以外に痛みを和らげる方法としては、温かいタオルやホットパック、温水シャワーやお風呂の利用などが挙げられます。

ただし、冷やした方が良い時もあります。

膝が痛い時は靴の中にインソールやクッションを入れます。

 

 
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(2017年8月1日号掲載)