金 一東
日本クリニック・サンディエゴ院長 |
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ヘルペス(Herpes) |
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ヘルペスと一般的に呼ばれている病気は、単純ヘルペスウイルスの感染による皮膚・粘膜の病気です。 日本では「ヘルペス」に帯状疱疹が含まれることがあるのに対し、アメリカではヘルペスというと、単純ヘルペスウイルスによる感染症のみを意味します。 単純ヘルペスウイルスによる感染症は、ヘルペス1型 (HSV-1) によるものとヘルペス2型 (HSV-2) によるものがあります。 1型は主に口や唇に出て口唇ヘルペスの原因になり、2型は主に性器に出て性器ヘルペスの原因になります。 なお、英語ではヘルペスはハーピーズと発音されています。 ヘルペス1型は子供の時に感染することが多く、アメリカでは6割弱の人がヘルペス1型に感染していて、ヘルペス2型は14〜49歳では約16% (約6人に1人) の人が感染しています。
ヘルペスの感染 単純ヘルペスウイルスは感染者の皮膚、粘膜、あるいは唾液などの体液中に存在します。 口唇、肛門、外性器や他の体表との直接の接触や体液を通じて感染します。洗面台、トイレ、タオルなど物の表面からは感染しません。 例えば、感染する様式としては、キスなど口と口の接触、唾液の交換、コンドームを使用しない性交または、肛門セックス、オーラルセックス、外性器同士の接触、などです。 ヘルペスに感染して水疱が現れる直前から、水疱が出現し、完全に乾いて治るまでの期間が一番感染をしやすい時期です。 水疱などの症状がなくても感染はします。 出産する母親の性器にヘルペスが出現していると生まれてくる赤ちゃんに感染をすることがあります (新生児ヘルペス)。 ヘルペスは一度感染すると、感覚神経を通じて神経節に移動して潜伏し、そこに一生存在し、将来再活性化し、症状を生じるようになります (再発)。 ヘルペスに感染していても、自分が感染していると知っている人はごく少数です。 例えば、ヘルペス2型に対する抗体がある人で、自分が感染していることを知っている人は2割もいないのです。
ヘルペスの症状 ヘルペスの症状としては、小さな水疱、潰瘍 (かいよう)、びらん、痛み、焼けるような感じなどですが、水疱が出現する前から、ちりちり、ぴりぴりした感覚やかゆみなどの症状が出ることがあります。 ヘルペスに感染をしても症状の出ない人が大半ですが、感染した直後 (初感染後) に症状が出ると、その症状は強くなります。 その後の再発では症状が軽減し、症状のある期間が次第に短くなっていきます。 例えば、1型のヘルペスの初感染では、歯肉炎と口内炎ができ、症状は強く出ます。 そして感染後、ウイルスは顔の三叉 (さんさ) 神経に一生存在し、再活性化すると口唇や顔に出ますが、症状は初感染の時よりは軽くなります。 ヘルペスはその出現する身体の部位で、いろいろな名前で呼ばれています。 例えば、ヘルペス性歯肉口内炎、口唇ヘルペス、顔面ヘルペス、角膜ヘルペス、性器ヘルペス、ヘルペス性ひょう疽=手指の感染、ヘルペス性脳炎といった具合です。 そして、こうした身体の部位によって現れてくる症状は変わってきます。 性器ヘルペスの場合、外性器、膣、子宮頚部での水疱、潰瘍形成、おりもの、痛み、かゆみ、排尿痛、発熱、倦怠感などの症状が出ます。 初感染で症状が出る人は再発 (ウイルスの再活性化) することが多いですが、時間とともに再発までの期間が長くなり、症状も次第に軽減していきます。 感染をしても何か月、何年も症状が出ない人が大半で、初感染で症状の出る人は、感染者と接触があって4日くらいで発症します (2〜12日)。 免疫の低下している人、臓器移植を受けた人などは重症化する可能性があります。 再発のきっかけになる要因としては、VP16たんぱく質と呼ばれる生体物質が関与していると考えられていますが、風邪などの感染症、局所の外傷 (顔、唇、眼、口など)、手術、放射線治療、風や日光の曝露、ストレスなどが考えられています。
ヘルペスの診断 ヘルペスの診断は、問診と診察でほとんど行われますが、判断の難しい時は、ウイルス培養、血液検査で抗体検査などをします。 初感染の場合は、症状が出現する時点では抗体がまだできていないので、その時点と抗体ができるまで数週間後に再度検査することが必要です。 他に、組織検査などが必要になることがあります。
ヘルペスの治療 自分でできる治療としては、タイレノールやアドビルなどの痛み止めを服用する。お湯に少し塩を入れてバスタブに浸かる。性器ヘルペスがある場合は窮屈な衣服は避ける。感染部位に触れた後はよく手洗いをする。ヘルペスの症状のある間はキスやセックスを避ける。排尿痛がする時は局所麻酔薬のリドカインなどの塗り薬をぬる、などです。 ヘルペスに一度感染すると、ウイルスを身体から完全に除去してしまうことはできませんが、症状を緩和することはできます。 症状の緩和には抗ウイルス薬を内服します。 アシクロビル (acyclovir)、バラシクロビル (valaciclovir)、ファムシクロビル (famciclovir)、ペンシクロビル (penciclovir) が使われています。 これらの抗ウイルス薬は、体内でのヘルペスウイルス増殖を防ぎます。 局所抗ウイルス薬としては、アシクロビル、ペンシクロビル、ドコサノール (Abreva) などがあります。 また、年に6回以上再発を繰り返す人は、抑制療法といって抗ウイルス薬を毎日内服する方法があります。
ヘルペスの予防 ヘルペスの予防としては、セックスをする時はコンドームを使用する、ヘルペスの症状のある間はセックスをしない、口唇ヘルペスの症状のある間はキスをしない、疲労、ストレス、病気になるのをできるだけ避ける、などがあります。
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(2019年3月1日号掲載) |