大腸がん (Colorectal Cancer) (2012.2.1)

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dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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大腸がん
(Colorectal Cancer) 

大腸がんは、アメリカでは3番目に多いがん、日本では肺がんに次いで2番目に多いがんです。

日本における大腸がんの罹患率 (がんにかかる割合) は1990年代前半まで増加していましたが、それ以降は少しずつ減少傾向になってきています。

最近の罹患率では欧米の白人とほとんど変わりません。
 

 

 

大腸とは

大腸は盲腸から始まり、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸までのことをいいますが、結腸 (colon) と大腸 (large intestine) はほぼ同義語のようによく混同されて使われています。

小腸で栄養素が吸収された後の食物残渣 (ざんさ) は大腸に入り、水分、塩分と一部のビタミンが吸収され、便として肛門から排泄されます。
 

 

 

大腸がんとその原因

大腸がんは、主に結腸と直腸にできるがんで、結腸直腸がん (colorectal cancer) とも呼ばれています。

大腸粘膜から発生した腺腫という良性のポリープががん化したものが大半ですが、正常な大腸粘膜から直接発生するものもあります。

がん化するスピードはゆっくりですが、徐々に大腸の壁に浸潤していき、進行するとリンパ節や肝臓や肺など他の臓器に転移します。

ある種の突然遺伝子があると大腸がんになりやすくなります。

家族性大腸腺腫症 (家族性大腸ポリポーシス=FAP) や 遺伝性非ポリポーシス性大腸がん (HNPCC) は大腸がんの原因になります。

前者は何千ものポリープができるまれな病気ですが、40歳以下で大腸がんになる時があります。

後者はリンチ症候群とも呼ばれていますが、これも50歳以下で大腸がんになることが多くあります。
 

 

 

大腸がんの危険因子(リスクファクター)

リスクファクターとしては、高齢 (9割以上の人が50歳以上で発病)、家族性大腸腺腫症、遺伝性非ポリポーシス、炎症性大腸炎 (クローン病、潰瘍性大腸炎)、肥満、飲酒、加工肉 (ベーコン、ハム、ソーセージなど) などで、他に可能性があるリスクファクターとしては、食物繊維が少ない高脂肪食、運動不足、放射線療法、喫煙などがあります。
 

 

 

大腸がんの症状

症状としては、下痢、便秘、血便、腹痛、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、貧血、疲労、衰弱、体重減少などですが、初期の段階では症状がほとんどありません。

がんの大きさやその位置によって様々な症状が出ます。
 

 

 

大腸がんの診断
 

医師が行う直腸指診は簡単にできますが、肛門から数センチの範囲しか調べることができません。

血液検査では、貧血の程度や他の病気の可能性があるかどうかを調べます。

CEA や CA19-9 などの腫瘍マーカーは、転移や再発の評価で使われることが多く、大腸がんの早期診断には適していません。

便潜血検査は、便に血が混じっているかどうかを調べる検査ですが、免疫学的方法でないと食事内容によって検査結果が異なってきます。

安価で手軽にできるので非常に有用ですが、陽性でも必ずしも大腸がんと限らないし、陰性でも大腸がんが存在しないとは限りません。

大腸内視鏡検査 (コロノスコピー) は内視鏡をおしりから挿入して大腸内を調べます。

怪しい箇所があれば、その部分をバイオプシー (生検) し、組織検査でがんがあるかどうかを調べます。

大腸内視鏡より短い内視鏡検査として、S状結腸鏡検査 (シグモイドスコピー) という検査があります。

外来で簡単にできるので重宝しますが、直腸とS状結腸までしか検査できません。

他に、大腸内に造影剤を入れて検査をする注腸造影検査、CTを利用するバーチャルコロノスコピー (仮想大腸内視鏡)、MRI、PET などの検査があります。
 

 

 

大腸がんの病期(ステージ)

大腸がんと診断されると、大腸がんの病期分類が行われます。

大腸内視鏡による組織検査、腹部や胸部のCTで大腸がんの広がりを調べます。
 

  • 0期:がんが大腸の粘膜にとどまる
  • Ⅰ期:がんが大腸の筋膜にとどまる
  • Ⅱ期:がんが大腸壁の筋膜を越えてはいるが、リンパ節転移はない
  • Ⅲ期:がんがリンパ節に転移している
  • Ⅳ期:腹膜、肝臓、肺などへの遠隔転移がある

 

 

 

大腸がんの治療

大腸がんの病期によって治療法が変わってきます。

大腸がんが小さく、ポリープ内や、非常に早期の場合は大腸内視鏡検査中に切除できます。

ポリープ状でないものは、病変の下層部に生理食塩水を注入し、浮き上がらせて切除します。

それより大きめの大腸がんは、腹腔鏡 (ラパロスコピー) 下の手術で切除できます。

大腸がんが大腸壁まで至っているような浸潤性大腸がんの場合は、大腸の一部を切除する大腸切除術を行います。

同時に近隣のリンパ節も切除します。

大腸がんが肛門に近い場合は、人工肛門を造設する必要があります。

大腸がんが非常に進行している場合や、全身状態が悪い場合は、大腸の閉塞を治すだけだったり、他の状態を良くするためだけに手術をすることがあります。

この場合、手術で大腸がんを治療するわけではありません。

転移がある場合でも、転移が肝臓の一部だけで全身状態が良い場合は、大腸がん切除と転移がんの切除を同時に行います。

手術前後に化学療法を受けます。

化学療法は、手術後のがんの再発予防、あるいは手術が困難な進行がんまたは再発がんに対して行われます。

最近では、分子標的治療という体内の特定分子だけを狙い、がん細胞を抑える方法が採用されています。

直腸がんの場合は、化学療法と放射線療法の両方が行われます。

放射線療法は早期の大腸がんに使われることはまずありません。

直腸がんの場合、再発の抑制、手術前のがんのサイズの縮小などの目的で行われます。

放射線療法は大抵の場合、化学療法と組み合わせて行われます。
 

 

 

大腸がんの予防

大腸がんの予防で一番大切なのは、早期発見をするということです。

大腸がんは大腸ポリープや大腸粘膜病変から進行するので、それを早期で発見し切除することによって、大腸がんの予防ができるようになります。

50歳を過ぎたら大腸がんのスクリーニング検査を受け始めます。

大腸がんの家族歴のある人やリスクの高い人は40歳くらいからスクリーニングを始めます。

スクリーニング法としては、1年に1回の便潜血検査、5年毎のS状結腸鏡検査、10年毎の大腸内視鏡検査、5年毎のバーチャルコロノスコピーなどがあります。

ライフスタイルを変えることによる大腸がんの予防としては、運動が最も効果があると考えられています。

その他、予防の可能性のあるものとしては、適正体重に保つ、野菜、果物、葉酸、カルシウム、ビタミンD、食物繊維、非ステロイド系抗炎症鎮痛薬 (アスピリンを含む)、ホルモン補充療法などがあります。

日本人対象の研究では禁煙も効果があるとされています。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2012年2月1日号掲載)

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