大人もかかる子供の感染症 (2011.11.1)

kim top 
dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


ご質問、ご連絡はこちらまで

column line text932
 

大人もかかる子供の感染症

子供の感染症は免疫がなければ大人でもかかります。

日本で大学生の間に麻疹 (はしか) やおたふく風邪の流行が起こり、アメリカで大人の間で百日咳の流行があったのは、まだ記憶に新しいところです。

一般的に、小児感染症は子供の時に感染する方がより重症化しますが、中には、大人になって感染する方がより深刻になるものもあります (例:おたふく風邪)。
 

 

 

子供の感染症

子供に多い感染症は、免疫のない大人にも感染するわけですが、これにはいくつかのパターンがあります。
 

  1. 子供の時にかかっているはずの病気にかかっていなかった (例:伝染性紅班)。
  2. 子供の時はワクチンを受けて予防されていたが、時間とともにワクチンの効果が薄れてきた (例:百日咳)。
  3. 比較的新しいワクチンで接種を受けている子供が感染しなくなった代わりに、接種を受けていない大人が感染するようになった (例:インフルエンザ桿菌=かんきん= Hib による髄膜炎)。
  4. 感染しても、また何度も感染する (例:アデノウイルス感染症)。
  5. 子供と接触が多いため (例:溶連菌感染症)。⑥ワクチンを受けたが免疫がつかなかった。

 

 

 

各感染症についての説明

子供に多い感染症の代表的なものについて簡単に説明します。

そして、説明の後に、原因や潜伏期間などを項目ごとにまとめますので、それも参考にしてください。
 

①原因。②主な感染様式 (飛沫感染とあっても、直接感染でも起こることも多いのです)。③潜伏期間。④症状。⑤合併症。⑥学校、会社を休む期間。⑦治療法。⑧予防法。

*注:病名は、日本語医学名 (日本語一般名) =英語医学名 (英語一般名) の順です。
 

 

▽麻疹(はしか)=Measles (Rubeola)

はしかは、ワクチンが始まる前は、世界中で毎年200万人以上の犠牲があった重症化する可能性のある感染症です。アメリカでは主に、外国人やワクチンを受けていないアメリカ人が外国から持ち込んで感染します。
 

①麻疹ウイルス。②飛沫。③10〜12日。④発熱、咳の後に発疹⑤肺炎、中耳炎、脳炎。⑥発疹が出て4日間 (発疹が出る4日前から感染性あり)。⑦対症療法、ガンマーグロブリンの注射。⑧麻疹ワクチン (MMR)。
 

 

▽流行性耳下炎(おたふくかぜ)=Mumps

主に幼児から学童期の病気ですが、大人の場合、子供よりも脳脊髄膜炎や睾丸 (こうがん) 炎を起こしやすくなります。
 

①ムンプスウイルス。②飛沫。③16〜18日。④発熱、耳下腺の腫脹。⑤難聴、脳炎、睾丸炎。⑥耳下腺炎が出現して5日間 (耳下腺炎が腫れる1〜2日前から感染性あり)。⑦対症療法。⑧おたふくワクチン (MMR)。
 

 

▽風疹(三日ばしか)=Rubella (German measles)
 

子供は発疹から始まりますが、大人は微熱やリンパ節の腫脹 (しゅちょう) から始まります。成人女性の場合、指、手首、膝の関節痛から始まることがあります。
 

①風疹ウイルス。②飛沫。③2〜3週間。④発疹、微熱。⑤脳炎 (大人)、先天性風疹症候群 (新生児)。⑥発疹が出て5〜7日間 (発疹の出る数日前より感染性あり)。⑦対症療法。⑧風疹ワクチン (MMR)。
 

 

▽水痘(水疱瘡:みずぼうそう)=Varicella (Chickenpox)

ワクチン接種が始まる前は、アメリカでは毎年50人程度の子供と、同数程度の大人が亡くなっていました。
 

①水痘・帯状疱疹ウイルス。②飛沫、接触。③2〜3週間 (発疹の出る1〜2日前から感染性あり)。④水疱を伴う発疹、発熱、かゆみ。⑤皮膚の細菌感染、肺炎、脳炎。⑥すべての発疹が痂皮 (かさぶた) 化するまで。⑦抗ウイルス薬⑧水痘・帯状疱疹ワクチン。
 

 

▽伝染性紅班(りんご病=Erythema Infectiosum (Fifth disease, slapped cheek)

子供では発熱のない場合もありますが、皮疹は出ます。逆に、成人では皮疹がなく、頭痛、発熱、関節痛および関節炎だけのことがあります。指、手首、膝、足首、肩などの関節の腫れや痛みが起こります。
 

①エリスロウイルス。②飛沫③1〜3週間。④両頬の発疹、発熱、関節痛。⑤貧血、流産 (妊娠初期の女性)。⑥必要なし (症状の出る前の約1週間が最も感染性がある)。⑦対症療法。⑧ワクチンは存在しない。
 

 

▽百日咳=Pertussis (Whooping cough)

アメリカでも日本でも大人の感染が問題になっています。発症して最初の1〜2週間の症状は風邪と大差なく、診断が困難で、その間に感染が広がります。乳児が感染すると無呼吸の原因になり、重症化し死亡することもあります。
 

①百日咳菌。②飛沫。③7〜10日。④風邪症状 (最初の1〜2週間)、それから激しい咳、乳児は無呼吸。⑤肺炎、けいれん、無呼吸。⑥最低、咳が始まって2週間。⑦抗生物質。⑧三種混合ワクチン (子供は DTaP、思春期の青少年と大人は Tdapを)。
 

 

▽溶連菌感染症=Streptococcal pharyngitis (Strep throat)
 

溶連菌感染症は学童期の子供に多い病気ですが、子供と接触のある成人も感染します。家族内感染も一般的で、家族全員が感染することもあります。
 

①A型溶血性連鎖球菌。②飛沫、接触。③1〜3日。④咽頭痛、発熱。⑤リューマチ熱、猩紅熱、腎炎。⑥抗生物質を服用して24時間。⑦抗生物質 (ペニシリン)。⑧ワクチンは存在しない、手洗いなど。
 

 

▽RSウイルス感染症=RSV infection

RSウイルス感染症は乳幼児に細気管支炎や肺炎を起こし、1歳未満の子供の肺炎と細気管支炎では最も多い原因です。時には重症の呼吸不全の原因になります。大人が感染しても、風邪とほとんど区別がつきません。
 

①RSウイルス。②飛沫。③2〜8日。④咳、発熱、鼻水。⑤肺炎、重症呼吸不全。⑥3〜8日。⑦生食水の吸入、気管支拡張薬、抗ウイルス薬。⑧ワクチンは存在しない、手洗いなど。
 

 

▽アデノウイルス感染症=Adenovirus infection
 

アデノウイルスは肺炎、流行性結膜炎、咽頭結膜炎 (プール熱)、胃腸炎などを起こすウイルスで、主に学童期以下の子供の病気ですが、大人でもかかります。ウイルスの型によって起こる症状が異なってきます。52種類以上の型があるので免疫ができにくいのです。
 

①アデノウイルス。②飛沫、直接、水など。③2〜14日。④咳、下痢などいろいろ。⑤急性呼吸不全。⑥数日程度。⑦対症療法。⑧手洗い、タオルやコップの協同使用を避ける、など。
 

 

▽ロタウイルス胃腸炎(冬期乳児嘔吐下痢症)=Rotavirus infection

ロタウイルスは主に冬期に乳幼児の下痢の原因になるウイルスで、大人も感染しますが症状は小児より軽めです。症状の程度は様々ですが、下痢が続くと便の色が白色になってきます。
 

①ロタウイルス。②糞便から。③2日程度。④下痢、発熱、腹痛。⑤脱水、電解質異常。⑥2〜8日。⑦水分補給、対症療法。⑧ワクチン (生後15週未満で始めます)、手洗い。
 

 

▽手足口病 =Hand, Foot, and Mouth disease=HFMD

5歳以下の小児に多い病気ですが、大人も感染します。ヘルパンギーナと症状はよく似ています。 

①コクッサキーウイルスA16、エンテロウイルス71など。②直接、飛沫。③3〜7日。④発熱、水疱、咽頭痛。⑤ウイルス性髄膜炎。⑥数日。⑦対症療法。⑧ワクチンは存在しない、手洗い。
 

 

▽ヘルパンギーナ= Herpangina (mouth blisters)

口内に水疱、潰瘍 (かいよう) を生じる感染症で、時々成人にも起こります。夏に多く、夏風邪の一つです。子供は口内が痛いので食事や水分を取るのをいやがります。
 

①コクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71。②飛沫、糞便。③4〜14日。④発熱、口内の痛み。⑤脱水。⑥数日。⑦対症療法。⑧ワクチンは存在しない、手洗い。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2011年11月1日号掲載)

​