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dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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アメリカでの小児健診
Well Child Checkups

出生時から思春期まで、小児には実に多くの健診があります。

小児の健診は、子供の成長と発達を評価する意味で重要です。

中でも、生後1年以内の健診は、先天性異常の発見、予防接種の施行などもあり、特に重要です。

それぞれの健診は、医師による健康評価だけでなく、親が日常疑問に思っていることを小児科医に問う貴重な時間でもあります。

小児の健診は、子供の親と小児科医とのコミュニケーションの場でもあるのです。

健診時には、最後の健診から今回までの変化についての質問、母乳・人工調整乳などの栄養評価、授乳回数、排便、排尿などの評価。

身長・体重・頭位の評価、発達の評価、症状の有無、予防接種の副作用チェックなどが行われます。

年齢に応じた子育ての注意事項も聞くといいでしょう。4〜5歳になると幼稚園 (キンダー) 入園に際して、視力、聴力検査、貧血検査などが加わります。

 

 

小児健診の予定

小児が最初に受ける健診は、出生直後の健診です。形態上の異常から、心肺機能の異常、神経学的異常など、主に先天的異常の有無を評価しながら全身状態の健診が行われます。

小児科医が決まっていない新生児には、その日の当番医が健診をします。

アメリカでの新生児の入院期間は48時間程度です。

日本人の赤ちゃんは、白人の赤ちゃんに比べて新生児黄疸 (おうだん) になる確率が高く、血液検査でビリルビン値の測定を受けることがあります。

退院の時点で黄疸の程度が比較的高い赤ちゃんは、退院後、2〜3日以内に小児科医のオフィスでビリルビン検査を受けます。

黄疸は血中のビリルビンという値が高くて起こるもので、一定値以上の赤ちゃんは光線療法を受けることになります。

出生後、退院までの間、特に何も異常がなければ、次の健診は退院後2〜3日以内、あるいは生後1〜2週間になります。

以降、健診は、生後1か月、2か月、4か月、6か月、9か月、12か月、15か月、18か月、2歳、3 歳、4 歳、5 歳、6 歳、8 歳、10 歳時で、それ以降21歳まで毎年です。

 

 

発達の指標

小児の発達のチェックは健診ごとに行われ、小児健診の非常に重要な部分になっています。

簡単に発達の指標を示してみます。(*下表参照)

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小児健診での診察

健診では全身の診察が行われますが、年齢に応じて診察のやり方も変わってきます。

病気の早期発見、成長の評価、発達の評価などが行われます。

●    身長体重:身長・体重の健全な増加は小児の発達にとって非常に重要です。また、身長・体重増加の遅れは、成長ホルモンの分泌異常など病気に関係することもあります。年齢に応じて身長や体重の増加は変化します。

●    頭部:頭の形や頭の上にある大泉門という柔らかい部分を調べます。出産による頭の歪みは時間と共に正常な形に戻りますが、それ以外の歪みは頭蓋骨の病気のこともあります。寝る姿勢による頭の変形は病気とは言えません。

●    目:生後数か月は目が寄っているように見えますが、多くの場合は正常です。斜視などの可能性がある場合は、その後のフォローが大事です。出生後は赤色反射を調べて、神経芽細胞腫や先天性白内障などの有無をみます。正式な視力検査は4歳を過ぎないと困難ですが、物が見えているかどうかは簡単なテストで分かります。光に対する瞳孔の反射や、目の動きなども調べます。

●    耳:外耳だけではなく、耳の中を診察することもあります。外耳道や鼓膜を耳鏡で評価します。特に聴力の低下している小児は、中耳に液が貯留していないか調べます。    

●    聴力:    乳幼児の聴力は呼びかけや音による反応で、ある程度判断します。聴力低下の疑いがある時は特殊な聴力検査をします。学童期の聴力低下は学習の障害につながります。5歳を過ぎると通常の聴力検査ができます。

●    口:赤ちゃんでは舌にカンジダというカビが生え、真っ白になることがあります。また、幼児以降では地図状舌という舌の模様のものが見えることがあります。

●    呼吸:呼吸音の異常があるかどうかを診ます。喘息 (ぜんそく)、上気道の狭窄 (きょうさく)、鼻孔の狭窄、先天的な異常がみられる時は呼吸音に異常のある時があります。

●    心音:    心臓に雑音があると、心臓の弁膜や心筋などに先天的な異常のあることがありますが、心雑音が存在しても心臓に構造的な異常のないことも多く、必ずしも精密検査が必要なわけではありません。

●    神経学的異常:小児は年齢に応じて神経学的異常の判断も変わってきます。年齢に応じた神経学的診察が必要になってきます。

●    腹部:    乳幼児ではお腹が出ている時があります。赤ちゃんでは授乳の際に空気を一緒に呑 (の)  み込んでいることが多く、打診で特徴的な音がします。便秘の小児はオナラが発生していることもあります。内臓の肥大や腫瘍などの病気でお腹が大きくなることもあるので、腹部の診察も大事です。へそのヘルニアやそけい部のヘルニアは赤ちゃんにもあります。

●    股関節:股関節の診察は大事です。アメリカ健康ノートの第146回で説明した股関節脱臼は早期発見が大切です。

●    皮膚:    年齢により特有の皮膚の病気があります。赤ちゃんでは新生児湿疹、オムツかぶれなどですが、感染や他の病気による皮膚の病気もあります。また、出生時から存在する血管腫やあざの評価もします。アトピー性皮膚炎の場合は、特徴的な分布をすることがあります。

●    陰部:    陰部の診察では、陰部の形態異常の発見が赤ちゃんでは重要です。比較的多い異常としては、陰嚢 (のう) 水腫、停留睾丸、女児の外陰部閉鎖などがあります。アメリカでは、男の子の赤ちゃんは出生後1〜2日で包茎の手術を受けることが多いのです。また、陰部の成長は、性ホルモンが正常に分泌しているかを評価するのにとても重要ですが、とりわけ思春期の男女の陰部の診察は、思春期の小児の受診自体が少ないのと、小児の羞恥心や診察の困難さから十分に行われていないのが現状です。

 

 

予防接種

小児の健診と同時に予防接種も行われます。

通常、予防接種は生後2か月目から、小児科学会や CDC (病気の予防と疾病コントロールをする政府の機関) の決めたスケジュールに沿って行われます。アメリカ人の子供たちは、学校から要求された予防接種の種類に関わらず (学校が要求する予防接種は最低基準の予防接種です)、すべての予防接種を受けています。

予防接種の時期は日本とアメリカでは微妙に違います。

現在、日本でもアメリカで行われているワクチンのほとんどが入手可能ですが、一定年齢に達しない予防接種はアメリカでは無効扱いになることがあります。

また、肺炎球菌のワクチンは日本では PCV7 という7価のものが使われていますが、アメリカではすべて PCV13 という13価のものに代わっています。

 

 

栄養

6か月未満の赤ちゃんの栄養は母乳または人工調整乳によって取りますが、母乳は出る限り最低2歳まで与えます。

今は離乳食も、アメリカでは離乳食という言葉よりも補助食、または補助栄養という言葉が使われています。

牛乳をベースにした調整乳にアレルギーのある赤ちゃんには、低アレルギーの調整乳があります。

健診の時に栄養のことや離乳食のことを相談するのも大切です。

人工調整乳もいろいろな種類があり、日本とも大きく違うので、疑問があれば健診時に質問してください。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2013年2月1日号掲載)

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