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dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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アナフィラキシー (Anaphylaxis)= 重度のアレルギー反応

アナフィラキシーは重度のアレルギー反応で、稀 (まれ) に死に至ることがあります。

アメリカでは10万人に20人程度の割合で生じ、毎年500〜1,000人程度の人が亡くなっています。主な原因は、食べ物、ハチなどの虫刺され、薬物などですが、それ以外にも様々な原因があります。

 

 

アナフィラキシーのメカニズム

アナフィラキシーは、体内に侵入してきたアレルゲン (抗原) に対して体が過剰に反応することですが、その反応を担うのが IgE という免疫グロブリン (抗体) です。

この IgE はアレルゲンと結合した後、肥満細胞や好塩基球を刺激し、様々な化学伝達物質を放出させます。

その結果、全身にアレルギー反応が起こってしまうのです。

IgE は、主に寄生虫に対する炎症反応やアレルゲンに対する即時型アレルギー反応を起こす免疫グロブリンですが、寄生虫病の少ない先進国では主に花粉症やアレルギー喘息 (ぜんそく) などのアレルギー反応に関与しています。

アレルゲンの侵入によって作られた IgE 抗体は、同じアレルゲンが再度体内に侵入してくると過剰に反応するのでアナフィラキシーが起こりやすくなります。

ただ、実際のアナフィラキシーでは、最初のアレルゲンの侵入によって起こることも少なくないようです。

また、アレルゲンが花粉やダニなどの場合はアナフィラキシーを起こすのは非常に稀です。

X線検査で使う造影剤に対する過剰反応はアナフィラキシーと似ていますが、IgE が関与するアナフィラキシーでなはなく、アナフィラキシー様反応、または類アナフィラキシーと呼ばれています。

 

 

アナフィラキシーの原因

アナフィラキシーの原因になるものとしては、食べ物、薬物、昆虫の毒があります。

食べ物ではピーナッツ、他のナッツ類、魚貝類、牛乳、卵など、薬物ではペニシリンやワクチンなどが原因になります。昆虫の毒ではミツバチ、スズメバチ、ジガバチ、アリの一種などがあります。

他に頻度は低いですが、ラテックス (ゴム製品)、麻酔時の筋弛緩薬、運動があります。

運動によるアナフィラキシーは、ジョギングや歩くだけでも誘因されることがありますが、食事や疲れなどの要素があると起こしやすくなると考えられています。

アスピリンやイブプロフェンなどの抗炎症鎮痛薬やX線の造影剤でアナフィラキシー様の反応が起こることがあります。

また、アナフィラキシーの原因が分からないこともあります。

 

 

アナフィラキシーを起こしやすい人

過去にアナフィラキシーを経験したことがある人、食べ物・薬物・昆虫の毒にアレルギーのある人や喘息のある人、家族に運動誘発性アナフィラキシーのある人 (運動誘発性アナフィラキシーの場合)。

ただし、花粉症など大気中のアレルゲンにアレルギーのある人はアナフィラキシーのリスクにはなりません。

 

 

アナフィラキシーの症状

アナフィラキシーの症状は、肥満細胞などから放たれた化学伝達物質によってもたらされ、アレルゲンに接触してから数分から30分以内に症状が発現するのが普通ですが、数秒で起こることもあれば、30分以上経過して発症することもあります。

また、一度症状が改善した後、症状が再発することもあります。

症状としては、かゆみ、皮膚の赤み、じんましん、呼吸困難、胸部苦悶感、咳 (せき)、不安、腹痛、嚥下(えんげ)困難、めまい、動悸、話ずらくなる、顔・目・舌の腫れ、意識障害、喘鳴(ぜんめい)、頻脈、嘔吐、嘔気、血圧の低下、フラフラ感、意識障害などがあります。

症状が重度の場合はショック状態となり、心肺停止に至ります。

 

 

アナフィラキシーの診断と検査

アナフィラキシーの診断は医師の臨床判断で行われますが、アナフィラキシーの原因になるような食べ物、薬品、昆虫による毒などに接触があった場合は診断の助けになります。

アナフィラキシー自体を検査する方法はありませんが、皮膚のパッチテストや血液検査によるアレルギーテストがありますので、アレルギーの可能性がある場合は事前に検査することが可能です。

ただし、IgE が関与しないアナフィラキシー様反応の場合はアレルギーではないので、事前に検査するのは困難です。

 

 

アナフィラキシーの治療

心停止、呼吸停止などの重度の症状の場合は、心肺蘇生、エピネフリン (アドレナリン) の注射、酸素投与などの救急処置が必要になりますので、アナフィラキシーになった人がいたらすぐに911に連絡し、救急車の要請をします。

そして、その人の脈と呼吸をチェックし、もしなければ心肺蘇生 (CPR) を開始します。

その人がエピペン (自己用注射) などを持っていたら、それをすぐにその人の太もも (大腿) に注射します。

救急室では心肺蘇生の継続、人工呼吸管理、抗ヒスタミン剤やステロイドの注射などが行われます。

アメリカではアナフィラキシーになる可能性のある人はエピペンなどを持っていることが多いので、その場合はこれを注射します。

これは1回だけ使用するように、注射器の中にすでに1回分のエピネフリンが入っています。

これを大腿に打つと自動的にエピネフリンが筋肉内に注入されます。

アナフィラキシーではエピネフリンの注射が再重要なので、救急車を要請したらすぐにエピネフリンの有無を確かめましょう。

エピネフリンの注射によって症状が軽快した後でも、必ず救急車で救急室に行きます。症状が再び悪化することがあるからです。

化学伝達物質によるアナフィラキシーの様々な症状に即時対処できるのはエピネフリンだけなので、1にも2にもエピネフリンと覚えておきましょう。

抗ヒスタミンや他のアレルギーの薬はアナフィラキシーの症状の改善に使われますが、アナフィラキシーの進行そのものを改善する効果はありません。また、ステロイドは即効性がないのでエピネフリンの後で使われます。

 

 

アナフィラキシーの予防

最大の予防法は原因になるものを避けるということです。

既にアナフィラキシーを経験したり、食べ物アレルギー、薬物アレルギー、昆虫の毒に対するアレルギーがあり、アナフィラキシーのリスクの高い人は、その原因になるものを避けましょう。

食べ物アレルギーのある人は、食品のラベルをよく読み、食べる前に必ず含まれている内容物をチェックします。

薬物にアレルギーのある人は、自分の主治医にはもちろん、専門医に紹介された時もアレルギーのある薬について報告しておきましょう。

ハチにアレルギーのある人は、ハチの巣のあるような場所に行くときは長袖のシャツと長ズボンを着る、明るい色は避けて、香水など芳香性のものは使用しないなどの注意事項を守りましょう。

アレルギーのある薬や物をリストしたブレスレットやネックレスをいつも身に付けていると、アナフィラキシーになった際には敏速に治療が行われます。

減感作療法 (免疫療法) を受ける場合は、注射後30分は病院にいるようにします。

エピネフリンなどの注射はいつも期限が切れていないか注意しておきましょう。 

今までアナフィラキシー、またはそれに近いアレルギー反応のあった人は、医師にエピペンを処方してもらい、1本は家、学校、職場などに置いておき、いつも1本はバッグに入れておきます。

もし、アナフィラキシーがハチ毒などで誘発された場合は、長期にわたる免疫療法の対象になります。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2012年10月1日号掲載)

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