kim top 
dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


ご質問、ご連絡はこちらまで

column line text932
 

アルコールによる健康障害
(Alcohol-related health problems)

アメリカでは、男性の3分の2、女性の半分の人がアルコールの飲酒をしますが、そのうち4分の1の人は、アルコール摂取による様々な問題を経験しています。

日本でもアルコール依存者の数が230万人程度で、飲酒者の26人に1人がアルコール依存者ということになり、社会的にも大きな問題になっています。
 

 

 

アルコール飲酒による健康障害

飲酒による健康障害は多岐にわたります。

その起こり得る病気を羅列するだけでも、脂肪肝、アルコール性肝炎、急性または慢性の膵炎、心筋症、不整脈、食道静脈瘤、マロリーワイス症候群、アルコール禁断症状、けいれん、ウェルニッケ脳症、認知症、末梢神経症、胎児アルコール症候群、性機能不全、無月経症、早期閉経、自然流産、肝臓がん、頭頚部のがん、膵 (すい) 臓がん、食道がんなどがあります。健康障害以外にも、交通事故、放火、暴力事件など社会的な事件なども引き起こします。
 

 

<肝臓に対する影響>

初期には、ガンマーGTPなど肝臓酵素の上昇だけですが、しだいに脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変と発展していきます。肝硬変になると、もう後戻りはできません。肝機能は著しく低下していき、食道静脈瘤などによる上部消化管出血、血液凝固因子の生成低下による出血傾向、腹水の貯留、全身の浮腫 (むく) み、肝腎症候群などの原因になります。
 

 

<膵臓に対する影響>

アルコールは急性膵炎や慢性膵炎の原因になります。上腹部痛、背部痛、嘔気、嘔吐、体重減少などの症状が起こります。
 

 

<心臓・血管系に対する影響>

アルコールは、高血圧、心筋症、不整脈、脳卒中の原因になります。
 

 

<胃腸系に対する影響>

胃炎、胃食道逆流症、下痢、消化性潰瘍 (かいよう)、食道静脈瘤、マロリーワイス症候群などの原因になります。上部消化管出血は、血液凝固因子の低下も伴うと極めて重症になる可能性があります。
 

 

<神経系に対する影響>

頭痛、失神、末梢神経症、禁断症状、けいれん、ウェルニッケ脳症、認知症、その他いろいろな神経症状が出てきます。
 

 

<生殖系に対する影響>

性的機能障害、無月経、無排卵、早期閉経、自然中絶など。
 

 

<がん>

肝臓がん、頭頚部がん、膵臓がん、食道がんなど。
 

 

<精神科>

うつ病、不安症、反社会的人格、情緒障害など。
 

 

<法的な問題>

交通違反、酒気帯び運転、酔っ払い運転、交通事故、暴力、放火など。
 

 

<家庭内の問題>

家族間不和、養育放棄、孤立、離婚、家庭内暴力、チャイルドアビュースなど。
 

 

<仕事上の問題>

遅刻、早退、欠勤、仕事上の失敗、信用喪失、人間関係のトラブル、失業
 

 

 

急性アルコール中毒
 

アルコール飲酒による死亡事故は、大学生の間で後を絶ちません。

急性アルコール中毒による死は、短時間での大量飲酒をしなければ予防できます。

アルコールは少量飲むと、幸福感が出てきて陽気になります。

飲酒量が多くなって、アルコールの血中濃度が100 mg/dLになると、判断力の低下、情緒不安定などの症状が出てきます。

200 mg/dLになると、歩行障害 (千鳥足)、言葉の不明瞭、嘔吐・嘔気が起こり、300 mg/dLになると、混迷状態になり、刺激を与えないと目が醒めなくなります。

400 mg/dLになると、刺激しても覚醒しない昏睡状態になり、呼吸が抑制され、最終的には死に至ります。

アルコールの血中濃度が80 mg/dl以上になると、カリフォルニア州では飲酒運転と判断されます。

飲酒中に意識を無くし、呼びかけに反応しない人がいれば、救急車を要請してください。
 

 

 

アルコール乱用とアルコール依存症
 

慢性的な過度のアルコール摂取によって、前述したような様々な問題が生じてきますが、飲酒のパターンによって、アルコール乱用とアルコール依存症に分類されます。
 

 

<アルコール乱用>

繰り返し飲酒することによって、職場、学校、家庭でいろいろなトラブルを起こします。職場や学校を無断で休んだり、仕事や学業がおろそかになって停学や退学になったり、家事や育児を無視したりします。飲酒でまともにできないのに車の運転や機械を操作したり、違法な行為をしたりします。

アルコール乱用の場合は、しばらく飲酒をしなくても身体的、精神的には問題がなく、アルコールに対する依存性はありません。
 

 

<アルコール依存症>

酔うのに必要なアルコール量が著しく増え、同じ飲酒量ではその効果が次第に低下していきます。

禁酒すると、数時間から数日の間に禁断症状が出てきます。自律神経の高揚 (発汗、心拍数の上昇)、手指の震え、不眠、吐き気と嘔吐、一過性の幻覚・幻触・幻聴、錯覚、不安、不穏、けいれんなどの症状。禁断症状を改善するためにアルコールや他の薬物の摂取が必要になります。飲酒量を減らそうという意志や努力はありますが、なかなか成功はしません。
職場、学校、家庭で様々なトラブルがあるにも関わらず、継続して飲酒をします。

 

 

 

アルコール乱用とアルコール依存症の診断
 

アルコール依存症などの診断は、飲酒にまつわる行為とその結果についてCAGEテストなどの質問票によって行われます。

CAGEテストは4つの質問に答えてもらうものですが、それらは、① 今までに飲酒量を減らさなければいけないと感じたことがありますか、② 今までに飲酒を非難されて苛立ったことがありますか、③ 今までに飲酒に罪意識をもったことがありますか、④ 今までに、朝酒や迎え酒を飲んだことがありますか —— というものです。

3つ以上に該当すると、アルコール依存症に当たります。

診察では高血圧があるかもしれません。

長期間飲酒している人には、クモ状血管腫、静脈瘤、黄疸、振戦 (しんせん)、歩行障害、末梢神経症、不整脈などをチェックします。

血液検査ではガンマーGTPが最初に異常になります。

続いて、AST や ALT などの肝酵素が上昇していきます。

そして、AST が ALT の倍以上になることが多くなります。

病気が進行していくと、血液凝固因子があまり肝臓で生成されなくなるので、PTという値が上がってきます。

葉酸の欠乏から MCV という値が上昇していきます。

アルコール性の胃炎のある人は貧血になっている可能性もあります。

その場合は MCV が低くなります。もし、両方の問題がある時は MCV は一見正常を示します。
 

アルコール依存症のリスクのある飲酒者 男性の場合は、1週間に14ドリンク以上飲む人、1回当たり4ドリンク以上飲む人はアルコール依存症になるリスクがあると見なされます。

女性の場合は、1週間で11ドリンク以上、1回当たり3ドリンク以上飲む人です。

ただし、1ドリンクは12gの純粋アルコールで、ビールだと360cc、ワインだと150cc、ウイスキーなどは45cc程度に相当します。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2012年8月1日号掲載)

​