2020年 10月 26日

American Health アメリカ健康ノート

変形性関節症 Osteoarthritis = OA (2013.6.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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変形性関節症
Osteoarthritis = OA

       
       

変形性関節症 (関節炎) は関節炎の中で最も頻度の高いもので、アメリカでは関節炎の約半数を占め、70歳までにはほとんどの人が何らかの症状を持つようになります。

55歳以下では男女とも同じように起こりますが、55歳を過ぎると女性の方の割合が高くなります。
 

 

変形性関節症の原因
 

変形性関節症は、年齢そのものが原因になっているわけではありませんが、年齢が上がるに従って起こりやすくなるので、一種の老化現象とも言えます。

加齢とともに関節内軟骨のプロテオグリカンという構成物が少なくなると、軟骨に含まれる水分が減少し、弾力性が落ち、衝撃や摩擦に対する抵抗力が低下します。

そして、軟骨が長年使用している間に磨り減っていきます。  

衝撃を和らげる関節軟骨が磨 (す) り減ると、関節の骨と骨が擦り合ったりして、痛みなどの症状が起こります。

関節の炎症や関節の骨端表面にできる骨棘  (こつきょく) という突起状物も痛みの原因になります。

関節の周りの靱 (じん) 帯や筋肉が弱くなり、関節が硬直してきます
 

変形性関節症は、加齢によるもの以外にスポーツ外傷、肥満、関節の手術、事故、腱 (けん) の傷害、糖尿病、ホルモン異常などを原因として2次的に起こるものもあります。
 

 

 

変形性関節症のリスク
 

膝 (ひざ) をついたり、しゃがんだりを1日1時間以上続けるような仕事や、物を持ち上げたり、階段を上ったりする仕事はリスクになります。

スポーツでは、フットボールのように関節に直接衝撃が加わるようなスポーツ、野球やサッカーのように関節をひねったりするスポーツ、物を投げたりするスポーツはリスクになります。

関節に出血するような血友病、関節への血液供給が絶たれるような病気、肥満、痛風や関節リウマチなどの他の関節炎もリスクなります。
 

 

 

変形性関節症の症状
 

変形性関節症はどの関節にも起こりますが、体重の負荷がかかる関節 (膝など) によく起こります。

膝以外の好発部位としては、手指、股関節、首、腰などです。

手指は遠位指関節 (第一関節) に起こることが多く、近位指関節に好発する関節リウマチとは区別されます。
 

症状は関節の痛みとこわばり (硬直) です。

痛みは運動の後に起こることが多く、体重や圧力がかかると起こりやすくなり、関節が徐々に硬直し、だんだん動かしにくくなります。

また、関節を動かすと、骨が擦れ合う音やクリック音がすることがあります。朝起きると、手足の関節が動かしにくい状態になるかもしれません。

通常は30分以内に改善します。

日中、関節を使うと症状が悪化し、休憩すると改善するようになります。

より悪化すると休憩しても痛みが消えず、夜中に痛みで起きることもあります。
 

 

 

変形性関節症の診断
 

変形性関節症の診断は、主に問診、診察、それに関節のX線で行われます。

診察では、関節の硬直、動かしたときに音がしたり、関節の腫脹や可動域の制限、関節の圧痛などを調べます。

X線では軟骨は写らないですが、軟骨が失われていくと関節の骨と骨の間隙が狭くなり、また骨棘が見えます。

MRIでは骨および軟部組織も見えるので、変形性関節症だけでなく、他の病気との鑑別もできます。

血液検査や関節液検査もまた、変形性関節症の診断にはあまり役には立たないですが、他の関節炎と鑑別ができます。
 

 

 

変形性関節症の治療
 

治療は痛みのコントロールと関節機能の向上に焦点が当てられますが、これには運動、休養、体重コントロール、薬物療法、外科手術、代替医療などがあります。

残念ながら、変形性関節症そのものを治す治療法はありません。

特に、運動は痛みを和らげ、関節の柔軟性を増し、体重のコントロールも助けるのでとても重要です。
 

 

▽薬物療法
 

アセトアミノフェン (Tylenol) のような鎮痛薬。

ただし、アセトアミノフェンは痛みを抑えますが炎症は抑えません。

肝臓機能の悪い人は服用を控えます。
 

イブプロフェンやナプロキシンのような抗炎症鎮痛薬は市販で購入できます。

より強い抗炎症鎮痛薬は処方箋 (せん) になります。

胃痛、耳鳴り、出血傾向、腎臓や肝臓障害を起こすことも稀 (まれ) ですがあります。

セレコキシブ (Celecoxib) のように長時間作用する抗炎症鎮痛薬が最近はよく使われていますが、胃に優しい代わりに心筋梗塞の可能性を若干上げると言われているので、服用に際しては注意が必要です。

コデイン (Codeine) のような強力な鎮痛薬は、依存性が出る可能性があるので短期間の激しい痛みに対しては適していますが、長期服用には不向きです。

吐き気、便秘、眠気などの副作用があります。
 

 

▽関節内注射
 

ステロイドの注射は炎症や痛みを抑え、効果も数週間から数か月続く場合もありますが、回数が増えると関節破壊を増進させる可能性があるので、痛みの激しい時に限ります。

人工関節液であるヒアルロン酸誘導体 (Hyalgan、Synvisc) の注射は膝にクッションの役割を与えて痛みを和らげます。

3〜6か月の鎮痛効果があるとされています。

他に、関節内注射ではないですが、関節が腫れた時に、関節穿刺 (せんし) をして関節液を抜くと痛みが改善します。
 

 

▽理学療法・リハビリ
 

理学療法では関節の周りの筋肉を鍛え、関節の可動域を増加させ、痛みを和らげます。

理学療法を6〜8週間試みます。

それでまったく改善のない時は効果がないかもしれません。

理学療法には超音波、電気刺激などの治療法もあります。
 

 

▽他の痛みを和らげる方法
 

関節を支えたり、圧力を和らげるために、関節ブレース、補助具、靴のインソールを使用したり、歩行器 (ウォーカー) を使います。

また、市販の痛み止めクリームを使うのもいいかもしれません。

トウガラシの成分であるカプサイシン (商品名:ArthriCare、 Zostrix)、サルシン (Aspercreme)、メチルサリチル酸 (Ben-Gay, Icy Hot) などです。ただし効果は個人差があります。

冷シップや温シップも痛みを和らげる効果があります。
 

 

▽外科手術
 

関節の重度の変形や、内科的方法で改善のない重度の変形性関節症は外科手術の対象になります。

関節鏡で行うもの。骨の一部を削って骨のアライメントを整える手術。それと人工関節置換術などがあります。
 

 

▽代替医療
 

鍼灸 (しんきゅう) は痛みを和らげ、関節機能をある程度改善すると言われています。

誰に対しても効果があるわけではないですが、他の方法で痛みのコントロールが困難な人は試してみる価値があります。

マッサージも痛みを和らげるのにはいいかもしれません。
 

 

▽サプリメント
 

グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントは、これまでの研究では、効果については相反した結果が出ていますが、大半が効果なしの結論です。

ただ、グルコサミンはグルコサミン硫酸塩の方がグルコサミン塩酸塩よりも効果があると考える人もいます。

数か月間服用して効果がなければ止めるという方法も提唱されています。

貝類にアレルギーのある人はグルコサミンを避けてください。

また、コンドロイチンはワ-ファリンの効果を増幅する可能性があるので、ワーファリンを服用している人は要注意です。
 

 

▽生活習慣の改善
 

適度の運動をすることは関節の動きや可動域を維持するので積極的に行います。

痛みのある場合はプールでの歩行や水泳がいいでしょう。

運動後、新たな痛みが現れたら中止します。

バランスの良い健康的な食事をする、十分休養を取る、そして体重がオーバーしている人は体重を減らすことが重要です。

太極拳やヨガもいいかもしれません。
 

 

 

最後に
 

医学は日々進歩していますので、将来は軟骨細胞の自家移植、細胞工学法による軟骨の再生術などの治療法が普及するかもしれません。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。
 
(2013年6月1日号掲載)

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