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dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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高山病
(Altitude Illness) 

登山やスキーで高所に行く人が増えて来ましたが、2,500m (8,000ft.) 以上の高所に行く予定のある人は高山病を発病する可能性があります。

高所でのレジャーを楽しむためにも、高山病に対する予防、対処について理解しておきましょう。
 

 

高山病とは

高所に行くと、空気が薄くなってきて、体が呼吸で吸収する酸素の量が下がってきます。

海抜ゼロ地点に比べると1,600mでは20%、2,400mでは25%、8,849mでは66%も大気中の酸素濃度が減少します。

体内に入る酸素が少なくなると、毛細血管から周辺の組織に水分が漏出して、浮腫が起こります。

その浮腫の起こる場所や程度によって高山病の様々な症状が出てきます。
 

 

 

高山病のリスクとその対処
 

高山病は、通常2,500m (8,000ft.) 以上の高所で発病しますが、子供は大人以上に高山病になりやすく、50歳以上の人は逆になりにくいとされています。

ただ、個人差がありますので、自分が高山病を発病するリスクと、その対処について以下を参考にしてください。
 

●    高山病のリスクの低い人:①高山病を発病したことがなく、2,800m (9,100ft.) 以上の高所には行かない人。

対処:2,500〜3,000m (8,200〜9,800ft.) で2日以上過ごすと体が次第に順応してきます。リスクの低い人では、アセタゾラミドの予防服用 (*後述) は必ずしも必要ではありません。
 

 

●    高山病のリスクが中程度の人:①以前、高山病を発病したことがあり、1日で2,500〜2,800m (8,200〜9,100ft.) の高所まで行く人。②高山病を発病したことはないが、1日で2,800m (9,100ft.) 以上の高所まで行く人。③3,000m (9,800ft.) 以上の高所で、1日当り500m (1,600ft.) 以上高度を上げる人。

対処:1日当り500m (1,600ft.) 以上高度を上げた高所で泊まらない、1日当り1,000m (3,200ft.) 高度を上げる場合は、もう1日余分にその高所で泊まります。アセタゾラマイドの予防服用を考慮します。
 

 

●    高山病のリスクが高い人:①以前、高山病を発病したことがあり、1日で2,800m (9,100ft.) 以上の高所に行く人。②以前、高所肺水腫を発病したことがあり、1日で3,500m (11,400ft.) 以上の高所に行く人。③3,000m (9,800ft.) 以上の高所で、1日当り500m (1,600ft.) 以上高度を上げる人。④非常に早い速度で高度を上げる人 (例えば、7日以内にキリマンジャロを登る人)。

対処:アセタゾラマイドの予防服用が強く勧められます。
 

 

 

高山病の症状
 

高所に行くと尿の回数が増えたり、動作時に軽い息切れが起こりますが、それは生理的現象です。

また、高所浮腫といって、手足や顔が浮腫 (むく) むことがありますが、症状は2〜3日で軽減します。

通常、高山病は次の3つに分類されます。
 

●    急性高山病(acute mountain sickness= AMS)

これは高山病の最も一般的なもので、2,500m (8,000ft.) 以上の高地で泊まる人の4人に1人が発病します。症状は二日酔いに似ていて、頭痛が最も一般的で特に重要な症状です。それ以外に疲労感、食欲不振、吐き気や嘔吐、軽度のふらつき感などがあります。頭痛は高所に着いて2〜12時間後くらいに起こります。特に、初日泊まった翌日に多く。通常1〜3日以内に回復します。
 

 

●    高所脳浮腫(high-altitude cerebral edema = HACE)

これは急性高山病が悪化すると発病しますが、稀 (まれ) です。高所肺浮腫に伴うことが一般的です。急性高山病の症状以外に、傾眠状態、昏睡、精神錯乱、歩行時のふらつきなどの神経症状が出てきます。
 

 

●    高所肺浮腫(high-altitude pulmonary edema = HAPE)

これは単独で発病することもあるし、急性高山病と高所脳浮腫に伴って発病することもあります。4,270m (14,000ft.) の高所では100人に1人が発病します。最初の症状は、動作時の息切れ、そして安静時の息切れ、咳、全身衰弱などです。酸素吸入や低所に移動することが必要ですが、高所脳浮腫より早く悪化することがあるので早急な対処が必要です。
 

 

 

高山病の治療
 

急性高山病を発病した人は300m (980 ft.) 以上低所に移動すると症状は急速に改善していきます。

酸素吸入をすると症状が改善しますが、酸素が利用できる場所が限られています。

頭痛は通常の鎮痛薬、吐き気に関してはオンダンセトロンなどの吐き気止めで治療できます。

アセタゾラミドは基本的には予防薬ですが、治療薬としても役に立ちます。

デキサメタゾンは中程度以上の急性高山病にはアセタゾラマイドより効果があります。

同じ高所で安静にしても症状が悪化する場合は、低所へ移動する必要があります。

高所脳浮腫は、医療機関が近くにあれば、そこで酸素治療とデキサメタゾンの治療を受けます。

近くに医療機関がないような場所では、まず低所に移動することが必要になります。

すぐに低所に移動できない時は、酸素吸入、あるいは携帯用高圧バッグを使用します。

高所肺浮腫の場合は、まず低所に移動することが大事です。

すぐに低所に移動できない時は、酸素吸入や高圧バッグの使用を行います。

軽度の症状で、医療機関が利用できる時は酸素吸入で改善することがありますが、医療機関がない時は、低所への移動、酸素吸入、高圧バッグの使用と共に、肺動脈の血圧を一時的に下げるニフェジピンを使う方法もあります。
 

 

 

高山病で使われる薬
 

●    アセタゾラミド (acetazolamide)

この薬は利尿薬ですが、急性高山病の予防と治療に使えます。作用としては、血液を酸性に傾けさせ、それによって呼吸を活発にします。利尿作用や手のしびれなどの副作用が出ることがあります。125mgを12時間毎に服用します。高所に行く前日から服用を始め、その後2日間服用します。さらに高所に上がる人は引き続き服用します。サルファ剤に関係があるので、サルファ剤に重度のアレルギー (アナフィラキシー) のあった人は服用を避けた方がいいでしょう。
 

 

●    デキサメタゾン(dexamethasone)

デキサメタゾンはステロイド薬です。急性高山病と高所脳浮腫の予防と治療に使われます。アセタゾラミドと違って、途中で服用を止めるとリバウンドが起こることがあります。高所に継続的に上がる人は、アセタゾラミドを予防薬と使用し、デキサメタゾンを治療薬として取っておきます。
 

 

●    ニフェジピン

ニフェジピンは高血圧の薬ですが、高所肺水腫の予防と治療に使われます。
 

 

 

高山病の予防
 

2,500m (8,000ft.) 程度の高さで数日過ごしてから、それ以上の高さに行くのが理想的です。

そして徐々に高度を上げて行きます。1日当り500m (1,600ft.) 以上の高さで泊まるのは避けます。

1日当り1,000m (3,300ft.) 以上高度を上げて泊まる場合は、その高度でもう1日過ごすようにします。

リスクに応じて、アセタゾラマイドを予防的に服用します。
 

 

 

高山病と慢性疾患
 

高血圧、冠動脈疾患、軽度の肺気腫、糖尿病などで高山病のリスクが高くなるわけではありません。

ただ、重症の肺気腫 (COPD) や重度の心疾患のある人はリスクが高くなるので医師に相談してください。

妊娠への影響に関してはあまり情報がありませんが、2,500m (8,200ft.) 以上の高山に行くのは避けた方がいいでしょう。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2012年6月1日号掲載)

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