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dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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赤ちゃんの股関節脱臼
Developmental Dysplasia of the Hip = DDH

赤ちゃんの股関節脱臼は、これまで先天性股関節脱臼 (Congenital Dislocation of the Hip) という病名が使われてきましたが、アメリカでは発達性股関節形成異常、または発達性股関節脱臼 (Developmental Dysplasia or Dislocation of the Hip=DDH) という用語が現在使われています。

日本でも発達性股関節脱臼、発達性股関節形成異常、発育性股関節脱臼などの病名が先天性股関節脱臼に代わって使われるようになってきていますが、まだ病名の統一はされていないようです。

中には、原因が不明なので特発性股関節脱臼という病名を提唱している人もいます。

 

 

赤ちゃんの股関節脱臼とは

大腿骨の骨頭が骨盤の臼状のソケットである寛骨臼 (かんこつきゅう) から部分的、または完全に外へ出てしまう状態ですが、この寛骨臼が浅いか、変形により脱臼が起こります。

脱臼は片側ないし両側で起こりますが、片側の場合は左の股関節の方が多くなります。

250人から1,000人の赤ちゃんに1人の割合で股関節脱臼が発見されます。

 

 

赤ちゃんの股関節脱臼の原因

赤ちゃんの股関節脱臼は、以前は先天的に起こると信じられていました。

現在も先天的に起こる股関節脱臼は存在しますが、出生後に後天的に起こる股関節脱臼も存在することが分かっています。

原因は不明ですが、リスクとしては、羊水の不足、第一子、女児、骨盤位 (胎児の頭ではなくて骨盤が母親の子宮の下位に位置している)、家族歴、赤ちゃんを着衣でぐるぐる巻きに包むような習慣 (両足が真っ直ぐな状態になる)、あるいは股関節があまり動かなくするような習慣などがあります。        

 

 

赤ちゃんの股関節脱臼の症状

新生児や乳児の股関節脱臼は、見ているだけではあまり分かりません。

脱臼のある側の大腿の内側 (太ももの内側) の皮膚のシワが反対側と非対称、左右の足の長さが違う、脱臼のある側の足をあまり動かさないという症状がありますが、両側が脱臼していると左右同じなので症状としては分からなくなります。

赤ちゃんが歩き始めると症状は顕著になります。

つま先歩きをしたり、アヒルのようなよちよち歩きをすると股関節の脱臼を疑います。

 

 

赤ちゃんの股関節脱臼の診断

赤ちゃんの股関節脱臼の診断は、まず医師による診察で行われます。

新生児健診、乳児健診で、股関節の診察は何度も行われます。

明らかな股関節の脱臼 (完全脱臼) があれば、診察だけ診断できることがあります。

ただし、軽度の股関節脱臼、後天性の脱臼は一度の診察で発見できないこともあるので、何回かの診察が必要になることがあります。

股関節脱臼を調べる診察方法としては、両足を膝 (ひざ) で折って抑えて、圧力を加えながら足を外側に開けてクリック音の有無を調べるのが一般的ですが、他の手技による診察法もあります。

6か月以下の赤ちゃんは、足を膝のところで90度に曲げて、左右外側に床まで開けることができますが、足が床まで着かないと股関節の脱臼を疑います (開排制限)。

脱臼側と反対側の太ももの内側の溝が非対称、脱臼側の足の短縮、膝を90度にして立てると脱臼側の膝の高さが低いなどの所見がありますが、必ずしも存在するわけではなく、両側が脱臼している場合は左右差はありません。

 

 

画像診断

医師の診察で股関節脱臼が疑われると、超音波検査またはX線検査が行われます。

アメリカでは超音波検査は生後3か月までの乳児、X線は3か月以上の乳児が対象になります。

身近な家族での発達性股関節脱臼の家族歴のある女児は、生まれて2〜3週間して超音波検査でスクリーニングすべきだという専門家もいます。

 

 

赤ちゃんの股関節脱臼の治療

生後6か月以内の乳児の場合、パブリックが考案したリーメンビューゲル (Pavlik harness) などの矯正装具を数か月装着します。

リーメンビューゲルは上半身から足を吊るようにした装具ですが、両足をカエルのように外に向けて開くように固定します。

これによって、正常な股関節の関節の形成を助けます。

効果のある治療法ですが、6か月を過ぎた乳児では効果は下がります。

この装具で改善のない乳児や生後6か月以降の乳幼児は外科的治療の対象になることが多くなります。

手術後はギブスをしばらく装着します。

 

 

矯正装具による合併症

矯正装具装着による合併症としては、皮膚の荒れや皮疹、歩行の遅れ、あるいは頻度は非常に低いですが、大腿骨頭の壊死 (えし) があります。

また、正しく治療しても、左右の足の長さの違いが起こることもあります。

治療をしなければ、将来的には関節炎や股関節の機能異常など、様々な障害の原因になります。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2012年11月1日号掲載)

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