2020年 10月 26日

American Health アメリカ健康ノート

痛風(Gout) (2013.4.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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痛風(Gout)

       
       

痛風は紀元前から存在し記録されてきた病気で、過去に「王様の病気」とか「金持ち病」と言われていました。

それは、庶民にはあまり口にすることのできなかった肉などの食品に痛風の原因になるプリン体が多く含まれていたからなのでしょうが、現在では、もちろんお金持ちでなくても痛風は起こります。
 

 

 

痛風とは


痛風は、肉・豆類・ビールなどに多く含まれるプリン体の代謝異常による関節炎で、関節、腱、あるいは周辺組織に尿酸結晶が沈着することによって炎症が起こり、それが関節痛、関節の腫脹などの原因になります。

一般的には、血中尿酸値が高くなるほど痛風が起こりやすくなりますが、高尿酸血症があっても必ずしも痛風を起こすわけではなく、逆に血中尿酸値が正常でも痛風が起こることがあります。
 

 

 

痛風の原因
 

痛風はプリン体の多い食事をすると起こりやすくなりますが、食事が原因で起こるわけではありません。

プリン体の多い食事は痛風の引き金にはなりますが、痛風の原因はあくまでもプリン体の代謝異常なのです。

プリン体が代謝して尿酸になるわけですが、尿酸の産生が異常に増加するか、尿酸の排泄が異常に減少することによって、血中の尿酸値は上昇し、痛風が起こるわけです。

尿酸産生異常による原因は1〜2割で、痛風の8〜9割の原因が尿酸排泄障害によるものです。

また、食事由来の尿酸は3分の1で、3分の2は体内で生成されます。そして、過剰な尿酸が関節内外の組織に沈着して痛風を起こすのです。
 

 

 

痛風のリスク因子(誘因)
 

男性 (特に40〜50歳の男性) は女性の4〜5倍の確率で痛風になります。

女性は閉経すると痛風になりやすくなりますが、それでも男性の4分の1くらいの頻度です。

家族歴、アルコール飲酒 (特にビール)、サイアザイド系の利尿薬やアスピリンの服用、肥満、腎臓病、糖尿病、高血圧、高脂血症、貧血、白血病などがあると血中尿酸値が上昇し、痛風を起こしやすくなります。

他に、関節の外傷、手術、感染、痛風の治療による急な尿酸値の減少などもリスクになります。

高血圧で使われるサイアザイド系の薬で尿酸値が上がることがあるので、高血圧と痛風のある人は主治医に相談してください。
 

 

 

痛風の症状

痛風発作の典型は、足の親指の付け根の急な激痛ですが、他にも足首、膝、あるいは関節近くの組織 (足の甲) や腱にも痛みが起こることがあります。

痛みは激痛のことが多く、関節の腫れ、発赤、発熱 (関節部と全身) などを伴います。約半数の人は1回きりの発作で終わりますが、残り半数の人は発作を繰り返します。

痛風発作は、運動をした後やビールの飲酒後など誘因のある後に起こることもあれば、まったく誘因なく起こることもあります。
 

 

 

痛風の診断
 

確実な診断は、関節液や痛風結節で尿酸結晶を証明することですが、下肢に関節炎があり、血液検査で高尿酸血症があれば痛風の診断はほぼ確実です。

ただ、痛風時に血中の尿酸値が上昇していないことが半数近くの例である、という報告もあるくらいなので、その場合、診断は容易ではありません。

痛風以外の関節炎の可能性もあるので、関節炎の一般的な血液検査も必要です。

慢性の痛風になると関節のX線で異常所見が認められますが、急性の場合はX線は正常です。

診断が困難な時は、まれに関節膜の生検が行われます。

痛風の診断が確実になれば、24時間の尿中尿酸値を測定し、800mg 以下であれば尿酸排泄障害、それ以上であれば尿酸産生異常であることを区別します。

それによって治療が異なってきます。
 

血中尿酸値の値が男性の場合7.0mg/dl以上、 女性の場合6.0mg/dl以上で、高尿酸血症と診断されます。
 

 

 

痛風の病期
 

痛風は4つの病期に区別されます。そして、その病期によって治療が異なります。
 

 

・第1病期(無症侯期)
 

高尿酸血症はあるが、痛風症状はない時期。症状はなくても、尿酸結晶は組織に沈着しますが、高尿酸血症だけでは治療の対象にはなりません。ほどんどの人が痛風発作を起こさないで経過します。
 

 

・第2病期(急性関節炎発作期)
 

尿酸結晶の沈着によって炎症が始まり、関節の痛み、発赤、腫脹 (しゅちょう) などの痛風発作が起こります。一度痛風発作があると、2回目の発作は6か月から2年以内に再発します。初回の発作に比べ、その後の発作はより痛く、長く続く傾向があります。ただ、半数近くの人は1回きりの発作で終わります。
 

 

・第3病期(間欠期)
 

急性発作と急性発作の間の期間。急性期が終わると症状は落ち着きますが、高尿酸血症が改善しない人は尿酸結晶の沈着が続き、関節の損傷が進行します。
 

 

・第4病期(慢性痛風期)
 

恒常的に炎症や痛みが起こり、関節の変形や痛風結節を形成します。
 

 

 

痛風の治療
 

治療は急性発作期と慢性期とでは違ってきます。

急性発作時の治療は、主に抗炎症鎮痛薬 (インドメタシンなど) やコルヒチンと呼ばれる薬で症状を緩和します。

数日から10日前後で症状は改善します。

他に、コデイン、ハイドロコデイン、オキシコドンなどの強力な痛み止めや、ステロイドの内服や関節に直接注射する方法もあります。
 

痛風発作が何度も起こる間欠期の人や慢性期の人は、高尿酸血症を改善する薬物治療の対象になります。

これには、尿酸の生成を下げる薬 (アロプリノール=allopurinol、フェブキソスタット=febuxosta) か、尿酸の尿への排泄を促進する薬 (プロベネシッド=probenecid など)があります。どのちらの薬にするかは、24時間尿中尿酸値の検査結果や、尿酸による腎結石の有無などを参考にして決めます。

血中尿酸値の目標は5〜6 mg/dl 程度です。
 

痛風発作後にすぐに尿酸値を下げる薬物治療を始めると、症状が悪化することがあるので、痛風発作が完全に治まって1〜2週間ほど経過してから、コルヒチンと共に服用します。

コルヒチンは最初の数か月間続けます。
 

関節の損傷、痛風結節の存在、尿酸腎症の存在があれば、1回の痛風発作でも尿酸値を下げる薬物治療を始めます。

また、Pegloticase (Krystexxa) がアメリカでは2010年から許可されています。慢性痛風期で、他の薬が使えない人や効果のない人はこれを2週間毎に点滴してもらいます。
 

 

 

食事療法と生活スタイル改善
 

高尿酸血症のみの人や、痛風発作が1〜2度だけの人は食事療法を試みます。

まず、プリン体の多く含まれている食品を避けます。牛肉、豚肉、羊肉、アンチョビ、イワシ、ニシン、いくらなどの魚の卵、レバー、乾燥豆類、きのこ類、ほうれん草、アスパラガス、カリフラワー、コンソメ、ベーキングイーストなど。野菜に含まれるプリン体はあまり尿酸値を上げないと言う専門家もいます。

他に、アイスクリーム、揚げ物、サラダドレッシングなどのような脂肪分の多い食品を避けます。
 

炭水化物を十分に取り、発作中は十分に水分を取ります (2リットル以上)。アルコールは控えてください。

サイアザイド系の利尿剤やアスピリンを服用している人は主治医に相談してください。

ダイエットを行っている人は徐々に減量をしてください。

急な減量は発作のリスクになります。
 

 

 

痛風の予防
 

最も確実な予防法は、尿酸値を下げる薬を服用することですが、生活スタイルの改善によっても、ある程度予防は可能です。
 

食事は上述したプリン体の多く含まれた食品の摂取を控えます。

逆に、プリン体の少ない食品としては、パン、パスタ、穀物、米、シリアル、コーヒー、低脂肪乳製品、トマト、果物、卵、オリーブ、チョコレートなどがあります。
 

コーヒーは尿酸値を下げると言われていますが、どのようなメカニズムで下げるのかは理解されていません。

ビタミンCも尿酸値を下げる可能性がありますが、取りすぎは逆に尿酸値を上げる可能性があるので、柑橘 (かんきつ) 類で摂取する方が安全でしょう。

乳製品、チェリーや濃い色のベリー類、例えばブルーベリー、ブラックベリーなども尿酸値を下げる効果があると言われています。
 

フルクトース・コーンシロップの多く含まれる甘い飲み物は避けるようにしましょう。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。
 
(2013年4月1日号掲載)

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