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dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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前立腺肥大症
(Benign Prostatic Hyperplasia = BPH)

前立腺肥大症は男性にしかない病気ですが、40歳を過ぎると前立腺の肥大が始まり、80歳ではおよそ8〜9割近くの人が前立腺肥大の症状を訴えるようになります。
 

 

 

前立腺

前立腺は男性の膀胱の真下にあって、膀胱から出る尿道を取り巻くようにして存在しています。

クルミくらいの大きさで男性の生殖器官の一部を成しています。

前立腺の役割は完全に理解されているわけではないですが、性交時に前立腺液を分泌し、精液として精子を運び、精子に栄養を与え、活動を盛んにします。

また、酸性に傾いた女性の膣内をより中性化させ、受精しやすくします。
 

 

 

前立腺肥大症

前立腺肥大症は良性の病気なので、良性前立腺肥大症ともいいます。

英語では Benign Prostatic Hyperplasia (BPH) あるいは Benign Prostatic Hypertrophy と呼ばれています。

前立腺は男性の年齢と共に大きくなっていきますが、思春期の早期と25歳くらいに大きくなるピークがあります。

40歳以下ではあまり症状を起こしませんが、60歳台になると半数以上の男性が、70歳、80歳台では8〜9割近くの人が前立腺肥大の症状を現すようになります。

前立腺が大きくなると、尿道が圧迫されるだけでなく、膀胱の壁がぶ厚くなり過敏になります。

膀胱内に少量の尿が溜まっただけで膀胱が収縮するようになり、頻尿になります。

さらに進行すると、膀胱は弱くなり、収縮して膀胱を空にすることができなくなる結果、残尿感が生じるようになります。
 

 

 

前立腺肥大症の原因
 

前立腺肥大の原因ははっきり分かっていませんが、何世紀も前から、前立腺肥大症が高齢者の病気であるということと、思春期以前に去勢された男性は前立腺肥大症にならない、ということは理解されていました。

一生を通じて、男性は男性ホルモンであるテストステロンと女性ホルモンであるエストロゲンを体内でつくっています。

男性が高齢になると、血中のテストステロンが減少し、エストロゲンが増加します。

そして、このエストロゲンが上昇すると、前立腺が肥大するのではないかと考えられています。

他に、テストステロンから派生するジヒドロテストステロン (DHT) が前立腺の肥大に関わっていると考える人もいます。

これら以外にも説があります。
 

 

 

前立腺肥大の症状

前立腺肥大症の症状は、尿道の圧迫・閉塞と、膀胱機能の低下によるものです。

第1期 (膀胱刺激期)、第2期 (残尿発生期)、第3期 (慢性尿閉塞期) と区分されることもあります。

尿が出にくい、尿が継続して出ない、尿に勢いがない、尿意頻拍、尿漏れ、頻尿、夜間の頻尿、残尿感、さらに尿閉が起こることもあります。

前立腺の大きさは必ずしも尿道閉塞の程度を示すわけではなく、また症状の程度と相関しているわけではありません。

風邪薬や鼻アレルギーの薬などで、症状の悪化や突然の排尿困難をきたすことがあります。

鼻詰まりの薬は前立腺肥大症のある男性には要注意です。

重症の前立腺肥大症は、尿路感染症、尿路の損傷、膀胱結石、腎機能障害などの原因になります。
 

 

 

前立腺肥大症の診断
 

問診と診察、特に直腸診を行います。

IPSS という国際前立腺スコアで自覚症状の評価をすることがあります。

この問診票で合計点数が0〜7点の場合は軽症、8〜19点が中等症、20〜30点が重症と判断されます。

検査としては、血液検査で前立腺腫瘍マーカー (PSA) を調べて、前立腺癌 (がん) がないかを調べます。

他に、直腸超音波検査、前立腺の生検 (バイオプシー、前立腺癌が疑われる場合)、尿流量測定、残尿測定、膀胱鏡検査 (内視鏡) などの検査があります。
 

 

 

前立腺肥大症の治療
 

前立腺肥大症の治療は、薬物治療とそれ以外の治療に分けられますが、薬物療法は、症状だけを改善する薬と、前立腺肥大そのものに効果のある薬があります。
 

症状を改善する薬としては、テラゾシン terazosin (商品名:Hytrin)、ドキサゾシン doxazosin (Cardura)、タムスロシン tamsulosin (Flomax)、アルフゾシン alfuzosin (Uroxatral) などがあり、前立腺と膀胱の平滑筋を弛緩させることによって前立腺肥大症の症状を改善します。

前者2つの薬は高血圧の薬としても使われます。

前立腺肥大そのものに効果のある薬としては、フィナステリド finasteride (Proscar)、デュタステリド dutasteride (Avodart) などがあり、DHTの生成を阻害し、前立腺の肥大を防ぐか、前立腺の大きさを小さくします。

ドキサゾシンとフィナステリドを組み合わせると、さらに効果があります。

 

 

=薬物療法以外の治療法=

◆ 経尿道的マイクロ波温熱療法(TUMT)

カテーテルでマイクロ波を送り、摂氏44〜50度以上の温度で前立腺を温め、余分の組織を縮小させます。前立腺肥大そのもののを改善する方法ではないですが、頻尿、尿頻拍などの症状を改善します。

 

◆ 経尿道的針焼灼法(TUNA)

低レベルの高周波を2本の針に通し、前立腺の一部を焼きます。尿の流れを改善し、症状の緩和になります。

 

◆ 水による温熱療法

お湯を使って、前立腺の余分な組織を縮小する方法です。バルーン内にお湯を流し、前立腺を温めます。
 

 

◆ 尿道ステント留置

狭くなった尿道にステントというコイルのようなものを入れ、尿道の閉塞を改善する方法です。

 

◆ 膀胱カテーテル

急に尿が出なくなる尿閉になった場合、膀胱にカテーテルを挿入して排尿させる緊急処置が必要になりますが、尿閉が重症の場合は、外科的手術までの間、カテーテルを留置させる方法もあります。

 

 

=経尿道的手術=

◆ 経尿道的前立腺切除術(TURP)

前立腺手術の約9割を占める方法ですが、電気ループ (電気メス) の付いた切除用内視鏡を尿道に挿入して行われます。まれに精液が体外に射精されないで、膀胱内に逆流する逆行性射精のような副作用が起こることがあります。

 

◆ 経尿道的前立腺切開術(TUIP)

前立腺の組織を切除する代わりに、膀胱の出口辺りに小さな傷口をいくつか作り、尿道を広げる方法です。

 

◆ レーザー光線手術

レーザー光線で前立腺を一部破壊、縮小させます。TURPと比べ、出血量が少ない、手術からの快復が早いなどの利点がありますが、大きな前立腺にはあまり効果がないかもしれません。

 

 

=開腹手術=

経尿道的手術ができない時は、開腹手術が必要になる時があります。

前立腺が非常に大きい時、膀胱の修復も必要な時、経尿道的手術ではいろいろな困難が予想される時などです。
 

 

 

日常生活で気をつけること
 

風邪薬など市販の薬でも前立腺肥大症の症状を悪化させることがありますので、市販の薬を使用する時は、医師に相談してください。

排尿を長時間がまんすると、膀胱が拡張して、排尿困難あるいは尿閉を起こすことがあります。

過度の飲酒を控え、便秘にならないようにし、適度の運動をしましょう。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2012年1月1日号掲載)