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dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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運動の効果
(Effects of Exercise) 

運動の健康に対する効果については多くの研究で証明されてきています。

運動しない人は、運動する人に比べて寿命が短く、いろいろな生活習慣病になる確率が高く、健康を維持するのに困難を生じやすくなります。

健康に生きることにとって、いかに運動が大切かということを、アメリカ政府の機関が最近発表した推奨に基づいて解説します。
 

 

 

運動の効果
 

運動をすると、以下の病気のリスクを下げることができます。

早期死亡、冠動脈心疾患 (狭心症、心筋梗塞)、脳卒中、高血圧、高脂血症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、大腸がん、乳がん、体重過多、体重減少、うつ病。

それに心肺機能、筋肉系の機能を改善します。

高齢者の認知機能障害の予防にもなります。

他に、大腿骨頚部の骨折、肺がん、子宮体がん、骨粗しょう症、不眠などの予防や改善に役に立つと考えられています。

1週間に7時間運動する人は、ほとんど運動しない人に比べて、早期死亡や比較的若くして死ぬ確率を4割も下げることができます。

以下、運動による効果を個別に解説しましょう。
 

 

◆心肺血管系に対する効果

心臓、肺、血管に対する運動の効果は最も研究されていて、例えば、中程度以上の運動をする人は、心筋梗塞などの心血管系のリスクを著明に下げることが分かっています。

1週間に2時間半以上運動することが必要ですが、3時間以上運動すると、さらにリスクを下げることができます。
 

 

◆代謝系に対する効果

運動をすると、2型糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドロームなど代謝系の病気の予防になります。

また予防だけでなく、すでにそれらの代謝・内分泌系の病気に対してもコントロールを良くします。
 

 

◆筋骨格系に対する効果

筋肉、骨、関節は身体を支え、身体を動かします。

そして、それらの機能が落ちると、日常生活上での様々な身体活動ができなくなってしまいます。

筋骨格系が衰えると運動もできなくなるので、さらにそれらの運動機能は低下します。

運動をすると、骨粗しょう症の予防にもなります。

大腿骨頚の骨折も運動している高齢者には少なくなります。

また、運動機能の向上により、加齢によるケガや事故の予防にもなります。
 

 

◆がんに対する効果

運動をする人は、しない人に比べて大腸がんになる確率が下がります。

女性では、運動している人は乳がんになる確率が低くなります。

そうしたがんの予防効果は、1週間に3時間半から7時間、中程度の運動をする必要があります。

子宮体がんや肺がんに対する予防効果の可能性も報告されています。
 

 

◆精神面の健康

運動をすると、うつ病や認知機能低下のリスクを減らします。

また、熟睡できる確率が高くなります。
 

 

 

運動の種類

 

  • 有酸素運動 ―― これは、身体の大きな筋肉を一定時間リズミカルに動かすことで、早足歩行、自転車走行、野球、ダンス、水泳などの運動を指します。有酸素運動は心臓血管系を強く健康にします。有酸素運動は1回につき最低10分以上続ける必要があります。

  • 筋力増強運動 ―― 身体のいろいろな筋力を増強する運動で、ダンベル、エキスパンダー、腕立て伏せ、腹筋運動、懸垂などで、四肢、腰、胸、腹部、肩などの主な筋肉群を鍛えます。この運動は筋肉だけでなく骨も強くします。筋力増強運動は週に最低2回行いますが、毎週の運動時間 (有酸素運動) には含めません。

     
  • 柔軟体操 ―― 柔軟体操は、有酸素運動や筋力増強運動の前のウォームアップとして行ってもかまいません。関節や筋肉の柔軟性は、運動を行う上で事故の予防などでも重要です。

 

 

 

運動の行い方

まず1週間で2時間半、中程度の運動を行うのが目標です。

激しい運動であればその半分の時間でかまいません。

ここでいう「運動」とは有酸素運動のことを指しますので、筋力増強運動はこの時間には含めません。

運動量は1週間単位で考えるので、毎日行う必要はありませんが、週に3日は運動を行ってください。

平日が忙しければ、月曜日と水曜日は各20分程度、週末に2時間というやり方でもかまいません。

1回当たりの運動は、最低10分間は行う必要があります。

それが達成できれば、中程度の運動を1週間で5時間行うのを目標にします。

激しい運動であれば、その半分の時間でかまいません。

運動は、スポーツだけではなく、階段の上り下り、歩行、庭仕事でもかまいません。

身体を動かす仕事をしている人 (庭師、建築労働者など) は、仕事で身体を動かしている時間も運動時間に含めることができます。

今まで全然運動を行ったことがない人は、まず歩くことから始めてみましょう。

最初は1回5分の歩行でもかまいません。

それを1週間で5〜6回行います。それができれば歩行時間を延ばします。

また、徐々に歩く速度も上げていきます。

高齢の人で1週間2時間半の運動ができない人は1時間でもかまいません。

できる範囲で行ってください。

運動はいきなり始めないで、ウォームアップをして、徐々に運動できる状態にします。

そして運動はクールダウンをして終えて、元の身体状態に戻します。
 

 

 

運動の程度
 

◆中程度の運動 (運動を行いながらしゃべることはできるが、歌は歌えない程度の運動)。

例:早足歩行 (1時間で3マイル=4.8キロ程度の速度)、水中エアロビック、自転車走行 (1時間で10マイル=16キロ以下の速度)、ダブルのテニス、社交ダンス、一般的な庭仕事など。
 

 

◆激しい運動 (息をつかない限り、2、3語以上の単語が言えない程度の運動)

例:競歩、ランニング、水泳、シングルのテニス、エアロビックダンス、時速10マイル以上での自転車走行、なわ跳び、激しい庭仕事 (穴を掘ったりする作業)、登山や重いバックパックを背負ったハイキングなど。
 

 

 

運動のレベル

有酸素運動のレベル (程度) を知るのに、絶対的レベルと相対的レベルがあります。

絶対的レベルというのは1分当たりのエネルギー消費量ですが、軽い運動は休息時の1.1倍から2.9倍のエネルギーを消費します。

中程度の運動は3.0から5.9倍程度のエネルギーを消費し、激しい運動というのは6倍以上のエネルギーを消費します。

相対的レベルというのは、ある運動をするのに必要な努力のレベルのことで、0から10までのスケールを使い、座っている時を0、最も激しい運動時を10と定義します。

すると、中程度の運動は5か6、激しい運動は7か8になります。
 

 

 

運動によるリスク

健康に良い運動も、行う人の年齢、心臓病や他の内科疾患の有無、筋骨格系の疾患の有無、運動量などによって様々なリスクをもたらすことがあります。

最も多いリスクは筋骨格系の事故ですが、これにはねんざ、筋肉痛、関節痛、腰痛、骨折などがあります。

狭心症、心筋梗塞、喘息 (ぜんそく) 発作、脱水、日射病などの疾患も起こる可能性があります。

ただ、運動による健康に対するリスクは、運動をしない時のリスクに比べてはるかに少ないと考えられています。
 

 

 

運動を始めるにあたっての注意
 

心筋梗塞、狭心症などの心疾患の既往のある人、それ以外にも糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病、慢性肺疾患などのある人は、運動を行う前に医師に相談してください。

虚血性心疾患の可能性の高い人はトレッドミルというテストが必要になります。

運動を行うにあたっての注意としては、運動は体調の良い時だけ行う、食後は少なくとも2時間待つ、天候、気温に応じた服装・運動量を考慮、暑い時は早朝あるいは午後遅めに行う、十分な水分補給、適切な服装と靴を着用、息切れ、胸部苦悶感、関節痛のような症状が現れた場合は運動を中止し、医師に相談してください。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2012年4月1日号掲載)

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