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dr kim new 金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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ウイルス性肝炎
(Viral Hepatitis)  

ウイルス性肝炎とは、ウイルスの感染で生じる肝臓の炎症のことですが、主なウイルス性肝炎には、A型肝炎、B型肝炎、それにC型肝炎があります。

それ以外にもD型肝炎、E型肝炎がありますが、アメリカでは一般的ではありません。

頻度は高くないですが、サイトメガロウイルスや EBウイルスなどによる肝炎もあります。

ウイルス性肝炎は、肝硬変や肝臓がんの主な原因になり、また肝臓の臓器移植で一番多い原因になっています。

アメリカでは慢性肝炎の感染者が440万人いますが、大半の人は自分が慢性肝炎にかかっていることを知りません。
 

 

 

ウイルス性肝炎の症状

ウイルス性肝炎特有の症状というものは存在しませんが、症状としては、発熱、疲労感、食欲減退、嘔気、嘔吐、腹痛、関節痛、黄疸、色の濃い尿、粘土色便などがあります。

白目の部分や皮膚が黄色くなる黄疸があれば肝炎が強く疑われますが、それ以外の症状だけで肝炎を診断するのは困難です。

診断のためには血液検査が必要になります。

血液検査で肝機能異常があるとウイルス性肝炎を含めた鑑別が行われます。

A型肝炎、B型肝炎などの確定診断のためには、肝炎の様々な抗体、ウイルス価などを調べます。

劇症型肝炎では症状が急激に進行し、肝不全による死の可能性があるため、緊急の入院加療が必要になります。
 

 

 

A型肝炎

A型肝炎はA型肝炎ウイルス (HAV) によって感染する肝炎で、約4週間近い潜伏期間の後に発症します。

HAVは肝臓で増殖し、便の中に含まれて体外に排泄されますが、症状が出る2週間前から症状出現後1週間の間は高濃度で便に含まれます。

A型肝炎は慢性肝炎に移行したり、慢性の肝臓病の原因にはなりません。

10〜15%の人は最初の症状から快復しても6か月以内に再発することがあります。

A型肝炎で急性肝不全になり、死亡する人は極めて稀 (まれ) です。

6歳以下の子供の場合、ほとんどの子供には症状が出ません (感染児の7割)。

従って、感染してもA型肝炎だと診断されないことが多いのですが、成人の場合は8割以上の人が肝炎症状を起こします。

一度感染すると血液内に抗体ができ、再感染を防ぎます。

A型肝炎ウイルスは便に含まれて体外に出るので、感染経路は便から口というルートということになります。

A型肝炎に感染した人に直接接触するか、A型肝炎ウイルスに汚染された食品や水を摂取することで感染します。

感染後に血液中のA型肝炎ウイルス量が増えますが、血液を媒介にしたA型肝炎の感染は稀です。

アメリカでは、感染者の半分以上の人に特にリスク因子が認められてはいません。

成人の場合でのリスク因子としては、同性愛、違法ドラッグ使用者、外国への旅行などがあります。

セックスを介したA型肝炎の感染はありますが、便を媒介にして感染するということを考えると、コンドームだけでは防げないことになります。

A型肝炎の予防にはA型肝炎の予防接種が一番効果的で、アメリカでは1歳以上で受けることになっています。

感染リスクの高い人、A型肝炎の合併症のリスクの高い人、それ以外に予防接種を受けたい人も対象になります。

A型肝炎のワクチンはアメリカでは6か月間隔を取って2回接種です (日本では3回接種)。

予防接種以外の予防法としては、手洗いや手の消毒がありますが、A型肝炎の予防接種ほどは効果がありません。

新たな感染の可能性が高い人は、感染して2週間以内に免疫グロブリンの注射を受ける方法があります。
 

 

 

B型肝炎

B型肝炎はB型肝炎ウイルス (HBV) で感染する肝炎で、症状が出るまでの潜伏期間は6週間から6か月の間です。

HBVは血液中に最も多く存在しますが、体液、精子、膣の分泌物、傷口からの浸出液などにも含まれています。

B型肝炎に感染すると、急性期だけで完全に治癒する人と、慢性感染に移行する人がいます。

成人の場合、B型肝炎ウイルスに感染すると約半数の人に症状が出ます。

100人から200人に1人は急性の肝不全で亡くなります。

急性肝炎から慢性肝炎になる確率は年齢が若いほど高くなります。

乳児の約9割、5歳以下の小児の約3割は感染すると慢性化します。

成人の場合は5%以下で、ほとんどの人は急性期だけで治癒します。

慢性B型肝炎の15〜25%の人は肝硬変や肝臓がんになります。

HBVは血液や血液を含む体液の接触により感染するわけですが、感染リスクとしては、コンドームを使用しない感染者とのセックス、感染者である母親からの出産、コンドームを使用しないで多くの人とのセックス、男性間の肛門セックス、性感染症の既往、違法ドラッグの静脈注射など。

他に、感染者とカミソリや歯ブラシを共有すると感染の可能性があります。

B型肝炎の広がりを予防するには、母親から赤ちゃんへの感染 (垂直感染) を防ぐために、妊婦に対するB型肝炎スクリーニング、B型肝炎感染者である妊婦から生まれてくる新生児に対する薬物による予防、乳児に対する予防接種、B型肝炎ワクチン未接種のすべての小児に対する予防接種、リスクのある成人に対する予防接種などです。

小児に対する予防接種の普及の結果、小児間のB型肝炎の感染率は下降してきていますが、リスクの高い成人での予防接種率は低いままです。

最近のB型肝炎の新感染者は、ほとんどが成人のハイリスクグループに属しています。

慢性B型肝炎の治療としては、現在、次の7種類の抗ウイルス薬が使用されています。

adefovir dipivoxil、interferon alfa-2b、 ペグ interferon alfa-2a、lamivudine、 entecavir、telbivudine。

B型肝炎のワクチンは3回接種が必要で、2回目は1回目の1〜2か月後、3回目は1回目から4〜6か月後。2回目から2か月空いていると接種可能です。

3回のワクチンを受けて、抗体ができているかどうかを調べるのは一般の人には必要ありませんが、B型肝炎に感染している母親から生まれた乳児、血液、体液に触れることの多い医療関係者、B型肝炎感染者と性交渉のある人、HIVなど免疫の下がっている人、人工透析を受けている人などは必要です。

抗体検査は3回目の接種が終わって1〜2か月後に行います。

ただし、抗体検査をして抗体値が基準以下でも、B型肝炎に対する予防効果はあると考えられています。
 

 

 

C型肝炎

C型肝炎はC型肝炎ウイルス (HCV) で感染する肝炎で、血液が媒介する最も一般的な慢性感染症であり、320万人近くの人が慢性的に感染しています。

遺伝型は6つあり、亜型は50以上もあります。

感染者の6〜7割の人には症状が出ないか、軽い症状だけで済みます。

C型肝炎に感染して1〜3週間するとC型肝炎ウイルス (HCV) の RNAが血液中に発見できるようになります。

感染して8〜9週間すると、HCVの抗体が血液中に出現し始め、6か月経過するとほとんどの感染者の血液に抗体が発見できるようになります。

C型肝炎に感染すると75〜85%の人は慢性肝炎になり、60〜70%の人は活動性の肝臓病になります。

また、感染者の5〜20%の人は20〜30年後に肝硬変に移行します。

感染者の大半の人は自分が感染していることを知らないので、他の人に感染させる可能性があります。

HCVは過去の輸血や違法ドラッグの静脈注射などで感染し、職業上や出産、あるいはセックスで感染するのは稀です。

C型肝炎の治療としては、体内停滞時間を持続させるようにペグ化したインターフェロンと抗ウイルス薬のリバビリンの併用療法が基本で、この治療法によって、治療後半年間HCVが血液から検出できない状態 (ウイルス学的著効) が遺伝型1型に対し40〜80%あります。

1型はアメリカで最も多い型のHCVです。

2型、3型の人に対しても最大で80%の効果があります。
 

 

 

D型肝炎

D型肝炎はデルタ肝炎とも呼ばれていますが、D型肝炎ウイルス (HDV) によって感染する肝炎です。RNAウイルスの一種で、HAV、HBV、HCVとも違うウイルスなのです。

急性肝炎も慢性肝炎もありますが、アメリカではあまり一般的ではありません。

HDVは不完全なウイルスで、単独ではなく、HBV (B型肝炎ウイルス) の力を借りないと増殖はできません。

従って、B型肝炎感染者の体内でしか増殖できないのです。

D型肝炎はD型肝炎感染者の血液に接触することによって感染しますが、B型肝炎と同時に感染したり、すでにB型肝炎を持っている人に感染することがあります。

D型肝炎に対する予防接種は存在しませんが、B型肝炎の予防接種をすることによって間接的に予防ができます。
 

 

 

E型肝炎

E型肝炎はE型肝炎ウイルス (HEV) によって感染する肝炎で、急性の感染を起こします。

慢性の感染になることはありません。

アメリカでは一般的な肝炎ではありませんが、世界の他の地域では普通に存在していることがあります。

感染は、便を媒介として口に入り、極少量口に入っただけで感染を起こすことがあります。

衛生状態の良くない地域で汚染された水によって感染の流行が起こります。

現在のところ、まだワクチンは存在しません。

この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
(2012年3月1日号掲載)

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