長期の日本滞在 (2013.12.16)

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吉原 今日子

yoshihara face米国カリフォルニア州弁護士

USDにて経営学修士(MBA)を取得。
その後、法学博士(JD)を取得。

会社の経営、組織体系、人材の重要性を常に念頭に置いた法的アドバイスを行います。カリフォルニア州弁護士会、米国移民法弁護士会所属。

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長期の日本滞在


       

 

Q グリーンカード取得から12年以上が経ちます。

 

 

親の看病のため、日本に長期間滞在することになりました。

 

 

いつ米国に戻れるかは、親の具合にもより、目処 (めど) が立ちませんが、グリーンカードを失いたくありません。

 

 

Re-entryという申請をしておけば大丈夫だと聞きました。

 

 

ご説明ください。

 

 

また、米国市民権の取得も考えています。

 

 

そのことについても教えてください。

 

 

 

 

 

 

A 「Re-entry Permit」 は、米国外に長期間滞在していても、その後、米国に戻る意志があることを示すことでグリーンカードを保持できるシステムです。

 

 

「Re-entry Permit」がない状態でグリーンカードを保持するには「連続して180日以上米国外に滞在しない」 ことが1つの条件として挙げられます。

 

 

一般的には、米国外滞在が1年を越えると「永住権を放棄した」 と見なされますが、1年以下でも180日を越えると、入国の際の審査官の判断により、永住権を取り上げられる可能性があります。 

 

 

注意したいのは、180日以内でも出入国を長期にわたって継続し、合計して米国外での長期滞在を過去5年のうち2年半以上続けると、米国での永住の意志を放棄したと見なされ、グリーンカードを失う可能性があることです。

 

 

例えば、連続して日本に179日間滞在し、米国に戻った後、米国に2週間だけ滞在し、再度、日本に179日間滞在するということを繰り返すと、米国への入国の際に永住権を失う可能性があります。

 

 

この場合、入国審査官にグリーンカードを取り上げられ、Contest (異議申し立て) を行うかどうかを聞かれます。

 

 

Contestを行わない場合は、他の一般の観光者と同じように、観光のステータスによって入国を許可され、90日までの滞在資格が与えられます。

 

 

Contestを行う場合は、移民局の裁判所において永住の意志があるかどうかが問われ、意志がないと判断されると永住権を失うことになります。

 

 

この判断においては、米国での永住の意志があることの客観的な状況証拠 (例えば、米国に会社を持っていて、米国市民の従業員が多数いるなど) があるかどうかが吟味されますが、判断基準は極めて厳しいものです。

 

 

従って、このような事態を避けるため、前もって「Re-Entry Permit」 を申請することが得策です。 

 

 「Re-entry Permit」 を申請すると、1回の申請で最長2年まで米国外に滞在できます。

 

 

また、その間の米国への出入国も自由です。「I-131」 にグリーンカード (表裏) とパスポートのコピー、写真2枚、申請料445ドルを添えて移民局に申請します。

 

 

米国外での滞在が2年以上必要な場合は、2年以内に米国に戻り、その滞在期間中に、再度「Re-entry Permit」 を申請することになります。 

 

2度目の申請までは2年の「Re-entry」 を取得できますが、3度目以降の申請では1年のみとなります。

 

 

また、3度目以降の申請では、米国に戻る意志を放棄していないことを示す「特別な理由」 がない限り、許可を得ることは困難になります。

 

 

ここで言う「特別な理由」 としては、例えば、米国の会社より海外の支店に駐在するケースが挙げられ、その際、会社からの手紙を添えて申請書を提出するのが望ましいです。 

 

「Re-entry Permit」 申請で不便なのは、申請後、米国内で指紋を取らなければならないことです。

 

 

1回の申請ならば、余裕をみて (申請後約4週間以内に指紋採取の通知が来ます) 申請すればよいのですが、2回目以降も毎回、指紋を米国の移民局で取らなければならないため、申請時とその後の指紋採取時の両方に米国に居なければなりません。

 

 

ですから、あなたのように日本で勤務する場合は非常に不便です。 

 

そこで、毎回米国で申請して指紋を取るのが困難と予想される場合、むしろ米国市民権の申請を行うことが賢明かもしれません。

 

 

米国市民権を取得するには、永住権を取得してから4年9か月を経過していれば申請の開始が可能です。

 

 

あなたの場合、今申請を開始すれば、春までに少なくとも指紋採取まで終えることができますので、その後、面接及び宣誓式の時に米国に戻ってくれば、米国市民権の取得が可能です。

 

 

ちなみに、両親が市民権を取得すれば、18歳未満の子どもは自動的に市民権を取得できます。 

 

ここで留意していただきたいのは、「Re-entry Permit」 を取得した後に米国を2年間離れたら、その後、米国市民権申請はできないということです。

 

 

なぜなら、市民権申請の条件として「過去5年間に連続して180日以上国外に出ていないこと」、さらに「5年間のうち合計で半分以上は米国内に滞在しないといけない」 と規定されているからです。

 

 

従って、米国外に180日以上滞在した後、「やはり市民権を取得しよう」 と試みる場合、米国に戻って、そこから4年半待たなければならなくなってしまいます。

 

 

市民権を申請するか「Re-entry Permit」 を申請するかは、今回の出国前に判断しておくことをお勧めします。

 

 

 

この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものです。各ケースのアドバイスは必ず弁護士及び専門機関にご相談下さい。

(2013年12月16日号掲載)

     

 

 

 

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