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石鍋 賢子
米国カリフォルニア州弁護士 上智大学外国語学部英語学科出身。ビジネス系の移民法専門弁護士として10 年の経験を持つ。グレイ・ケリー・ウェア&フリーデンリッチ、ララビー&アソシエーツ等法律事務所勤務を経て、5 年前に独立し、事務所設立。
ご質問、ご連絡はこちらまで 米国弁護士会(ABA)、サンディエゴ弁護士会(SDCBA), 米国移民法弁護士会(AILA) 会員。サンディエゴ在住19 年。 |
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永住者の急な帰任 | |||
Q. 私は会社のスポンサーで永住権を取得し、ここ数年アメリカに住んでいましたが、このたび本社へ帰任することになりました。 永住権をどう扱えばいいか教えてください。
A. まず、永住権を維持したいのか、放棄した方がいいのか、ご自分の状況に則して考えてみてください。 アメリカ出国後、しばらくアメリカへ戻れないようであれば、とりあえずご帰任前に再入国許可証を申請しておく方が賢明でしょう(発行は申請後から約3〜4か月)。 逆に、ご帰任後も頻繁にアメリカへ来る用事があるのであれば、そのまま永住権を維持できるかもしれません。 ただ、3〜4か月に1度くらい渡米していても、滞在日数が少ないために入国審査でいろいろ質問されたり、警告に近いことを言われる場合もあります。 目安として、渡米の間隔が6か月以上になるのであれば、再入国許可証を取得しておく方がいいでしょう。 とはいえ、再入国許可証の手続きには指紋採取が必要ですので、ご出国予定日までに済ませることができなければ、一度帰国した後で、指紋採取のために再度渡米しなければならないことになります。 再入国許可証は通常、承認された日から2年間有効です。 ところで、これはグリーンカードを制限するものではありませんので、再入国許可証を申請して発行を待っている間、あるいは発行後の有効期間中も、渡米の機会があれば普通に入国できます。 また、その後一度更新することもできますが、再度指紋採取のための渡米が必要になります。 2度目以降の更新が可能であるかは個々のケースによります。 尚、再入国許可証の取得をせずに、ご出国期間が丸1年を超えると永住権を放棄したとみなされます。 ですから、今後の渡米の頻度、その後またアメリカへ永住者として居住する可能性があるかどうかなども合わせて、計画を立てることをお勧めします。 一方、永住権を持っていると、税法上は世界中のどこで得た収入でも、アメリカ税務局への申告義務があります。 税法協定により二重課税は避けられるはずですが、このような義務そのものが煩わしく、税率その他の理由からいっそのこと永住権を放棄したほうが余計なトラブルがなくてよい、と思われるかもしれません。 永住権を放棄するのは意外なほどに簡単です。 また、ご帰任後いつまでにという手続き上の締め切りはありません。 前述のように、1年以上アメリカに戻らなければ、放棄の手続きをしなくてもグリーンカードは使えなくなりますが、手続きをすることにより、状況をはっきりさせることができます。 大使館の公式サイトより、永住権放棄のためのI-407という2ページの簡単なフォームをダウンロードし、大使館で毎週金曜日の午前中 (8:30から12:00まで) に受け付けてもらえます。 予約は不要で、申請料はかかりません。 書類を提出する時に領事との簡単な面接があり、永住権の放棄が自分の自主的な意図によるものであることを確認され、グリーンカードを返上し、その日から永住民ではなくなります。 尚、将来再び永住権の申請をする機会が生じた場合、永住権を過去に認められ、その後放棄したことは記録としては残りますが、刑法上の理由による剥奪などと異なり、自主的な放棄がその後の取得に不利になることはありません。 また、永住権放棄後は他の一般旅行客と同じ扱いになりますので、過去に移民法のバイオレーションがなければ、ビザ免除により90日間の観光滞在が可能ですし、条件を満たしていれば就労ビザを取得することも可能です。 |
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この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものであり、個々のケースに対する法律のアドバイスではありません。 | |||
(2012年1月16日号掲載) | |||