愛国心をモノクロに託した A・アダムス 被写体を芸術に昇華させた M・ホワイト
Masters of Photography: The Garner Collection
2021/11/20 (土) 〜 2022/2/21 (日)
San Diego Museum of Art
https://bit.ly/2YzT70y
本展では、20世紀から現在に至るまでの著名な写真家の作品を中心に、地元のコレクターであるカム＆ワンダ・ガーナー夫妻が所有する膨大なコレクションの中から、幅広い作品を紹介する。
被写体、スタイル、撮影媒体、年代などが異なるこれらの写真群は、歴史や社会における写真の役割を考え、その将来の軌跡を考える機会となるだろう。
本展は、テーマごとに３つのセクションに分かれている。
「Reflections on Nature」では、アンセル・アダムスやマイナー・ホワイトの作品から、大自然への畏敬、被写体の物語性を鑑賞し、彼らの美意識の深さに触れる。
「Things as They Are」では、ベレニス・アボット、マーガレット・バーク＝ホワイト、アンリ・カルティエ＝ブレッソンなどの写実的な作品例を挙げ、都市、社会、紛争などをテーマにしたドキュメント写真を分析する。
「Manipulating Reality」では、20世紀初頭のフランク・ユージーンの作品から、グレゴリー・クリュードソンの映画のような夢の風景まで、抽象性や寓意性を表現した写真を取り上げる。
◼︎ Reflections on Nature：自然への反映
・アンセル・アダムス (1902-84)：アンセル・イーストン・アダムス２世は米人写真家。カリフォルニア州ヨセミテ渓谷のモノクロ写真で有名。 写真に関する数々の名著でも知られている。特に写真技術を扱った３冊の著書が有名。エドワード・ウェストン、ウィラード・ファン・ダイク、イモージン・カニンガムなどと並ぶグループ「f/64」(カリフォルニア州において、ストレートフォトグラフィーの実践を標榜した写真家集団。アルフレッド・スティーグリッツの影響を強く受けて1932年に結成され、1935年まで存続したグループ) のメンバーでもある。アダムスは米国の大自然を激写し、環境保護運動にも尽力した伝説の景観写真家だ。アダムスは白と黒のモノクロ写真を11段階のグレーで構成するゾーンシステム技法を確立し、こよなく愛した自然を撮影し続けた。グレーのシンプルなフレームの中に、緻密な色調と深みのある質感を際立たせ、神秘的な自然のダイナミズムを蘇らせた。*ストレートフォトグラフィ＝ぼかしや、画面構成についての演出、合成といった技巧を用いることなく、人間が見たままのようにシャープな視線で風景や人物を撮影する表現形式のこと。
・マイナー・ホワイト (1908-76)：「カメラを持った詩人」と言われ、写真教育者として米写真界に貢献した。写真を文学的表現に高めた人物。被写体と一体化して白日夢の世界へ誘う手腕を発揮。伝説のモノクロ写真家アンセル・アダムスが開発した、11段階のグレーで構成する「ゾーンシステム」を推進したのがマイナー・ホワイトだった。写真の質感に深みを与え、被写体に宿る神秘性と心象風景を浮き彫りにする技法に優れた。ホワイトが生涯を通して追求したテーマは、一場面を数点の写真で連続して見せる「シークエンス」。彼の手に掛かると平凡な日常の実体が曖昧になり、一瞬にして白日夢の世界へ放り込まれてしまう。それは対象と一体化しようとする小説家の眼に通じるものがある。
◼︎ Things as They Are：あるがままに
・ベレニス・アボット (1898-1991)：1930年代を中心に、変貌するニューヨークの姿を淡々と撮影した。
・マーガレット・バーク＝ホワイト (1904-71)：米人女性報道写真家。戦場カメラマンの草分け的存在。
・アンリ・カルティエ＝ブレッソン (1908-2004)：歴史的瞬間、感動的瞬間、美しい瞬間を捉えた放浪写真家で、国際写真家集団「マグナム・フォト」の創設者。
◼︎ Manipulating Reality：現実操作
・フランク・ユージーン (1865-1936)：肖像画と肖像写真が同類に扱われた19世紀後半～20世紀前半に活躍した米人写真家。絵画的フォトレタッチ (修正) の創始者でもある。
・グレゴリー・クリュードソン (1962-)：大型ビューカメラによる「スタジオ撮影」と映画製作的な「ロケーション撮影」で、抽象性や寓意性を表現する作品に定評があるNY出身の現代写真家。
この展覧会での写真撮影は禁止されている。
チケット：
大人 $20
シニア (65歳以上) $15
軍人 $10
学生 $8