Monday, 14 October 2024

ゆうゆうインタビュー ガルシア繁子

経歴:福岡県出身。1959年渡米。1973年1月、「サンディエゴ俳句会」を創立。1994年1月に「フォーシーズン俳句クラス」と改称して、通信制度による俳句会を結社。俳人協会評議員(1989年)、同名誉会員(2018年、アメリカではただ一人)。芭蕉祭俳句コンテスト選者(2000年~2020年)。羅府新報新年俳句選者(2008年~現在)。日米文化交流の功績でナショナルシティー市長より「市の鍵」授与(1977年=右下写真)。表千家茶道教授、「四季の会」主宰(1998年~現在)。
表千家同門会より功労賞授与(2017年)。これまで4冊の句集刊行。

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「フォーシーズン俳句クラス」の創立50周年を祝う!

日本文化が凝縮された俳句をアメリカでも学び、楽しみ、広めていきたいーとの熱い思いで、カリフォルニア州サンディエゴ市で「フォーシーズン俳句クラス」が結成されて50年の節目を迎えた。

主宰者のガルシア繁子さんは現在、満93歳を迎えてなお意気軒昂。

俳句に対する情熱は衰えることなく、毎月、全米の会員から寄せられる俳句に目を通し、添削し、会報を発行するなど元気に活動を続けている。


俳句会を結社

同会は1973年1月16日、サンディエゴ日本語学園の一室に会員80人が集まり「サンディエゴ俳句会」として設立される。

翌1974年に日本の俳句結社「青樹社」の支部となり、「カリフォルニア青樹支部句会」に改称。

そして、1994年1月に現在の「フォーシーズン俳句クラス」と再改名し、結社として独立し、現在に至る。


ワープロを導入

創設以来、ガルシアさんは毎月10ページ超の俳句誌を手書きで制作していたが、「手書きでは大変だろう」と東京の兄がワープロを送ってくれたのを機に、ワープロの通信教育を半年がかりで受講して100点満点で卒業するという頑張りも見せる。

ワープロの導入で、俳句のほかエッセイや会員相互の交流記事なども加えて、ページ数は毎月100ページ前後に膨らむが、過労がもとで2回ダウンし、ついに入院の憂き目にも遭う。


会報を出版

創立40周年のころには退院後も体調がすぐれず、2か月ほど俳句クラスを中止する事態に。

それでも 「私たち全員で応援していますから、俳句クラスは中止しないでください。

一日も早い全快をお祈りし、俳句クラスが再開される日を待っています」と多くの会員から激励のメッセージが寄せられ一念発起。

その後は 「命あっての物種」と周囲からの勧めもあって、冬号と夏号の年2回発行に切り替え、2013年からはレターサイズの会報スタイルに作品を収めて、毎月、会員と日系メディア2紙で発表している。


全米50州を訪問

しかしながら、定期的に句会を開いたり、吟行を開催することなど、サンディエゴ地域に居住している会員を除いては、広いアメリカ名地に点在する会員が一堂に集まることは、ほとんど不可能な相談。

それでも、ガルシアさんは「寄せられる俳句には各地方、各地域ならではの行事や習慣、それに気候風土はもちろんのこと、それこそ衣食住のすべてにわたって、その地方特有ともいえるユニークな視点が作句に反映されていて、とても興味深い作品が生まれている」とし、寝食の時間を惜しんで発行してきた俳句誌や会報が会員同士の心のつながり、相互交流の促進にも大いに役立っていることを喜ぶ。

自身も、足掛け25年かけて全米50州を訪れて各地の産業や風俗習慣にも積極的に肌で触れてきた。

こうした体験は、各地から寄せられる作品鑑賞の上でも貴重な糧になっているようだ。


コンピューターと格闘

今では、習い始めたコンピューターと格闘しながら、会員から寄せられる俳句や近況報告などにそれぞれ添削を加えたり返事を書いているが、手書き時代から積み重なった指の酷使による後遺症は如何ともしがたく、指先や手首の痛みは今も続いている。

句誌の発行前は2日間の徹夜が続くなど、創立以来、正に身を粉にして、アメリカで俳句の普及と指導に努めてきている。


“ガルシア流” の信条

最近は新規入会者が少ないのがガルシアさんの一つの悩みでもある。会員の高齢化や帰国などで現在の会員数はかろうじて30人。

そうした中、日本俳壇との交流は機会あるごとに行い、2015年には「沖」の能村研三主宰らを招いて句会と茶会を開いて喜ばれるなど、何事にもベストを尽くすのが“ガルシア流”の信条といえる。


読者のみなさんへ

「創立50周年まで、やっと漕ぎつけられたとの安堵の思いで今はいっぱいです。

ここまで頑張れたことを私自身、とても誇りに感じています。句会のこと、会員のことなどを念頭に、日本では慣習化している投句料、添削料などをすべて無料にしています。

指導者として常に謙虚であること、人と自然に優しく接して、愛する心を持つことを心がけてきました。

これからは自分の体調のことも考えながら、年相応に肩の力を少し抜いて、あと数年はぜひ頑張っていきたい」と、穏やかな笑顔をみせる。


家族と会員のために

サンディエゴを基盤として、長年にわたり、アメリカの地で俳句に加えて茶道の普及と指導にも当たっているガルシア繁子さん。

その一方で、一家の主婦として家事全般をこなし、多忙極まる中、3男1女を立派に育て上げ、子どもたちが学校に行っている間と家族が寝静まってからが俳句の諸作業に没頭できる時間だった。

これまで幾多の困難を乗り越えつつも、家族や会員に優しく接するガルシアさん。

慈愛溢れる優しい笑顔の奥には、「フォーシーズン俳句クラス」創立50周年を迎えた自負と充実感が粛々と漂っているようだ。


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(2022年10月1日号に掲載)