私たち夫婦は仲が良いと言われるが、それが永遠に続くという幻想は持っていない。出会った頃は、人生の伴侶となる予感がなかった。ボールルームダンスのパートナーとして相性は◎。でも、人生観、価値観の違いから衝突は日常茶飯事。モノを運ぶ例で言うと、「風呂敷の包みを固く結ぶべき」と言う私に「風呂敷を解いて別の用具に移すべき」と妻が反論する。意見の不一致が悉 (ことごと) く顔を出し、苛立つ妻が飛びヒザ蹴りで私に襲いかかり、ドアをブチ抜いたことも。見解の相違は何か? よく考えてみると、モノを安全に運ぼうとする「目的」は一致している。ケンカの種は「過程」の不一致。「入口」は異なるも「出口」は同じ。相手のプロセスを尊重すれば、知らない “景色” が見えて、生活が2倍楽しめる? 加齢とともに、生命力を浪費する夫婦ゲンカを避けてきたが、最近、妻が本音を爆発させた。初めて聞く私への不満が堰 (せき) を切ったように迸 (ほとばし) り出て、慌てた。EVENのバランスが維持できないと、夫婦仲は簡単に崩壊する。感情論を排したコミュニケーションは随分と積み上げてきた。最後の決め手はユーモアかも。笑いのセンスが共有できなくなれば、関係解消の現実味が帯びてくる。雇用主/被雇用者の関係も同じ。要望する仕事のクオリティーと完成度にギャップが生じた時、感情を排除した単刀直入のコミュニケーション術がモノを言う。1〜2行のメモが効力を発揮する。(SS)