姪は日本の広告代理店「H社」傘下の制作会社に勤めている。クライアントの切実な要求と〆切厳守の重責を担い (それは業種を問わないが)、とりわけ広告クリエイターには言葉にならないストレスが重くのしかかり、連日、夜明けまで残業を余儀なくされる。変わっているキャラの持ち主が多く、仕事に行き詰まると、常人には考えられない奇抜な行動に出て、新たな発想源を求めるらしい。姪の同僚の1人は動物園から無断でペンギン1匹を連れて職場に現れ、皆を驚かせた。少し遊んだら返しに行くと言うが、どうやって “拝借” して、どのように “返却” したのかは謎だ。創造力とスピードを求められて無理を続け、命を落とした同僚もいたという。姪が言うには「顔の色」の変化が危険サイン。入社当初は情熱にあふれて顔が赤いが、残業で過労気味になると黄色に、次に不安と焦燥感に支配されて青味がかってくる。紫に変わるとヤバイらしい。冗談めかしながら話す姪も死の恐怖に苛 (さいな) まれ、一度退職して休養を取り、数年後に復帰した。ビジネス現場は過酷だ。バブル期に「24時間戦えますか」と歌い上げる栄養ドリンクのCMがあった。近年は「H社」のライバル「D社」の女子社員自殺がクローズアップされるなど、働き方改革が進む。日本の企業戦士の姿が変わりつつある。 (SS)