September 13, 2025

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冬休み

 

福島生まれなのに、寒さが苦手な私は、幼少時代から冬休みが楽しくなかった。子供の頃からスキーを嗜 (たしな) む北国出身者は多いけれど、私には雪原で遊ぶレジャーなど論外だった。一度も試したことがない。米国から帰省を目指す季節は、緑樹に覆われる初夏、紅葉に染まる晩秋と決めていた。そんな私が、やむを得ず冬休みを取り、亡き父の追善供養で20年ぶりに極寒の東北を訪れた時、真冬の畏怖すべき情趣に打ちのめされた。山形県最古の温泉宿K旅館。木枯らしの低い呻 (うめ) きを耳にしながら、展望風呂から眺めた、凍てついた墨絵さながらの雪景に言葉を失う。旅籠 (はたご) は迷うほど広く、無造作に置かれた明治期の大型時計と無数の番傘、そして江戸期の古色蒼然とした雛 (ひな) 飾りは “凍結された時間” の象徴。宿泊客は私1人。深夜に再び湯殿へ。雪音が夜の静寂を増幅させるのか、大浴場の湯気の中で「物の怪 (け)」が漂う邪気を感じた。それは海外生活者が味わえる異質な陶酔感なのかも。母国の暮らしに身を投じれば、感性が摩滅して異質さも日常に紛れてしまう。憧れとは無いものねだり? そうだとしても、日本という名の “美しい蝶” の羽根に、もう一筋の神秘的な紋様を見た思いがした。齢 (よわい) を重ねた私への、思わぬ冬休みの贈り物。(SS)
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▽「何がおもろいのか、箱根駅伝ナウ!」「大人エレベーターやauのCMもおもろ〜」。日本の友人から元旦、LINEが届いた。そういえば、冬休みになると、毎年、日本中が箱根駅伝に熱中する。モノの本によると「日本人の『和』 を尊ぶ思想にピタッとハマった競技だからではないか」と考察している。▽その昔、留学生としてワシントン州の田舎町で暮らしたことがある。冬休みになると学食が閉まるので、先生が毎日、留学生をバンに乗せてレストランに連れていってくれた。ある日、車がエンスト。−25℃の極寒の吹雪の中を必死に歩いた。そして、レストランのドアを開けた瞬間、皆、歓声を上げて喜んだ。▽実家では、いつの頃からか「年越しの直前、地球上にいなかったシーン」をカメラで撮リ合うのが恒例となっている。新年を迎える瞬間にジャンプすると、なぜか前向きな感じがしてシンプルに楽しい。今年の冬休みも姪たちが数多くの写真を送ってきた。▽冬休み、日本へ里帰りするたびに、男やもめの父を誘って格安ツアー旅行を楽しんだ。「この観光バスに乗っている人たちはね、みんな幸せな人たち…」と、旅先で父がボソッとつぶやいた。青空の下を歩くとか、知らない土地を旅するとか、それだけで凄いこと。「できない人にとっては、奇跡に近いことなんだ」と教えてくれた。(NS)
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yoko
冬休み。学校に通っていた頃は、冬休みはクリスマスあたりからお正月の「松の内」頃までだったと思う。クリスマスにプレゼントをもらって、クリスマスケーキを食べ、大掃除、大晦日、年越しをして、 元旦に初詣に行き、お節料理とお雑煮を味わって、お年玉をもらい、遊んで、冬休みの宿題をしたら、すぐに新学期が始まる。記憶にとても残った冬休みの出来事などは特にないけれど、冬といえば、小学生のころ、よく稲刈り後の田んぼで遊んだ覚えがある。刈られた後の稲の切り株と、そこら中に散りばめられた乾いた藁は、遊ぶのにちょうどよい大きさだった。集めて三つ編みにしてみたり、ままごとに使ってみたり、輪にして引いて強さ比べをしたり、積んである稲藁にジャンプしたり (見つかると叱られる)、などなど楽しく遊べた。乾燥した藁の香りが懐かしい。子供の頃にたくさんあった田んぼはほぼ住宅地になってしまった。里帰りしても、もう見られないのが淋しい。 (YA)
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reiko-san
△子供の頃、冬休みになると、知り合いの農場の餅つきに参加していた。釜戸で炊いたホカホカのもち米を臼に投入、手際よく杵でつかれたもち米が餅に変化していく様子を見るのは楽しかった。出来立ての餅を、きな粉、あんこ、おろし大根、醤油などに浸けてお腹いっぱい食べたな〜。その場で食べきれない餅は丸餅にして、お土産に持たせてもらった。あんなふうにしてついた餅を、最後に食べたのはいつのことだったか。△冬休みの思い出といえば、町内会の年末福引も頭に浮かぶ。子供の頃からくじ運のない私は、いつも残念賞ばかりだったけれど、弟はくじ運が良く、荒巻鮭やら高級そうな缶詰の詰め合わせセットやらを当てて得意気だった。大掃除やお正月の準備で、なんだか忙ない雰囲気で冬休みの前半が過ぎていき、夜中まで起きていられる特別な日、大晦日を迎える。こたつに食べ物と飲み物を取りそろえ、紅白歌合戦を家族で観る。年越しを迎える頃、おもむろに父が台所に立ち、蕎麦の準備。温かい掛け蕎麦風の年もあったけれど、たいていは父の実家、出雲の割子そば。丸い漆器に蕎麦を盛り、青ネギ、海苔、大根おろしなどの薬味を載せ、甘めのつゆをかけて頂く。あ〜食べたい! 私の冬休みは食べ物の思い出ばかり。(RN)
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suzuko-san
子供の頃の夏休みの記憶はいろいろあるが、冬休みに関しての記憶はあまりない。冬休みの宿題をする、年越しそばやお正月料理を食べる以外に、一体、何をして過ごしていたのだろう…。大人になって出版社で働き始めてからは、毎月締切に追いかけられる生活の上、ちゃんとした有給制度もなかったので、休みも自由に取れず。どころか休日に働いても代休さえもない、という会社だった。それを社長に言うと「休みたければ、休めばいいじゃないか」。休日出勤の代休なら堂々と休めるが、そうでなければ休みづらい。ということで、働き詰めの生活だったが、毎年暮れだけは他社よりちょっぴり長い休みがもらえていた。寒いのが苦手な私は、1週間、 カレンダーによっては10日近くもある休みを使って、毎年それゆけ〜とばかりに、近場の亜熱帯の地域に飛んでいく。ハワイ、グアム、タイ、フィリピン、インドネシア…。そんな旅の中の記憶に、タイのコサムイで大晦日に食べた貝のカレーに大当たり! お正月早々、医者探しをする羽目になったり、はたまたロシアのクルーズ船に乗り込み、沖縄、マニラ、香港コースの船上で、ロシア人が作る年越しそばやお雑煮に、あれ?と首を傾げたり、などなど。ということで、亜熱帯地域で過ごす私の冬休みは、何だか夏休みであった。 (Belle)
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jinnno-san
米国にいると、冬休みがない気がする 笑。まあ、学校制度は別として、社会人の間で三が日を含むお正月休みが、みじか~いから?働きすぎなんでねーの? 笑。でも、唯一の休みなので、どこも混んでしまう。予約なしで泊まれるのは、キャンプ場だけだね!(=そのヘンの野っぱら 笑)  そのヘンだから、BBQをした後、無理して寒い外で泊まらなくても、日帰りで帰ってもよし。で、この冬見つけてしまった、最高のちょこっとBBQスポットを! その秘密の場所は、、海が真ん前で、、夜景が素晴らしく、、人がいない、、しかもここは、、駐車場! 笑 (別にヤマシイことは、してないハズ 笑 だけど、パトロールもなし!)。あ、これ以上はバレるから、もう言えない!笑 と、必死に内緒にしていたら、、友達の記念すべき70歳誕生会に行けなくなって、パーティーの写真を見せてもらっていたら、、、は!? この景色は、、、わたしのシークレットBBQスポットではないかーー!!!さっすがは70年もサンディエゴで生きている先輩方には、かなわない! シークレットどころか、その駐車場に堂々と、料理の並んだテーブルを並べ、30人も椅子に座って宴会しているではないか!・・・今後は、おばあちゃん達のパーティーには参加した方がいいって、改めて気を引き締めた冬でした 笑。 (りさ子と彩雲と那月と満星が姪)
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私の冬休みは3日間だった。12月31日、家族ぐるみの仲で、約15年の付き合いになる友達の家にお呼ばれし、私一人でワイン1本を飲み干して酔っ払い、美味しいものを食べて舌を鳴らし、ウフフ、ワハハと笑って、楽しい大晦日を過ごすことができた。元旦は、無視して山積みになった洗濯物をやっつける。3度も洗濯機を回す。大掃除っぽいのもやってみた。長男はバイト。16歳の次男はずっと部屋から出てこないので、半ば無理やりにハイキングに誘った。PowayのIron Mountain。2人で沈黙したまま、ひたすら登る…。時々、会話をするが、話の内容は、政府の税金の使い方、世の中から戦争がなくならない理由、宗教談義など、まぁ、お固いトピックばかりを吹っかけてくる。最初は普通に議論していたが、時折、思考の違いから半ば喧嘩になる。そしてまた沈黙の行進。下山の途中で日没となり、宵闇の中を歩く。最近の雨続きであちこちに水溜まりがあるのが見えず、ハマること数回。最悪。2日の朝は、友達と Miramar Lake をジョギング。帰宅後は、また始まる学校と仕事の週に備えて、家事に忙殺。あっという間に終わってしまった、私の冬休み。もっと休みたい (涙)。
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冬休みは、子供たちにとってはクリスマス、ニューイヤーと、イベント満載で楽しい休日に違いない。しかし、大人にとっては出費の多い苦しい期間なのだ。おまけに、我が家には12月の誕生日が2人いる。誕生日プレゼント、サンタさんからのクリスマスプレゼント、両親からのクリスマスプレゼントなど、プレゼント三昧で破産しそうだ。さらに、今年は追い打ちをかけるように、長女が「Elf on the shelf」というサンタのアシスタントをする妖精エルフを買ってくれというので購入。このエルフは、クリスマスイブまでの間に、毎晩、子供たちがどのように過ごしているかをサンタに報告し、毎朝、家中の違う場所に移動しているという。良い子にしていると、時々、クリスマス前にプレゼントも置いてくれるとか。えっ! クリスマスプレゼントのほかに、さらに贈り物を用意するんかい! そしてエルフを毎朝、違うところへ置くのかい! これは面倒くさいぞ! と愚痴りながら、何とかやり切ることができた。クリスマスイブの夜、エルフはサンタとともに帰り、また来年戻ってくるのだそう。1年間見つからない所に隠さねば…。そしてまたひとつ、冬の出費の種が増えてしまった。冬休みが嫌いになりそうだ。(SU)

(2022年1月16日号に掲載)