▽私は封建的な家父長制が亡霊のように残る旧家で幼年期を過ごした。有力地主の祖父から家督を継いだ父は (バブルが弾けて没落)、生業に就いたことのない、悪く言えば “世間知らずのエエカッコシー” だった。癇癪 (かんしゃく) 持ちで、プライドが高く、家族の中で一番厄介な存在。家長の権威を最大限に振りかざし、攻撃的で相手を威圧する気迫にあふれ、天下人のような大言壮語を繰り返すキャラだったが、トイレの詰まりを解決する道具「スッポン」の使い方を知らなかった。▽お隣さんは10人ほど共生している雑居家族。統率者は元米軍人のMさん。実子と義子が同居する複雑な家族構成のようで、メリハリある共同生活を維持するため、Mさんは家族一人一人に、芝刈り、プール洗浄、屋根掃除などの義務を課して大声で指導する。軍務経験があるだけに、Mさんの掛け声は鬼軍曹の新兵訓練を思わせるほどよく通る。一家は夏になるとプール遊びに夢中になり、親と子が順番に屋根から飛び込む愚行を一日中続ける。整然とした反復行動。規律ありすぎの家族は、遊んでいてもまるで海軍のブートキャンプ。▽肩こり解消のために、ほぼ毎日、私と妻は5〜6kgのバックパックを背負って生活している (これ効果アリ)。「ヤドカリ家族」と呼ばれる日も近い。(SS)