30数年前に最初のマイホームを手に入れた。家屋の造りや外観はどうでもよく、いささかの居住空間と仕事環境を確保したかった。物質は幸せの本質を与えてくれない。漂泊俳人・種田山頭火 (たねだ・さんとうか) のように “草庵の安住感” だけでOK。新居の条件は会社まで車で1分以内の距離という一点のみ。殺風景ながら最初の物件が条件に適い、電光石火の早業 (はやわざ) で購入。見たのは1件だけ。所要時間15分。知人に話したら「よほどの大物か大馬鹿者」とのコメント。床の一部はレッドオークのハードウッドフロアだった。10年後、全体を同じ床板にしようと、フローリング専門業者に張り替えを依頼する。 事前に材料費 (かなり高額)、工事終了時に作業費を支払うことで合意。初日に様子を見に行くと、家全体がレッドオークになっていた。仕事が早すぎないか? 何かがおかしい。業者に尋ねると、口ごもりながら「絨毯を剥がしたら、全部ハードウッドフロアだったよ」。し、知らなかった!! 材料費の返金要求に抵抗する業者。オリジナルの床材は古く、サンディングマシーンで研磨した後、傷跡や隙間をウッドフィラーで塗り替え、縁取りを整える着色と、ウレタン塗装でツヤを出す作業が必要で、相当額になると説得される。どう考えても高くついた。マイホームに無頓着すぎた私の大ポカ。大物? 大馬鹿者? 後者かもしれない。(SS)