▽試験答案にプラタナスの実 (スズカケノキの果実) を正確に描けば、出席不足でも合格点を与える風変わりな先生がいた。その人は一般教養科目の生物学を教えていた (植物学じゃない!)。満員電車に潰 (つぶ) されて早朝クラスに出るのは辛いので、先生の「温情救済」にすがることにした。授業の面白さを讃えるエッセイと欠席続きの “詫び状” を書いて、果実の外皮に整然と並ぶ突起1本1本を丁寧に描いたら、何と「A」をくれた。「C」の予定調和を超えた想定外の過剰報酬。その真意は・・? 自分の心に巣喰っていた「世の中こんなもの」という青二才の舐 (な) めた考えを覆す教育的効果が確かにあった。▽私がテニスの個人指導を受けていた先生は、サンディエゴでテニス留学をしていた20歳前後の若い日本人男性だった。教え方は上手い。レッスンを続けたお陰で私の腕前も磨かれてきたが、ひとつ困ったことが。先生は “若者言葉” を臆面もなく使いまくるので、しばしば理解不能に陥ることだった。私がサービスエースを決めると「それ、ま? レベチハンパねぇ〜! つ〜か、マジえぐいてぇ! 無理ゲーっすね」・・ホメているのは分かるけれど。レッスンが終わると「とりま、次は5時集合ということで、おつありです!」・・先生はプロテニスプレーヤーになる夢を叶えたのだろうか? (SS)