September 13, 2025

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何かがおかしい?

 

▽2001年9月のある日。夕暮れ時に夫婦でテニスを楽しんでいた私たちは、プレーを中断してしまうほど、鮮やかな茜 (あかね) 色に染まる日没の空に釘付けになっていた。その時刻は昔の日本でいう「逢魔時 (おうまがとき)」に当たる。妖気あふれる西日の中に “物の怪 (け)” が潜んでいると伝えられた酉 (とり) の刻。古人はそこに俗界と幽界の接点を感じていたという。この世のものとは思えない、畏怖の念を起こさせる西空の鮮かさは、恐ろしい血の色にも似ていた。不吉な空を呆然と眺める私たち。その心情を適切な言葉で表現するなら、まさしく「何かがおかしい」――。「9.11」の大惨事が起きたのは翌朝だった。▽父と交わした最後の会話となったのは17年前の秋。帰米する前夜、私と父は生涯で唯一と思えるほど胸襟を開いて話し込んでいた。攻撃性が強く、威圧的な父を子供の頃から敬遠していた私は、あの日に限って、生来の鋭さが消え失せ、穏やかに笑う姿を目の当たりにして「何かがおかしい」と感じていた。それから2か月後のある夜、私は何人もの人影に手招きされて、強い光の中へ導かれていく夢を見た。父急死の連絡を受けたのは数時間後だった。人間は無意識のまま異変を敏感に予知するセンサーを備えているが、その意味を知らずに、漠然とサインを受け止めているのかもしれない。 (SS)
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▽自分は “昭和大好き人間” だが、今考えると「何かがおかしい」と思うことがたくさんある。例えば学校では、「うさぎ跳び」「運動中に水飲むな」「教師からの体罰」「注射針使い回しの予防接種」等々。ちなみに、勤勉の象徴として小学校に設置されていた「二宮金次郎」は「歩きスマホ」を誘発するとのことで、「座って本読む金次郎」が登場しているそうだ。▽日本は、世界で50か国ほどにとどまる、二重国籍を認めていない国の一つだ。海外で生活する日本人には、日本国籍を放棄することを余儀なくされた人が大勢いる。これを違憲として、海外在住の8人が訴訟を起こした。しかし、東京地裁は昨年1月に訴えを退けた。グローバル化が進むなか「純日本人主義思想」は「何かがおかしい」と思う。▽「110年以上生きているスーパーセンチナリアンは、特殊な白血球を持っている」と、友人がLINEで教えてくれた。その白血球は、細胞分裂の仕方が特異で、1からいきなり多数に増殖するらしい。スピードが速いから、普通なら白血病になってしまうのだが、そうはならない。後天的にDNAレベルで変化したらしいが、科学者も不思議がっている。特殊な白血球と長寿の関係は、結果なのか、原因なのか、あと5年くらいで判明するらしい。遺伝子が決める「運」を乗り越える日が、いつかやってくるかもしれない。(NS)
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yoko
私は車の不調には敏感だ。アメリカで運転免許証を取得し、最初に購入した車は12年落ちの Volkswagen だった。見た目だけで選んだ車 (小さくて可愛いコンバーティブル) だったので、運転のしやすさや、コンディションの良し悪しはあまり気にせずに買ってしまった。免許取りたてでフリーウェイを運転することさえ怖がっていた私には、古いマニュアル車の運転は困難だった。買ったはいいけど、しばらくはバス通学を続けていた。ハウスメイトだったスイスからの留学生の子と彼女の友達がマニュアル車の運転のコツを教えてくれた。無事に運転できるようになっても、不具合続きの車。まずリバースに行かなくなり、それを修理したら、今度はトランスミッションが壊れ、次にブレーキの総入れ替え、さらにラジエーター、オルタネーター、アクセルペダル、スターター、電気関係の何か (車を止めてもオフにならないので、バッテリーのつなぎ目に手動のオフスイッチを取り付けた)、クーラント液がどこからか漏れているので、補充用の水を常備。。。最後には車が全く動かなくなって、やむなく廃棄処分するまでキリがなかった。鍛えられた私は、今でも「何かがおかしい。。。」と車の異変を素早くキャッチできる。 (YA)
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suzuko-san
波乱万丈の人生と言うが、私のそれも全くその類に洩れない。時々、もうやめてほしい~!と、叫びたくなることもあるほど。例えば…親切心で保証人のハンコをついてあげたのに、その人が世逃げをして、ベンツが買えるくらいのお金を持っていかれたり。知り合いに紹介されて雇った弁護士が移民法/入管法にあまりにも疎 (うと) すぎて、今から思えば素人でも判断がつきそうなのに、無知だった私は、その弁護士の言葉を鵜呑 (うの) みにしてティファナのアメリカ領事館へビザ申請に。当然、却下され、挙句 (あげく) には国境で調べられ、入国拒否の処分! ハンドバッグ一つで日本に帰国せざるを得ない羽目に陥ったり…などなど、各年代でこれでもか!!という大事件が起こる。で、去年から今年にかけても大厄年?って言わんばかりの事件が続出。昨年の夏に大間違いの工事人を雇い “悪夢の改装” に悩まされたり。財布を無くして、全ての再発行手続をせざるを得なくなったり。ハッカーからかなりの額の預金を盗まれたり。改修不備から半年後、バスタブの蛇口からの水漏れが発覚。階下の住人に大迷惑をかけて、その工事が終わった途端、今度は自分の家のバスタブの天井が階上からの水漏れで水浸しになったり。ウソでしょ!よくもこう、次から次へと事件が続くものだ。やっぱり、私の人生「何かがおかしい!」  (Belle)
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jinnno-san
①先日、州外へ旅立つのに、ひっさしぶりに飛行機に乗ることに。お得目の航空会社といっても、手荷物等の重量が細かく規制されているのにビビり、なるべく物を持っていかないよう、一緒に行くH部長と荷造りをしていた。歯磨きセットだけで2kgはあるんじゃないかというH部長も、ZIPロックにわたしの分と合わせてコンパクトに詰めていた。保存バッグの中に簡易ひげそりを見つけたH部長が「それは持っていかない」と言って出そうとするので、「あ、それ、わたし用のだから」と待ったをかけた 笑。ヒゲは剃らないけど、足の毛を剃るんだよ 笑。なんかヘン 笑。男と女が逆の立場っぽい? 笑。②先日のカンファレンス・コールでの出来事。日本語会議という前提で4名が話していた。わたしを含む2名は滞 (とどこお) りなく日本語で会話していたけど、他の2名さまは、、誰が聞いても分かりやすい、ご丁寧な質問に対しても反応が違った。1人は日本語を理解するけど話されないようで、もう1人には日本語の質問を英訳してあげることに——。では、そのお方の返答はというと、、なんと関西弁や! 笑! つまり、日本語 → 英訳 → 関西弁 → 日本語 → 英訳 → 関西弁! 笑! 電話だけで『笑点』を楽しませていただいた気分になり、それから1週間は思い出し笑いが続行中! (現在進行形 笑!)。(りさ子と彩雲と那月と満星が姪)
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母はよく言い間違いをする。それが結構ありかも、と思える言い間違いなので面白い。△母と姉がビートルズの話をしていた時のこと。オノ・ヨーコが結婚したビートルズのメンバー、ジョン ・レノンを「ジョン・ネロン」と言っていた母。話を聞いていて、何かが違う気がすると思っていたが、まぁ、それでもいいような気がして、そのまま聞き流してしまった。先日、一度だけ確認しようと思い、電話で『Imagine』を作った人は誰だっけ?と聞いたら「ジョン・レロン」と言っていた。△2016年に解散した「SMAP」のことを「スナック」と呼んでいた。美味しそうだし、それでも通用しそうだからよし!△ウクライナの首都キーウをどうしても「キウイ」と言ってしまう母。頭の中ではキーウと思っているらしいが、似ているワードがついつい出てしまうようだ。△20年ほど前、アメリカに来て、昼食に何を食べようかという話になった時、母は「いいよ、私はドッグフードで」と言った。「ホットドッグ」と言いたかったのね。母の言い間違いは、今は高齢のせいかとも思えるが、実は30年ほど前から似たような言動があるので、現在の間違いも天然ボケである可能性が高い。今度はどんな言い間違いで笑わせてくれるのか、楽しみにしている。(SU)

(2022年9月1日号に掲載)