余計な買物はしない。生活必需品だけでOK。私は物欲の乏しい人間。そう思っていた。物欲欠落者の心理には、① 欲しいものは全て獲得済み、② 物質よりも精神性重視、③ 自己評価が低い、 ④ 無気力で他の欲求も低い、⑤ 絶対的な価値観がある ―― のいずれか、あるいは複数の要素が働いているらしい。自分は ② に近いかもしれないが、どうかな? 他の4項目は当てはまらない。ある夜、こんな夢を見た ―― Lotteryで巨額の泡銭 (あぶくぜに) を手にし、処し方に悩んでいる自分がいる。夢の中の私が取った行動は、古いパビリオンを買い取り、自分の名を冠した記念館として意気揚々と市民団体に寄付するというもの! 世間から売名行為との非難の矢面 (やおもて) に立たされ、自分の心根に宿る虚栄心の醜さにいたたまれず、仏門を叩いて「残金を全て寄進するので魂を救ってください」と高僧に懇願する。高僧 (夢によく出てくる) が言うには 「金の力で世人の尊敬、心の安泰など得られぬ。金の本質は “水” のごとし。水を掴 (つか) もうとするのは愚行なり。水の清々 (すがすが) しさを感じることで幸福になれる。お前は金で名誉を買い、その充足感を “豊かさ” と錯覚しているのだ」 もしかしたら、私の深層心理には鼻持ちならないスノビッシュな金銭感覚が巣食っていて、実は、悲惨な金の使い方をする人間なのかもしれない。(SS)