幼少の頃、郵便ポスト、灯台のサーチライト、夜空に炸裂する花火に、とてつもない恐怖を感じておりました。隠さずに申しますと、赤い色とフラッシュライトが苦手だったのです。身の回りに赤色系は置かず、救急車やポリスカーのギラギラから目を背け、打上げ花火も観賞用として楽しめない (音にも拒絶反応)・・そんな子供でした。河畔で花火大会が始まると大泣きし、祖母が私を連れて近場の温泉に “避難” するという手の掛かる男児。霊能者を自称する人が言うには、私の無意識下に前世の記憶が潜んでいて、光は「刀」の照り返しで、赤を忌避するのは「血」に関連した過去生が原因だとか。家系図によると先祖は武士。戦場 (いくさば) で斬殺された? 辻斬りに遭った? 主君に切腹を命じられて不本意な死を遂げた? 霊能者は勝手な想像を膨らませるだけ。カルマ説の真偽は別としても、楽しい話ではありません。ソクラテスだったかな。人間とは冥界で自らが繰り返し選んだ命の形であり「必然のイス」に座らされてから「忘却の原」を横切り、喉が渇いて「忘れ河」の水を飲んだ後に生まれ変わるとか。過去生の記憶は完全に抹殺されていながら、何かの拍子に蘇生するらしいのです。メタフィジカルな話でゴメンなさい。還暦を過ぎた今もなお、独立記念日の花火ショーが苦手な私です。(SS)