国境の街サンディエゴの土地柄なのか、私はよく中南米人に間違われる。社会保障局 (SSA) などの政府機関でもスペイン語の書式を渡されることがあり、英語版に替えてもらう。自分ではラテン系の顔つきとは思えないのに、メキシコ国境を越えてティフアナの街へ行こうものなら、同胞扱いされて「変なこと」に巻き込まれる。▽青年がヒスパニック系の名前を叫びながら、私に近づいてきた。人違いなのに、私の肩を抱えて上空を指差す。困惑しつつ、澄み切った青空に目を凝らすと、謎の飛行物体が! 子供の頃に写真で見た「アダムスキー型UFO」に似ている。複数の窓もある! 不思議な感動に包まれて、誰だか知らないけれど、互いに肩を組んで見上げていた。第三者が二人を見たら完全なアミーゴ状態。▽中心街のレボルシオン通りを歩いていると、どこかのお婆さんから「ティノ!」と呼び止められた。出稼ぎ帰りの息子と勘違いしているのか、いきなり私の手を握り、目に涙を浮かべて堰 (せき) を切ったようにスペイン語で延々と話し続ける。「お母さん、僕はティノじゃないんだ。ハポネス」と何度も繰り返したが、分かってもらえるまで想定外の時間を要し、本当に困った。 ▽アメリカへ戻るために税関へ。スペイン語の検問を遮 (さえぎ) って英語で答える。「ラティーノじゃないの?」 もういい。(SS)