私は環境の変化に馴染めないタイプなので、旅行移動中に熟睡することができない。周りの人の所作も気になる。新幹線の車中。カシャカシャ、ゴソゴソと耳障りな音。私の座席から通路を挟んだ左側の乗客が、何やら悪戦苦闘中。会社員風の中年男性。テーブルにはKIOSKで買ったと思われる缶ビール、真空パックのチーズ、焼き干し芋。「一人宴会」を始めようとしてチーズを開封したものの、両端が金具で留められたビニールを剥くのに四苦八苦。爪で引っかいたり、捻ったり、二つ折りにしたり、歯で千切ろうとしたり・・。それでも諦めない (その気持ち、分かる)。彼は15分近く格闘していたが、手を止めてビールを飲み始める (諦めたのか?)。いや、チーズは後回しにして、干し芋の封を開け始めた。ところが、切り分けられた芋が袋の中でベッタリと引っ付いて、1枚だけ取り出すのは無理。ベトベトの手をハンカチで拭う。日本の商品は品質管理と衛生基準のレベルが高く、密閉/密封を厳重にしているので、安全性に信頼が置ける。しかし、少々度が過ぎる感もある。疲れ果てた男性はビールだけ飲み干して、チーズと干し芋を抱えながら、哀愁を漂わせて、私が降りる1つ前の駅で下車した。釈然としない結末のドキュメンタリーを観ていたような約30分間。春の旅行中に私が目にした、日本的な光景 (?) の一つ。 (SS)