September 13, 2025

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クリスマス

 

米国生活を始めた頃、不思議な世界に足を踏み入れた。ワシントン州の小都市で夢中になったボールルームダンス。コンペティション (競技) とナイトクラブ (社交) のコースがあり、私は競技ダンスを習い始めていた。ご高齢の裕福な貴婦人たちが集まるナイトクラブは「高級サロン」の雰囲気があった。富豪No.1は自動車業界BIG 3の一角を占めたC社の重鎮を夫に持ち、未亡人となってミシガン州から来たミセスP。街の最高級ホテルで催される Xmas Dinner Dance では、ダンススタジオの社長が運転手となり、ミセスPを丁重に扱う。会話がスゴい。“What kind of store is Taco Bell?” “It's a Mexican diner where the general public likes to gather, ma'am.”  男手が足りず、私たち競技組もタキシードと蝶ネクタイで駆り出される。難関はワルツとフォックストロットのフォーメーションダンス。ビッグバンドの生演奏で踊る豪華フィナーレなのに、ご婦人方の体が硬すぎて、男のリードをフォローできないばかりか、逆方向に行こうとする。リハビリの現場だ。前衛舞踊?のようなバラバラな動きに驚き、口を開けている観客。男たちはメチャクチャな動きを必死に封じ、最後にピタリと止めた。会場は拍手の嵐。涙ぐむ客も。3年続いたクリスマスの試練。(SS)
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▽クリスマスが近づいてきた。この季節になると、サンタが子どもたちと一緒に写真を撮るイベントが行われる。でも今年は、サンタさんが不足しているらしい。サンタ役は高齢の男性が多いのだが、幼い子どもたちのワクチン接種が進んでおらず、感染を心配して働き手が少ないとのこと。やせ形でも女性でも、衣装や化粧でカバー可能!経験者優遇!1時間200ドルの高額時給でサンタ争奪戦が繰り広げられているそうだ。▽「カポーティの『クリスマスの思い出』読んだ。深いよね」。数年前に旦那を亡くした、幼なじみのさっちゃんからLINEをもらった。彼女の実家は肉屋、自分は八百屋で、似た者同士。子どもの頃、 さっちゃんと一緒に、賛美歌を歌う九官鳥を目当てに、宣教師夫妻の家によく遊びに行った。クリスマスになると、夫妻はいつも、フルーツケーキを焼いてくれて、少年と老女と犬が登場する紙芝居を見せてくれた。「クリスマスはどのように過ごしてもよい。でも、ひとつだけルールがあるの。幸せに気づかなくてはならないのよ」。さっちゃんも自分も還暦を過ぎた。たくさんの出会い、別れを経験して、お互いに紙芝居の意味が少し分かるようになった。今年のクリスマスは、祝おう!あなたがいることを。喜ぼう!命あることを。(NS)
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yoko
サンタクロースの存在を信じたことがない。クリスマスは、何か好きなものをひとつ買ってもらえる日だった。覚えている一番古い記憶は、クリスマスに可愛い猫のぬいぐるみを買ってほしいと、母に言っていたこと。でも、朝になって、枕元に置いてあったのは、アニメのキャラクター『おはよう!スパンク』の人形だった。マンガっぽい変な目が付いていて、手と足がプラスティック製。全然可愛くないし、欲しかったものと違うし、第一「スパンク」は、犬じゃん、猫ですらない。求めていたのは、ぬいぐるみのフワフワの抱き心地なのに、硬いし。。。むくれて泣いて親を困らせた覚えがある。後日、欲しかった猫のぬいぐるみも一緒に、買いに連れていってもらったと思う (あまり覚えていない)。うちの子供たちは9歳と7歳になった。お兄ちゃんの方は、うすうす感づいていそうだが、 7歳の娘はまだサンタクロースを信じている。子供たちがサンタクロースにお願いするものを見つけるのは大変だ。娘が5歳の頃、「鳴いて歩くユニコーン」をサンタにお願いしていたのだが、こちらの都合でユニコーンのぬいぐるみになった。娘は 「あれ?」と言っていたが、「サンタさん、動くユニコーンを見つけられなかったんだよ」と話したら納得してくれた。ごめんね。。。 (YA)
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reiko-san
保育園でのクリスマス会。可愛らしいクリスマスケーキにたくさんのお菓子。ロウソクに火が灯り、幻想的な雰囲気の中、興奮する園児たち。私はロウソクの先にある何かを取りたくて、何気なく腕を伸ばした。すると、先生の悲鳴が。見ると、私の服の袖が火に触れてチリチリと燃えている。火はすぐに揉み消されて、袖口が焦げただけで済んだ。小ショック状態の私。そこへ、サンタクロースが大きな袋を担いで部屋に入ってきた。私がイメージしていたサンタさんは、西洋人で太った大きなおじいさん。目の前にいるのは、痩せた日本人のおじさん。白い髭も偽物とすぐ分かる。「あれ、この人、園長先生だ」と気付いたけれど、それを指摘したらいけない気がして、この人はサンタさんだと信じているというフリをして、プレゼントを受け取った。随分と子供らしくない子供だったなと思うが、他の子も同じこと考えていたかもね。子供って大人が思っている以上に、結構、いろいろ分かっているものだから。なつかしい、クリスマスの思い出のひとつ。(RN)
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suzuko-san
無宗教の私は、本来ならキリストが誕生した日とされるクリスマスには一切関係ないはずだが、それでも世の中が浮かれているのに、それを無視するほどの主義主張もなく、なんとなく世の流れに乗って、プレゼントを交換したり、集ったりはしているが・・。日本では、幼い頃はツリーを飾って、家族でクリスマスケーキを食べて、その雰囲気に浸っていたが、18歳で東京に出てみると、クリスマスは何となく、恋人が集う日という雰囲気が漂っていた。それがアメリカに来ると、家族が一堂に会し、厳 (おごそ) かに?お祝いをする日というコンセプトを知った。ま、それはさておき、私の人生の中で、これが正真正銘?のクリスマス、という日があった。出版社を辞めてプーになった私は、当時スイスに駐在していた姉家族を訪ねてチューリッヒに飛んだ。当初1か月の予定だったが、結果、ずるずると3か月も滞在し、その間にクリスマスを迎えた。姉が「せっかくだから教会に行こう」と言うから、信者でもないのについて行った。ひとしきりミサを聞いて、深夜に教会を出たら・・何と、雪がしんしんと降り始めているではないか! それまでの人生で経験したことのない、静寂な厳粛な美しいホワイト!クリスマス。雪が舞う中でたどる家路。今もその光景はくっきりと目に焼き付いている。メリークリスマス! (Belle)
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jinnno-san
幼なじみの実家 (寺) は1429年創建らしい! (by Wikipedia)  (←うっすら知ってたけど、そんな大昔? 約600年前!?笑)。遊びに行くには、 境内にある、うすっきみわるーいお墓の横の、ほっそーい小道を通らなければならなかった。超超超、肝試し・・・。今、考えると、そんな古刹 (こさつ) なんだから、人魂 (ひとだま) の一つや二つ、浮かんでいたに違いない 笑。寺のトイレは雪隠 (せっちん) (外!)、風呂は薪 (まき) 風呂、襖 (ふすま) と障子 (しょうじ) の和室だらけの空間に囲炉裏 (いろり) がポツンと置いてある、みたいな 笑。だけど、ファミリールームには現代に合わせてコタツがある。クリスマスイブには、、昭和に流通していた、高さ80cmほどの緑色のプラスチック製折りたたみ式ツリーに、スナックの飾り付けに使うようなギラギラ銀色のモール (というらしい) をグルグル巻きにし、綿を雪のように敷いて、赤・黄・緑のライトもピカピカと光らせる。ケンタッキーフライドチキンとケーキも出してくれた。「仏教もキリスト教も、何でもお祝いするのが、うちの寺なのよ」と、幼なじみのお母さん 笑。テキトー感たっぷり 笑。お父さんは和尚さんだからツルッパゲなんだけど、その日だけはサンタの帽子を被る。意外と似合ってるし、喜んでいた 笑。よく考えたら、、クリスマスを寺で過ごしていたという、ヘンな日本の (わたしの?) 習慣だわね 笑。 (りさ子と彩雲と那月と満星が姪)
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日本でクリスマスと言えば『恋人とのクリスマス♡』。毎年のように、クリスマスイブにはディズニーランドへ行った。長蛇の列も、寒さも、イルミネーションきらめく “夢の世界” ではまったく気にならなかった。山下達郎の “クリスマスイブ”。松任谷由実の “恋人がサンタクロース”。すべて私のための歌だと思えて、ハッピー、ハッピー。ところが、長年付き合ったその彼と別れた後のクリスマスイブは、惨めな日へと変化した。昼間の仕事では上司が「今夜は彼とデート?」。約30年前には問題にならなかったパワハラコメントを尻目に、夜はコンビニのバイト。相手がいる仕事仲間はシフトに入りたがらず、残り物の男子と2人で閉店の11時まで働くことに。「いらっしゃいませ~」・・まぁ来るわ、来るわ、カップルが。「何飲むぅ?」「あったかいのがいいなぁ~」「オレ、金出すよ」。レジ脇の温かい飲み物を取り出す彼らを見ている私の顔は微笑んでいるが、心の中は「クソ〜、イチャイチャしやがって」。しまいには、お泊まりセットを買う女まで登場。心で「あらぁ、おめでとうございます (怒)」と叫ぶ。閉店後、11時半過ぎに帰宅。あと15分、あと3分・・。やった! クリスマスイブが終わったぜ!と喜んだ、クリスマスの思い出。(IE)
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最近、娘たちが、サンタクロースは私ではないかと疑っている。さすがに9歳と11歳にもなれば、学校でもお友達が「サンタなんていないのよ」なんて言う子もいるだろう。それは仕方がないと思う。しかし、去年のクリスマスの後に事件が起こった。長女が私の携帯でAmazonのWish listを見てしまったのだ。そこには、サンタから自分たちに贈られたはずのプレゼントがあった。長女が私に疑いの目を向け始め「本当はお母さんが全部買っているのか」と問い詰めてきた。私はとっさに「買うわけないじゃん。サンタさんがくれたプレゼントって、いくらくらいなのかな〜って調べただけだよ」とごまかした。長女が半信半疑の様子だったので、私は「疑うなら、来年はお母さんに欲しいもの言わないでよ。それでサンタが欲しかったプレゼントを持ってきたら、お母さんが買ってない証明になるよね」なんてことを言ってしまった!! もうすぐクリスマスシーズンがやってくる。長女はまだ私にクリスマスに欲しいものを言ってくれない。そこで日本の家族に協力を頼んだ。クリスマスにもらおうとしているものを娘から聞き出してと。娘がサンタを信じ続けるのか、もう信じないのかが、今年のクリスマスにかかっている。(SU)

(2021年12月1日号に掲載)