▽日本に暮らす老齢の母が初めてオレオレ詐欺の電話を受けたのは8年前。「母さん、オレだよ、オレ」「A (弟) かい、どうしたの?」「仕事で大ポカやってしまって、このままだとクビになる!」「あなた、まだ仕事決まってないでしょ!?」 —— 相手の勇み足で被害はなかったが、私と弟は母を守るために “ウソにはウソで撃退する” 方法を伝授した。別の詐欺電話。「どうしても100万円必要なんだ」「分かったわ。1億円振り込んでおく」 —— これも成功したが、最近の母は瞬殺効果100%の伝家の宝刀を使いまくる。それは読経。40年以上も仏門で修行を積んだ母の読経は、まさしく “ 呻 (うめ) きのホラー ”。怪しいと感じたら、相手に向かって炸裂させる。電話はすぐ切れる。▽母には徹底した倹約家の幼なじみがいて、よく2人で食事に出かける。ランチ・バイキングの店で母と待ち合わせた友人は6歳の孫娘を連れていた。5歳以下の料金が100円安いことを知った彼女は、孫娘に「あなた、今日は5歳だからね」と言い聞かせ、3人は店に入ったという。何度もお代わりをする女の子。それを微笑 (ほほえ) ましく眺めていた一人のご婦人。「たくさん食べて、お利口だね〜。何歳?」 と聞いたら、孫娘は 「今日は5歳!」 と元気よく答えた。ウソはいけない。子どもは正直だ。(SS)