December 3, 2025

州兵銃撃事件後「懸念国」の永住権再審査指示 容疑者捜査線にサンディエゴも

12/1/2025

ワシントン D.C.のホワイトハウス近くで11月26日、ウエストバージニア州兵部隊の隊員2人が「待ち伏せ型」の銃撃を受けた。2人はパトロール任務中に襲撃され、20歳のサラ・ベックストロム二等兵と24歳のアンドリュー・ウルフ一等兵が重傷を負い、その後ベックストロム二等兵の死亡が確認されたとされる。容疑者として身柄を拘束されたのは、ワシントン州ベリンガム在住のアフガニスタン出身ラフマヌラ・ラカンワル容疑者 (29)。国土安全保障省 (DHS) はテロの可能性も視野に捜査を進めている。

▪️CIA 協力歴のあるアフガン難民単独犯行か
報道によれば、ラカンワル容疑者はアフガニスタン戦争中、CIA支援の部隊で活動し、その後タリバン支配拡大を受けて米国のアフガン協力者受け入れプログラム (Operation Allies Welcome) で2021年に入国した。2025年に亡命が認められ、その後、グリーンカード取得に進む途上だったとされる。捜査当局は単独犯行とみているが、背景や動機の解明が続いている。

▪️トランプ政権アフガン関連手続き停止大規模見直し
この銃撃を受け、米メディアの記事によれば、トランプ大統領は移民政策の大幅見直しを指示した。米市民権・移民局 (USCIS) のジョセフ・エドロウ局長は「懸念国のすべての外国人に対するすべてのグリーンカードを対象に、全面的で厳格な再審査を行う」と表明。アフガン国籍者に関する全ての移民申請を即時かつ無期限に停止し、バイデン政権下で承認された亡命案件についても再点検するとしている。政権側は「前政権の無謀な受け入れ政策のツケを国民に払わせない」と強調し、安全保障上の懸念を前面に出している。

▪️「懸念国19か国のグリーンカードを全面再審査
USCISは新たな指針を示し「懸念国」に指定された19か国出身者の在留審査や永住権審査において、国別のリスク要因をマイナス材料として考慮できるとした。対象にはアフガニスタンのほか、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメン、キューバ、ベネズエラなどが含まれ、これらの国の出身者については、既に発給済みのグリーンカードも含めて見直しの対象となる。今回の指示は11月27日付で即日発効し、同日以降に提出・保留中の申請にも適用されるとされる。

▪️FBI全米規模の捜査サンディエゴにも及ぶ
FBIのカシュ・パテル長官は11月27日の記者会見で、本件について「東海岸から西海岸までの全米規模の捜査」を継続中と説明した。容疑者の最後の居住地を含む複数箇所で捜索令状を執行し、携帯電話、ノートPC、タブレット端末など多数の電子機器を押収したという。その過程でサンディエゴにも捜査が及び、容疑者や関連人物に対する聞き取りが行われたことを明らかにした。パテル長官は「証拠が導くところであれば、国内外どこへでも捜査線を延ばす」と述べ、徹底捜査の姿勢を示している。

▪️政治的波紋今後の焦点
今回の銃撃事件は、アフガン協力者受け入れや亡命認定の在り方をめぐる激しい政治論争に直結している。トランプ政権は事件を契機にバイデン政権期の受け入れ政策を強く批判し、安全保障を理由に法的移民までも広く見直す姿勢を打ち出した。一方で、実際にはラカンワル容疑者がCIAと協力した経歴を持ち、入国前にも複数の安全保障上の審査を受けていたとの報道もあり、既存の審査体制と政治的主張とのギャップも問われている。今後は容疑者の訴追やテロ関連容疑の有無に加え、19カか国出身の永住者・難民・亡命認定者への再審査がどこまで広がるのか、そして地域社会、とりわけサンディエゴなど在住者の多い都市にどのような影響が及ぶのかが、大きな焦点となる。