11/11/2025
米海洋大気庁 (NOAA) の最新報告によると、漁具や海洋ゴミによる大型クジラの絡まり (entanglement) 件数が2024年に全米で95件となり、2023年の64件から急増、過去17年の平均 (71.4件) を大幅に上回った。発生の25%はカリフォルニア沖で、主にモントレー湾周辺に集中した。
▪️種別と分布
確認された95件のうち77件がザトウクジラで、2007年以降も同種が最も頻繁に被害を受けている。発生の71%はカリフォルニア、マサチューセッツ、アラスカ、ハワイの4州沿岸で確認された。
▪️主因と影響
48%は商業・レクリエーション漁業に直接起因。クジラは絡まりを数日から数年抱え続けることがあり、遊泳・採餌・呼吸などに支障を来す。重症例では感染、飢餓、四肢 (ヒレ) の壊死・切断、失血、絞扼、溺死に至ることもある。NOAAは船舶との衝突と並ぶ主要な死亡原因 だと指摘する。
▪️現場の声
海洋保全団体オセアナ (Oceana)は「クジラに重要な海域・時期に漁具が多すぎる」と現行の対策強化を要求。サンフランシスコ湾岸の海洋哺乳類センター (Marine Mammal Center) は、官民連携 (政府・漁業者・研究者・保全団体) による科学的対策の推進を訴え、2024年は州内での対応件数が平年を上回ったと報告した。
▪️政策環境
NOAAの数字は海洋哺乳類保護法に基づく公表義務によるものだが、連邦予算の削減や法弱体化の動きが進む中、同庁の調査・規制・執行機能の低下が懸念されている。専門家は「生物多様性を守るには、十分な人員と資金を備えたNOAAが不可欠」と強調する。
▪️打開への展望
NOAAは増加要因の精査を継続し、一時的な増加か長期トレンドかの判断を進めている。報告は、装置改良や時期・海域の操業調整、回収プログラム、通報体制の強化など協調的・科学的アプローチの加速を求めている。クジラが「生き延びるだけでなく繁栄する」海を実現できるかは、保全と産業の両立にかかっている。