Wednesday, 19 March 2025

トランプ大統領とゼレンスキー大統領、ウクライナ戦争をめぐり激しい応酬

3/3/2025

ホワイトハウスで行われたトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談は、激しい言い争いに発展。トランプ氏はゼレンスキー氏に対し「ロシアと合意しなければ我々は撤退する」と迫り、関係は急速に悪化した。

本来、この会談は米国とウクライナの鉱物資源に関する協定締結の前哨戦とされていた。しかし、両首脳が互いに発言を遮る場面が続き、緊迫した雰囲気に包まれた。結局、ゼレンスキー氏は合意に至る前にホワイトハウスを後にすることとなった。

トランプ氏は、米国の軍事政治支援に対するゼレンスキー氏の感謝が足りないと指摘し、「第三次世界大戦を引き起こすつもりなのか」と非難。一方のゼレンスキー氏は、ロシアのプーチン大統領との和平交渉に「妥協はあり得ない」と強調したが、トランプ氏は「和平には譲歩が必要だ」と反論した。

2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して以来、現在もウクライナの約20%がロシアの支配下にある。今回の会談は、ウクライナの石油天然ガス希少鉱物への米国のアクセスを含む協議の一環だった。しかし、トランプ氏はゼレンスキー氏に対し、戦争を早期に終結させなかった責任を問うような姿勢を見せ、緊張を高めた。

会談にはヴァンス米副大統領も同席しており「戦争は外交を通じて終結させるべき」と発言。ゼレンスキー氏は「どのような外交を指すのか」と問い、2019年の停戦合意に言及した。しかし、ヴァンス氏はゼレンスキー氏が「無礼だ」と非難し、メディアの前で議論を持ち出すことに不満を示した。
トランプ氏とヴァンス氏は、ウクライナへの3年間の支援に対してゼレンスキー氏が感謝を示していないと主張し、ゼレンスキー氏が米国の方針に口を出す立場にはないと強調。会談は予定よりも早く終了し、ゼレンスキー氏は公用車でホワイトハウスを去った。

その後、トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「ゼレンスキーは米国を軽視した」と投稿。「彼は米国の関与が交渉において有利に働くと考えているが、私は有利を求めているのではなく、平和を求めている」と述べた。

一方、ゼレンスキー氏はSNSで4回にわたり米国とトランプ大統領に感謝の意を示した。また、FOXニュースのインタビューでは「公の場での言い争いは良くなかったが、トランプ氏との関係は修復可能だ」と発言。「なぜなら、これは単なる二人の大統領の関係ではなく、両国の国民の強い結びつきでもある」と述べた。

米国内では、この会談に対する反応が党派ごとに分かれた。共和党のリンジー・グラム上院議員は「オーバルオフィスでの出来事は無礼だった。ゼレンスキーとは今後取引できるかわからない」と発言し、ゼレンスキー氏の辞任を求める声まで上がった。一方、民主党のハキーム・ジェフリーズ下院院内総務は「ゼレンスキー氏に対する扱いはひどいもので、プーチンをさらに勢いづかせるだけだ」と批判した。

ウクライナ国内ではゼレンスキー氏が戦争継続を主張したことに一定の支持が集まっている。「トランプ政権の態度は高圧的すぎる。ゼレンスキー氏の表情を見ると、非公開の会談がさらに激しいものだったことがわかる」と、キーウの市民はBBCに語った。

欧州諸国からはゼレンスキー氏への支持が相次ぎ、フランスや英国の首脳もウクライナへの変わらぬ支援を表明。ドイツの次期首相候補フリードリヒ・メルツ氏は「我々は常にウクライナと共にある」と強調した。
一方、ロシアはトランプ氏とヴァンス氏の対応を「抑制的だった」と評価し、ロシア外務省の報道官は「彼らがゼレンスキーを殴らなかったこと自体が奇跡だ」とコメントした。

*Picture:© Joshua Sukoff / shutterstock.com