November 21, 2025

国務省、医療負担等を理由に永住権拒否も 公的扶助リスクと財務状況から審査

11/14/2025

米国務省は11月11日、一定の医療条件を抱え、公的扶助に頼る可能性が高いと判断された移民ビザ申請者を拒否し得る新指針を内部通達で示した。領事官は、申請者の健康状態と資力 (生涯にわたる医療費を自己負担できるか) を総合評価する。通達は、循環器・呼吸器疾患、がん、糖尿病、代謝・神経疾患、メンタルヘルス等が「多額の医療費を要し得る」と例示する。

▪️審査の枠組み
在外申請者・難民はもともと移民体検が必須だが、新指針はさらに、将来の医療緊急・医療費発生の可能性について領事官が自らの判断も交えて検討するよう求める。医療の専門訓練を受けていない領事官ではあるが、資産・収入、犯罪歴のフラグ、他の入国要件と併せ裁量で可否を決める。担当者は「病名のみで一律拒否ではなく、ケースバイケース」と強調。例えば、インスリンが必要な糖尿病自体は不許可理由にならないが、自己負担できず Medicaid (公的医療) に依存する見込みなら拒否され得るという。

▪️背景と位置づけ
この方針は、トランプ政権1期目で拡大解釈された**「パブリックチャージ(公的扶養)」規則の復活に近い。かつては現金給付中心の依存が対象だったが、当時はMedicaidや住宅券等の受給でも不利となった。バイデン政権は2022年に従前定義へ巻き戻したが、今回の指針は再び公的負担リスクを広く考慮させる内容だった。現政権は「納税者の負担を避けるため」と説明する一方、糖尿病や心血管疾患など有病率の高い条件が多く含まれるため、広範な拒否の余地が生まれるとの懸念もある。

▪️影響と留意点
• 対象は移民ビザ (永住権) 申請者が中心。非移民でも資力審査は既存運用で行われ得る。
• 医学的適格性=無条件不許可ではないが、長期的医療費を自己負担できる証拠 (保険・預貯金・支援誓約など) の重要性が増大。
• 申請者は加入予定の民間保険の補償範囲・自己負担上限、資産証明、扶養誓約書などを整え、医療管理計画 (服薬・通院体制) を説明できるよう準備すべきだ。

▪️展望
国務省は領事官の裁量を強調するが、方針は移民抑制キャンペーンの一環とも受け止められている。議会・司法での争点化や、規則改正/差し止めの可能性も残る。現時点では医療条件と支払い能力の実証が審査の鍵となり、申請者は早期の情報収集と書類整備が不可欠となる。


**「公的扶養」は移民が政府の現金給付や長期の公費負担に主として依存する状態を指し、入国・永住審査で将来その恐れがあるか総合判断される。第1次トランプ政権は対象を Medicaid、SNAP (低所得世帯にフードスタンプを支給する食料購入支援プログラム)、公営住宅など非現金給付まで拡大し、36か月中12か月超の受給で不利としたため “萎縮効果” を招いた。2022年にバイデン政権が従来定義へ戻したが、新指針は健康状態と医療費の自己負担能力を重視し、公的負担リスクの評価を再強化。病名のみで不許可ではなく個別審査が行われるが、保険・資産等の立証が重要になる。