Saturday, 21 December 2024

大統領選直前、激戦州で揺れる労働者票 全米自動車労働組合、分断・離反の動き

10/19/2024

大統領選直前まで激戦が続く中西部ミシガン州。

世界的な自動車メーカーが本拠を置き、屋台骨として地域を支える。

そこで働く人を束ねる全米自動車労働組合 (UAW) は有数の規模を誇り、選挙戦を左右する。

UAWは民主党ハリス副大統領を推すものの、保護主義色を強める共和党候補のトランプ前大統領の支持へと離反する動きもあり、揺れている。

▽不満

「UAWには常に民主党を支持する幹部と、それ以外の組合員と2つの層が存在する。

そして一般労働者はハリス氏を支持していない」。

トランプ氏を支持するブライアン・パネベッカーさん (65) は、幹部主導の決定に不満を露 (あら) わにした。


パネベッカーさんは米自動車大手への勤務経験を持ち、トランプ政権時の2017年に独自の支援団体「トランプ氏支持の自動車労働者」を立ち上げた。

交流サイト (SNS) の登録者は1,800人を超える。

業界外や退職者も含むが「半数以上は現役のUAW組合員」と説明する。


トランプ氏支持の理由には、米国が環太平洋連携協定 (TPP) から離脱した決断を挙げる。

「日本には有益でも、米国労働者には有益ではなかった」。

ハリス氏が掲げる電気自動車 (EV) の普及促進策を批判し「EVバッテリーは中国製。

米自動車産業は廃業しかねない」と警告する。

▽埋まらぬ溝

9月中旬、デトロイト郊外のフォード・モーター工場前。

メンバー約30人が沿道でプラカードを掲げていた。

トランプ氏支持を訴える毎週恒例の街頭活動に呼応し、退勤者が乗るとみられる車などから賛同のクラクションが次々と鳴らされた。


参加したマイケル・ボッグスさん (33) は祖父から3代、フォードで勤務。

民主支持だったが「トランプ政権で経済は好調だった。バイデン政権で物価は上がり、生活が一変した」とこぼした。


活動中にUAWのマークが入った服を着た男性が車を止め「彼らが労働者というのはウソだ。

自動車労働者はトランプ氏を支持していない」と絶叫しながら割り込み、口論となる場面もあった。


パネベッカーさんは活動を通じ「7割程度の労働者がトランプ氏支持だと感じる」と手応えを語る。

しかし、口論したUAW組合員でゼネラル・モーターズ (GM) に勤めるウィリアム・バグウェルさん (66) は「私の職場150人のうち、トランプ氏支持はせいぜい10人程度だ」と反論する。


トランプ氏について「大統領当時、自動車産業の厳しい時期に何も助けなかった。

バイデン大統領はストライキで共に闘ってくれた」と強調。


相反する主張に、組合内に横たわる埋めがたい溝を感じさせる。

*Photo: © viewimage / shutterstock.com

(2024年11月1日号掲載)