8/31/2025カリフォルニアの山火事対策は、近い将来大きな転換点を迎えるかもしれない。ロサンゼルス・タイムズによると、自律型シコルスキー・ブラックホーク・ヘリコプター (双発エンジン搭載の中型多目的ヘリ) の導入により、人員を派遣せずAIが消火活動を担う未来が現実味を帯びてきた。
このヘリは、衛星アンテナや各種センサーからの情報で火災を検知し、AIが即座に消火計画を立案する。炎を確認すると水を投下し、火勢が10平方フィート (約0.9㎡) を超える前に封じ込めることを目標とする。「ロッキード・マーチン( Lockheed Martin)」 と CA州内ソフトウェア企業「レイン (Rain)」が共同開発したこの機体は、最先端の技術を備えながらも搭乗員を必要としないため、消防隊員の命を危険にさらすことなく運用できる。
Rainのマクスウェル・ブロディCEOは、「壊滅的な高強度火災から地域が守られていると住民が実感できる社会を実現するのが夢だ」と述べ、今後の数十年を見据えると迅速な導入が不可欠だと強調した。技術的な課題の解消が進めば、ブラックホークはカリフォルニア州消防局 (Cal Fire) にとって、悪化する気候危機と火災シーズンに立ち向かう重要な装備となる可能性が高い。
背景には世界的な火災リスクの拡大がある。国連環境計画 (UNEP) と 国際連合環境計画地球資源情報データベースセンター (GRID-Arendal) の報告書は、山火事発生件数が2050年までに30%、2100年までに50%増加する恐れを示した。UNEPのインガー・アンデション事務局長は、現行の政府対応は資金配分を誤っており、最前線で命をかける消防隊員の支援や、火災リスク削減への投資、地域社会との連携、気候変動対策強化が不可欠だと訴える。
実際に2025年はまだ8か月を終えた段階で、すでに約355,000エーカーが焼失し、31人が犠牲となっている (Cal Fire統計)。こうした深刻な被害を前に、AIと自律機の活用は「事後対応」から「初期消火による被害防止」への発想転換を象徴している。課題は残るものの、人的被害を最小化しつつ延焼を未然に防ぐ切り札として期待が高まっている。