8/31/2025米食品医薬品局 (FDA) は、今秋から冬にかけて流行が懸念される呼吸器疾患シーズンに備え、新型コロナウイルスの改良型ワクチンを承認したが、接種対象を大幅に制限したことで物議を醸している。
今回承認されたワクチンはファイザー・ビオンテック製で、流行中のJN.1系統から派生した「LP.8.1」株に対応するが、接種対象は65歳以上の成人に限定された。5歳から64歳に対しては、喘息や肥満など重症化リスクのある基礎疾患がある場合に限って接種可能とされる。
この決定に対し、多くの医療関係者や患者団体は「不要にリスクを高める」と強く批判。小児科学会 (AAP) は、初めてアメリカ疾病予防管理センター (CDC) の方針と異なる独自の接種指針を公表するなど、現場との乖離が際立っている。
一方で、カリフォルニア州は現在、全米でも最も深刻な感染再拡大に直面している。州保健当局は夏終盤の感染急増を確認し、既存ワクチンの早期接種を呼びかけている。保健長官デブラ・ボーゲン氏は「現行ワクチンも入院や死亡のリスクを中程度に防ぐ効果がある」として、高リスク者は改良版を待たず接種すべきと強調した。
CA州内の救急外来受診は昨冬の2倍を超え、特に12歳未満の子供の受診は州平均の2倍以上に急増。75歳以上でも過去1か月でほぼ倍増している。下水調査でも州全域で「高い」感染活動が確認され、感染拡大の勢いを裏付けている。全米でも感染は「増加傾向」とされ、感染再生産数 (R値) は1.07と上昇基調にある。
新ワクチンは数日内に全米の薬局や病院で供給開始される予定だが、最終的な接種推奨はCDC諮問委員会の採決を待つ。この委員会は、就任後にロバート・F・ケネディ・ジュニア厚生長官がワクチン懐疑派を新たに加えた経緯もあり、今後の判断が注目される。
今回の制限は、高齢者や基礎疾患患者の保護を優先した形だが、感染が急増するなかで広範な層が接種できない現実は、新たな混乱と健康被害を招く可能性がある。