2024年 02月 27日

ゆうゆうインタビュー マイク・アームス

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動物福祉センターと一般人が共有している部分とは。

動物シェルターを訪れるアメリカ人は極く少数です。野犬捕獲員の重苦しい イメージなどをテレビで観ているから足が向かないのでしょう。しかし、現実 に置かれている私たちの環境は違います。私たちはコミュニティの一部として 自らの存在を認識しています。このことを皆さんに知って頂きたいと思います。 当センターでは敬意と愛情を注ぎながら動物を扱っています。私たちは動物の ために働いているのです。



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Mike and “manʼs best friend” sharing a moment. How could you not love a face like that?
——動物好きが多いとはいえ、動物と共に成長できる恵まれた環境に置かれて いる人は少数です。動物が人間の生活に与える影響とは。
 

動物が私たちに与えるような愛や忠誠心を人間同士では真似ることはできません。彼らが私たちを傷つけたり、虐待したり、離れていくことはありません。動物たちは一生をあなたの側で過ごしたいのです。このような感情は人間からは得られません。人間の場合、短期間ならそういう関係も生じるかもしれませんが、一生続くものではないでしょう。以前、ある家族がアメリカ動物虐待防止協会 (以下 ASPCA) から犬を引き取りに来ました。元の家族が飼うのが面倒になり、ASPCAに引き渡した犬です。ある日、9才の男の子とその犬が野原を散歩しているとガラガラヘビが現われたのです。ヘビがとぐろを巻いて少年に攻撃しようとした時、犬が少年に体当たりして脇へ押しのけ、彼の身代わりとなって胸の真中を噛まれました。少年の命を救ったのです。私が大の親友と散歩していたと仮定しましょう。私が彼の身代わりにヘビに噛まれる行動を取るかというと、正直なところ疑問です。犬は明らかに危険を感じ取り、何が起こるかを察知した上で子供を守るために命を捧げたのです。彼はヒーローでした。人間に捨てられたヒーローなのです。私たちのシェルターには、このようなヒーローが沢山いて、誰でもすぐに引き取ることができます。例外なしに動物が人間の命を救う訳ではありませんが、彼らはあなたの人生をより豊かに、そして満たされたものにするでしょう。それを可能にしてくれるのは動物だけです。


—— ヘレン・ウッドワード動物センターでの使命とは。

ここでの私たちの目的はアダプションと教育です。コミュニティや社会に対して、動物は使い捨てのアイテムではないことを教えなければなりません。人間と動物は地球を共有しており、互いに共存するように努めることで人生のクオリティが高まる事実を伝える必要があります。私たちは動物を尊重しなければなりません。私たちを守ってくれる動物を保護しないのであれば、思い遣りに溢れる人間とは呼べないでしょう。

仮に、あなたが不幸にも視力を無くしてしまったら、盲導犬が一生を捧げてあなたの目となることでしょう。不運にも車イス生活を余儀なくされれば、コンパニオン犬がドアを開け、電灯を点し、あなたが落とした物を拾うという役割を死ぬまで務めるでしょう。人間が地震などの予期せぬ被災に遭遇した場合も、動物たちは特殊な能力を駆使し、人知の及ばぬ捜索や救出などを可能にしてくれます。丁度「グランド・ゼロ」の時に、極度の疲労に達するまで1日20時間も働いたように̶̶̶。そんな彼らに名誉を与え、保護するのが人間の務めではないでしょうか。


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Kids at “Critter Camp” getting a behind-the-scenes look at the kennels. HWAC offers children first-hand experience with animals through various animal related activities and games.
—— あなたは昔から動物好きでしたか。

海兵隊に従軍した後、ASPCAの雇用事務所の門を叩きましたが、面白いことに、私がケンタッキー出身というだけで動物好きに違いないと彼らは考えたのです。実際、私はそれまで動物と過ごした経験はほとんどありませんでしたが、このようにしてASPCAで働き始めました。やがて、私は動物たちが直面している痛み、苦しみを知るに及んで食事も咽に通らなくなり、体重が減少し、眠ることもできなくなりました。この頃から、自分が動物好きであることを自覚し、彼らのために為すべきことは何かを考え始めました。当時は気付きませんでしたが、神が授けてくれたエネルギーと知性をその時に駆使していれば、そこで多くの問題を解決していたでしょう。ところが、自分は無力だという結論に達してしまい、私は辞表を提出したのです。全ての問題から逃避するという臆病な方法を取ったのでした。


——動物の存在の大切さを認識した出来事とは。

1匹の子犬が、私に勇気や思い遣りとは何かを教えてくれた時です。ASPCAで働いていた最後の週のある夜、ブロンクスで犬が車にはねられたという電話連絡が入りました。その晩、既に担当者は出払っていて出動する者がいませんでした。そこで、私は係員のコートを身に着けて救出に向かいました。現場に到着してみると、負傷した子犬がいて、背骨が折れている状態が見て取れました。私が犬を拾い上げようとした瞬間、若い3人のチンピラが現われて「何をしてるんだ」と問い詰めてきました。「これから子犬をシェルターへ連れていく」と告げると、彼らは「駄目だ」と阻止するのです。意に介さずに子犬を助けようとすると、連中が背後から私に飛び掛かってきました。悪趣味な彼らは、子犬がどれくらい生きるかという賭けをしていたのでした。私はその邪魔をしたというのです。私は殴られた上にナイフで刺されて、無残にも路上に倒れ込みました。私の意識が失われ始めた時、どういう訳か背骨の折れた子犬が私の方へ体を引き摺ってきて、私の顔を舐め始めました。驚くべきことに、私の意識を回復させたのです。どう考えても、その犬が動ける道理はありませんでした。しかし紛れもなく、動物の天性である無償の行為を私に施してくれたのです。

どん底の中で私は神に祈り、もし生かしてくれるなら、今後決して身寄りの無いペットに背を向けはしないと約束しました。そして、その約束を今でも守り続けています。あの日以来、私の人生は一変しました。この出来事は私に人生の目的を授けてくれた神の恩恵だと思っています。私は寝覚めとともに、今日1日、自分が何をすべきかを熟知して行動を開始します。私の唯一の恐怖は、全てをやり遂げる前に私の人生を使い果たしてしまうということです。


—— ヘレン・ウッドワード動物センター (以下 HWAC) の一員になった時期は。

私は1999年から当センターで働いています。以前は動物福祉業界でコンサルタントをしていました。当時は1カ所に留まることがなく、常に移動する日々を送っていました。私はそれまで HWAC という名前を耳にしたことがなく、最後のコンサルタントの仕事でサンディエゴに滞在中に「HWAC でディレクターを探している」と友人から聞いたのです。私は別の勤務地が決まっていたため「もう遅すぎる」と友人に言いました。ところが「私を必要としている全ての場所に赴くことなど不可能だった」という事実を思い返し、それなら「誰もが私を訪ねることができる場所を作ればいいじゃないか」と考えたのです。私は今、その業務に勤しんでいるのです。ここにはフロリダ、テキサスを始め、日本を含む数多くの州や国から人々が訓練に訪れます。私たちは彼らに非営利目的の動物福祉活動について全てを教えます。資金調達の方法に始まり、売買取引のノウハウ、更にどのようにして殺処分を止めさせるか̶̶̶など。将来的には世界初の「動物大学」を創設する予定です。そこには世界で最先端の動物施設が登場するでしょう。


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HWACʼs Theraputic Riding Program helps to enhance a wide variety of physical, mental and emotional skills in a fun, safe, empowering environment.
—— この施設特有のプログラムとサービスとは。

私たちは動物を引き取り、引き渡すだけでなく、コミュニティの一部として様々な活動を行います。敷地内には馬小屋があり、身体的、精神的に障害のある人々に対して乗馬治療プログラムを提供し、プログラムには4歳から80歳までの人が参加しています。彼らは脳卒中 (脳梗塞) 患者や自閉症の子供たちなどで、馬に乗ることで病院での治療法と同じような効果を得ることができます。同時に、満足感や達成感も与えられるのです。車イスの生活をしている人々にとって馬の背に座るということは、唯一目線を下ろすことができる時間なのです。さらに、移動式の指導センター「アニモービル」も付設しています。私たちは病院、ホスピス、青少年センターなどを精力的に訪問しました。私たちの保護下にある愛すべき動物たちのほとんどは、虐待や放置という人間の無責任な行為から救出された動物です。動物たちは虐待に遭った子供たちと無意識に繋がっています。時折、被虐待体験から人間不信に陥った子供たちが床に座り、犬を抱き寄せ、耳を近づけて、思い思いのことを話していたりするのです。この行為は、子供たちが動物から信頼や愛情を感じることから起こります。動物は大人が触れ合うことのできない子供とのコミュニケーションを可能にします。私たちは犬、猫、馬の病院施設とレンタル施設も確保しています。これらの施設はホリデーシーズンの到来とともに次第に人気が集まります。満員にならないうちに、予約の列に並ぼうと車中で睡眠を取る人もいます。人間と動物の実りある相互関係の場を提供する私たちには、人々の理解と信頼が寄せられています。


—— 動物に恩恵をもたらす、期待できる状況の変化とは。

一般人と政治家が共に態度を明確にすることを恐れなければ、私たちは米国で3年以内に動物の殺処分を阻止することができます。私たちが直面している最大の問題は動物人口の過剰です。そのため、これ以上数を増やさないために、収容されている動物に卵巣摘出や去勢を施さなければなりません。 飼育動物の14~20%がシェルターで売買されています。残りの80~85%はペットショップ、子犬生産工場、ブリーダーからです。政府が動物の卵巣摘出や去勢を義務付けるなら、問題は簡単に解決へと向かい、この国で何百万匹もの動物を安楽死させる必要が無くなるのです。私たちは責任を持って世話をする必要があります。「お爺ちゃん、この国で動物を殺していたという話は本当なの?」と、孫が私に訊ねる日が来ることを待ち望んでいます。その時に私は自分の使命を果たしたと実感するでしょう。


—— 動物福祉団体が直面している重大問題とは。

動物シェルターで働く人々に対する世間の見方を変えなければなりません。長い間、彼らは二流市民のような気分を味わってきました。この業界が最も高い自殺率を示しているのです。ほとんどの施設で、彼らは毎日生と死に関わっています。人間を信頼しきって無邪気に顔を覗き込んでいる動物がいます。次の瞬間、注射の針が打ち込まれ、可愛らしい目から生命力が消えていくのを見なければならない状況を考えて下さい。平気で抱き寄せることができますか? 何の感情もなしにできますか? 傷つくこともなく? それは無理な話です。私たちは動物の排泄物を処理するだけの価値しかない存在だとある人は言います。私はその仕事に満足しています。それを喜ばしく、誇りに思います。私たちは動物の生命が消えていく現実を恐れずに直視しています。ただ、HWACでは動物は愛情に満ちた家へ送り込まれるため、安楽死させる必要がないのです。これが一番大切なことです。


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Mike and Halle, one of the many friendly felines available at HWAC.
——状況が好転するという希望はありますか。

勿論です! 私は仲間が「全ての動物を救うことは不可能だ」などと弱音を吐いているのを聞くと落胆してしまいます。諦めてしまった時は、その場から立ち去る時です。

私の人生は真実、現実、変化のストーリーで紡がれています。意識の変化をもたらした実例を紹介しましょう。私の娘が高校のクラスでスピーチした実在のディアハンター (鹿狩り人) についての話です。ディアハンターがどのように変化していったのか? そして、クラスで悪ふざけやイジメを得意にしていた粗暴な男子生徒たちは、そのストーリーを聞いてどう変わったのか?

鹿狩りの季節になり、猟師はその日も狩猟に出掛けました。その朝、彼は早めに野原へ行き、いつもの場所で獲物を待っていたのです。暫くして、雄シカと雌シカが2頭並んで野原を横切る姿が目に入りました。2頭が野原の中央あたりに来たころ、猟師はライフルを取り上げ、スコープを通して照準を合わせます。彼は雄シカが耳と鼻をピクピク動かしたのを見て、咄嗟に危険を察知したことに気付きました。にも拘らず、雄シカはその場に立ち止まっているのです。猟師は奇妙に思いつつも、それほど気に止めずにライフルを傾けました。銃声が響き、雄シカは倒れました。ところが、どういう訳か雌シカは逃げずにその場に佇んでいました。その様子を見て猟師も混乱しました。銃声を聞いた瞬間に雌シカが逃げ出すのは当然なのに…。猟師はいぶかしげに倒れた雄シカに近づいていきます。驚いたことに、雌シカはまだそこに立っているのです。猟師が頭を抱えながら尚も近づくと、雌シカの左側の毛がほとんど剥ぎ取られているのが見えました。雄シカの右側も同様でした…。ようやく猟師は全てを理解しました。雌シカは完全な盲目だったのです。雄シカは雌シカの目となっていたので側を離れなかったのです。雌シカは雄シカなしでは歩くことができなかった…。その瞬間、猟師は動物にも感情や思い遣りがあり、犠牲行為に出るということ、そして、そんな動物の命を奪うことは許されない行為に思えたのです。猟師は無言のまま立ち上がり、以後は二度とライフルを手にしなかったというのです。

私の娘がスピーチを終えた時、クラスの男子生徒たちは悪ふざけも忘れて、笑い飛ばすこともなく、静まり返っていました。そして、授業が終わると、今日のことを忘れないために物語のコピーを欲しいと全員が彼女に願い出たのです。昨年、フィラデルフィアで私はその猟師と会いました。猟師や少年たちの意識が変わるのですから、私たちも、そして私たちを信頼している動物たちのために変革を起こすことも可能なのです。


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Actress Diane Keaton advocates on behalf of our “four-legged friends” as a supporter and spokesperson for HWACʼs Home 4 the Holidays adoption program.
—— HWAC でのアダプション・プログラムについて教えて下さい。

ここでは動物を安楽死させません。その必要が無いのです。私たちは収容スペースの必要性から殺される運命にある動物たちを他のシェルターから引き取り、彼らのホーム探しも行います。私が当センターに所属して以来、動物のペット縁組件数は4倍に伸びています。毎年5月の最初の週末を目掛けて、私たちは世界20カ国に広がる国際的なペット縁組「アダプト・ア・ソン」を開始しました。でも、私にはそれも十分ではありませんでした。そして、私が初めてここに来た1999年にアダプション運動「ホーム・フォー・ザ・ホリデーズ」のアイデアが思い浮かんだのです。初年には14のシェルターを招き、合計2,563件のペット縁組を行いました。しかし、それでも十分ではなく、やがて全米そして地球規模に拡大していったのです。そして昨年、世界中の1,300のシェルターと手を結び、感謝祭から新年までの8週間のホリデーシーズンに26万件を越えるペット縁組を成立させるまでに発展しました。今や世界最大のペット縁組運動となっています。4年目に入り、スポークスウーマンのダイアン・キートンの貢献ぶりには素晴らしいものがあります。今年、私たちは30万件を目指しています。


—— あなたの話を聞いて参加を希望する人たちに、何を伝えたいですか。

ここではボランティア活動が重要です。私たちは700人以上のボランティアを抱え、彼らは代理母や代理父として動物の面倒を見ています。資金源の70%近くは寄付に頼っています。人々からのドネーションが無ければ、私たちは何もできません。活動基盤は単純にして明快です。私たちの活動が機能し、それが意義のあることだと理解して頂いているサンディエゴのコミュニティの人々に支えられているのです。人類と動物の両者を豊かにする特別な功績を残せて人生を終えるなら、私の喜びはこれに勝るものはありません。


—— 世間ではあなたを最高の動物救済者として称えていますが、これについてどう感じますか。

嬉しいですね。社会に貢献できる立場にあることに感謝しています。


—— これだけの評価を獲得した今、やっと休養できるのでは。

お褒めに預かるのは嬉しいのですが、無理ですね。私にはすべきことが山積していますから。


マイク・アームス ・

ヘレン・ウッドワード動物センター長。1966年から1976年までニューヨークの ASPCA (アメリカ動物虐待防止協会) で地区マネジャーを務める。その後、ノース・ショア動物団体で事業本部業務局長を務め、20年間で400,000万件のペット縁組を行う。そこで国際的な 動物縁組運動「ペット・アダプト・ア・ソン」を開始し、9カ国、2,200シェルターを動員する。さらに、HWACにおいて「ホーム・フォー・ザ・ホリ デーズ」を発足。世界最大のペット・アダプション組織へと発展させ、昨年は261,000件のペット縁組を行なう。動物福祉コンサルタントとして全米に存 在するエージェンシーの機能向上にも尽力。現在、妻、娘、犬3匹、猫5匹とともにソラナビーチに在住。ヘレン・ウッドワード動物センターについての詳細 や、寄付金、ボランティアについては http://www.animalcenter.org まで。

(2004年12月1日号に掲載)