—— サンディエゴで定期的に開催されているコミック=コンは、いつ始まったのですか。 1970年にスタートして34年間続いています。年に2回開催された年もあったので、7月22~25日に予定している今年のイベントで35回目を数えます。どのように運営してきたのか、私には説明できません! 34年前に US・グラント・ホテルの地下で初めて開催された時の参加者は僅かに300人で、それはコミック本やコミックアート、コミックライティングが好きな人々の同好会でした。彼らはメディアから見放されたと感じていました。世間ではコミックアートは雑誌などと同様に読み捨てるものとして見なされていたからです。このイベントのアイデアはタイムリーでした。何故なら、その価値を知らない人々が屋根裏を掃除した際に、そこに置かれていた値段の付けようのないコミック本のコレクションを顧みることなく、捨てられようとしていたからです。このような話は全てを語ることの出来ないくらい、これまでに沢山耳にしました。 ——「同好会」 的な集まりが今日のようなイベントに発展した経緯は。 規模と人気は拡大し続けました。私たちは会場を US・グラント・ホテルからエル・コルテスへ移動し、暫くの間はそこで開催しました。当時の日々は多くの長年のファンにとって良き想い出となっています。ある夏には UCSDのキャンパスでもイベントを開催しています。その後、現在のパシフィック・シアターであるコンベンション・アンド・パフォーミング・アーツ・センターに移動し、そこでもスペースが限界となったので、最終的にコンベンション・センターのオープンと同時に会場を移しました。当初、私たちは1~2ホールを使用していましたが、それ以上の場所が必要になるとは誰も考えていませんでした。そのうち多少の拡張を必要とするかもしれないとの憶測を裏切って、コミック=コンの規模は急速に拡張していきます。今まで参加者は年々約2,000人のペースで増えていましたが、特にここ4年間で飛躍的な増加を遂げました。2001年の53,000人から翌年は63,000人、そして去年は75,000人という来場者数を記録しました。私たちは人々に自分の趣味を他人と分け合う場所を提供しましたが、かつて考えたよりもよりも世の中には多くの人々がこのメディアに興味を持っていた事実を知りました。以前のコミックファンは注目を集めることもなく、コミックの世界は一般的に多くの誤解や汚名に耐えてきましたが、私たちのイベントが成長するとともに、正当性が認められるようになりました。50年代には、コミックは破壊活動的と考えられブラックリストに載せられていた時期もあったのです。一部の人々はコミックは国家の理想をサポートしていないと感じていたようです。今、振り返ると、このような概念は愚かなものに感じられますが、当時の人々はコミックやそのキャラクターの道徳性に疑問を抱いていたのです。 —— コミック=コンの会場では何が行われていますか。 展示会のフロアーの観覧に加えて、2つのフロアーのミーティングスペースではドローイング・クラスからコミックや映画についてのライティング方法まで、ポピュラーアートについてのディスカッションやワークショップなどが開催されます。今年はフィルムトラックや独自のインディペンデント映画祭が行われます。私たちは人々にこの分野のメディアへ参加する方法を知ってほしいと思っています。何年もの間、私たちはアーティスト、ライター、フィルムメーカー、プロデュサー、衣装デザイナーなど、10,000~12,000人もの業界の専門家たちを呼び寄せ、人々が連絡を取り合う機会を提供してきました。これも全て入場料に含まれています。来場者は45万スクエア・フィートの広大なホールにある900もの展示品を観て大部分の時間を過ごします。それはとてもエキサイティングな時間ですが、それ以外にも仮装大会など、様々な行事が行われています。同時に、アーティストやクリエイターたちは無料でショーへ参加できることから、サンディエゴは創造性豊かな才能を持つ人々の集合場所となりました。 —— 参加者は毎年訪れる熱心なファンが多いようですが、彼らはどのような人々ですか。 報告によると、私たちのショーに魅了されている人々のほとんどは物事の最先端を好む人たちです。そこにはサーファーやスケート・パンクス、ビジネスマン、医者、弁護士までの人種がひしめき、それぞれの境界線を越えて芸術的なもの、クールで革新的なこと、知的なチャレンジ ̶̶̶ を求めるという意識を共有して集まった人々です。総合的に見ると、映画は封切られた最初の週末に観賞し、インターネットを好み、最新のコンピュータを携えて、ビデオゲームやポップカルチャーに精通した人たちです。彼らはコミックや映画ばかりでなく、ポップカルチャーのあらゆる分野において最前線を歩んでいる人たちなのです。皮肉なことですが、彼らの存在はコミックの歴史と同様、長年社会的に軽視されてきました。彼らは単にコミックファンで、コミックがすべてという以外何者でもありません。ところが、マーケティングの人々はそれが巨大な市場価値であることを認識し始めたのです。私たちのファンは自分の好みを知っており、コミック=コンのような場所に集い、それらを購入するからです。 数年前、私たちは25ドルの小切手が入った郵便物を受け取りました。一般的に、人々からの送金はアプリケーションやフォームとともに送られてきます。ところが、この中には手紙が入っていたのです。サンディエゴを訪れたこの紳士は、コンベンション・センターの脇を歩いていてコミック=コンが開催されている様子を目にし、好奇心から会場から出てくる人に何が行われているのかと聞いたそうです。その来場者はコミック=コンについて説明し、自分はもう十分に楽しんだからと彼に入場バッジを手渡したといいます。紳士は会場へ入り、楽しい時間を過ごしたとか。それで、彼は自身の入場料分の小切手を送ってきたのです。想像し難い話ですが、このように私たちは心から愛するファンに囲まれています。 ——イベントが成長するに従い、目標は変わりましたか。 不思議なことに変わっていません。コミック=コン・インターナショナルは主にコミックを通してポピュラーな芸術を一般大衆に紹介するという使命を担っています。私たちの思いは常にコミックや印刷物、そしてキャラクターに向けられています。ショーの人気が高まるにつれ、特別ゲストの出演リストも増え始めました。例えば、去年はハリー・ベリーを始め、"Kill Bill"のプロモーションでクエンティン・タランティーノ監督が、"Tomb Raider" のアンジェリーナ・ジョリーが姿を見せました。私たちはそれ以前から常にハリウッドとは親密な関係にありましたから。 —— "Spider-Man" などのコミックを原作とした映画の成功の余波で、ハリウッドとのコネクションは強まりましたか。 最近、私たちはハリウッドのスタジオから更なる注目を集めていますが、それは最近の現象というわけではありません。1973年当時、アカデミー賞受賞監督フランク・キャプラは私たちのゲストの1人でした。映画とコミック、コミックアートにおいて互いに共通する関心は常にありました。コミックは映画界の脚本家、監督といった種類の人々にとって重要な長い歴史があるのです。映画スタジオや開発部門のエグゼクティブたちが次々とロスアンジェルスから訪れ、映画のための人材や道具、そして次なる優れた映画のアイデアを模索しています。コミックアートの素晴らしい特徴の一つは、ストーリーやイメージが既に決まっているため、スタジオ側はコミック=コンへ来て、テーブルに並べられたコミックを手に取り、それらをチェックするだけでよいのです。それはまるで絵コンテのようなものです。 多くの人が 『スター・ウォーズ』 をコミックのように語るのは興味深いことです。ルーカス・フィルムは私たちのショーに最初に出展したスタジオです。彼らは早くからショーに対する理解と認識を深めていて、1976年にサンディエゴの会場に来て、展示場のフロアに最新作 "Star Wars" のプロモーション用ポスターや印刷物を並べました。そして、公開の1年も前から映画シーンの一部などを紹介しました。私たちと彼らの密接な関係はそれ以来ずっと続いています。『スター・ウォーズ』 の25周年記念の際に、ルーカス・フィルムはマーク・ハミルやキャリー・フィッシャー、ハリソン・フォードのスクリーンテストなどを含む興味深い記録、それに編集室に保管してあった未公開シーンの映像などを提供してくれました。それはとても魅力的な出来事でした。特に、『スター・ウォーズ』 の大ファンである私にとっては。 —— あなたがコミック=コン・インターナショナルに関わった経緯は。 私は1994年からマーケティングと広報の主任を務めていますが、1984年頃にボランティアとして参加したのが始まりです。政治キャンペーンの仕事をしていた私は、コミック=コンの委員をしている友人の1人から幾つかのプレスリリースを書いてほしいと頼まれました。それを契機に毎年手伝うようになり、やがてイベントが成長するに従って仕事が増えたことから、彼らは広報分野の人間を雇うか、常設のポジションに私を採用するかという決断を迫られ、それ以来、私はここにいます。毎年この時期になるとストレスが溜まるにしても、私はこの仕事をとても気に入っています。こんな仕事に関わって幸せでないという人がいるでしょうか? —— あなたはどちらかというと映画ファンですか、それともコレクター。 私は常に映画の大ファンでした。実際、私の経歴は映画がベースです。そのため、時々映画の仕事を手掛ける機会のあるここでの役割には十分に満足しています。かつて、私は 『スター・ウォーズ』 の印刷物を集めていましたが、最近は昔ほど集めているとは言えません。そうですね、最近では映画やコミック、ホッケーなどアクション人形を幾つか手に入れました。実は、私はクリス・チェリオス (レッドウィングズ) の大ファンなのです。可笑しなことに、私はここで働き始めた時にコミックを読んでいなかったにも拘らず、既に多くのことを知っていました。勿論、ここで働く間に様々なジャンルについて学び、私自身が楽しめる事柄も探し始めました。私たちは大小を問わず出版業界をサポートしているため、個人的に読んだ作品の言及は避けますが、戦争ものの物語やマンガは常に楽しんでいます。多分、それは私が子供時代を佐世保などの米軍基地で過ごし、軍隊ごっこをしながら育ったからかもしれません。私が日本に滞在している間、ウルトラマンの大ファンだったし ̶̶̶。とにかく、好きなものが何であれ、多種多様なコミックの種類がある限り、自分に語りかける何かを見つけるに違いないのです。 ——アメリカと他国とではコミックについての考察の違いはありますか。 勿論あります! アメリカではほとんどのコミックはアメリカンアートの一部として受容されてきました。しかし驚くべきことに、日本を含むそれ以外の世界では更に熱烈な反応があります。多くの国々では、大人たちが電車の中で絵と言葉だけの単純なストーリーで構成されたマンガや小説などを読んでいる場面を目にします。私にとって興味深いのは、日本を始めとするアジア諸国、ヨーロッパ、南アメリカではコミックやアニメーションが主流のマーケットを形成し、それが受け入れられているということです。劇場で公開されたアニメ映画は好評で、それがアメリカへ上陸すると子供用のメディアのような扱いを受けます。日本では、大人がアニメーションによる日本のヒット作を映画館へ観に行くのは不思議な現象ではありません。私はこのギャップはアメリカでも幾分かは埋められてきたと感じますが、"My Neighbor Totoro" (邦題 『となりのトトロ』) のような奥深いアニメを大人も観るようになれば素晴らしいと思います。また、イベントでもヨーロッパや日本から多くの人々が参加するようになってから、このような影響が見られます。これらの国々ではコミック=コンのような催事が存在しないため、展示者または観客として遠路はるばるサンディエゴを訪れるのです。海外では政府もコミックというメディアを認識しています。数年前、私は第5回アジア・マンガ・サミットへ招待されました。それはとても不思議な体験でした。日本、台湾、中国、その他多くの環太平洋地域の国々が参加し、この業界について討論していました。誰もこのメディアが持つ強い影響力を認識しています。それは、私たちが手懸けていることの意義を認識させる強力な確証となっているのです。 ——今年のビッグイベントは何ですか。 言葉で表現するのは難しいですね…。私たちが計画を立てている間にも、ショー自体が発展していく傾向があるからです。来場者数の見通しや、特筆すべき催事について多くの人が尋ねます。それはポケモンやアニメかもしれないし、"Spider-Man" や 新作の "Batman"、あるいは "Star Wars" 新エピソードなどの公開間近の大型映画のスターかもしれません…。結局、実際に開幕するまで、私たちは本当に分からないのです。ショーはそれ自体がとても流動的で変化していく、まるで生き物のようものなのです。例えば、私たちは常にバッフィー役 (TVシリーズ "Buffy the Vampire Slayer" より) のサラ・ミッシェル・ゲラーのような大物セレブたちの来場を予定していますが、それ以外のスターも予告なしで現われるということに気付く人はいません。昨年はハリー・ベリーやアンジェリーナ・ジョリーがイベント終了間際に訪れ、その前はアーノルド・シュワルツェネガーが不意に来場し、ベン・アフレックが "Daredevil" のプロモーションで登場しました。このように開催期間中は、私たちが正式に告知した内容を飛び越えて、より多くの出来事が常に発生します。それが好奇心をそそる要素でもあるのです。そのため、私は今年のビッグイベントが何になるのかまだ分かりませんが、今年も素晴らしいショーになることは確信しています。 (2004年7月16日号に掲載) {sidebar id=44} |