December 3, 2025

カリフォルニア賃貸市場、借り手有利の家賃下落 サンディエゴ郡 70%供給増

11/26/2025

▪️全米で家賃下落カリフォルニアも転機
全米のアパート家賃は秋の閑散期に入り、Zumper (不動産情報専門サイト) の全米家賃指数では4か月連続で下落した。全米の1ベッド平均は約1,650ドルだが、カリフォルニア州の中央値は2,059ドルと依然高水準で、州内の地価・生活費の高さが際立つ。それでも供給が需要を上回り始め、家賃は全体に軟化傾向が強まっている。雇用増の鈍化や消費者心理の弱さに加え、引っ越しを控えて契約更新を選ぶ借り手が増えていることが、市場の「冷え込み」を後押ししているという。

▪️借り手は交渉の好機貸し手は譲歩で勝負
在庫過多の局面では、入居者側に条件交渉の余地が生まれる。家賃そのものの引き下げだけでなく、カーペットや家電の更新、同一物件内でより望ましい場所への住み替えなど「現物・サービスのアップグレード」を求めるのも有効だ。反対にオーナー側は、価格の柔軟化や入居特典 (フリーレント、初月割引、引越し支援など) を工夫し、供給が吸収されるまで粘り強く対応する必要があるとされる。

▪️ベイエリア高止まり南カリフォルニア供給増
カリフォルニア州内で最も高額なのは依然としてサンフランシスコ・ベイエリアで、他地域との差は大きい。一方、南カリフォルニアでは新規供給が急増し、借り手優位の色合いが濃い。ロサンゼルス郡では1ベッド家賃が前年比6.3%下がって2,250ドル、2ベッドも9.9%減の3,100ドル。供給は前年比93.7%増と突出し、供給ピークは2026年半ばと見込まれるため、値下げ圧力は当面続く可能性が高い。

▪️インランドエンパイアI-15I-215 沿線開発で値下がり
リバーサイド、サンバーナディーノ両郡では I-15、I-215 沿いに大規模賃貸開発が相次ぎ、家賃は5か月連続で前年割れ。1ベッドの年間下落率はオンタリオ-3.8%、リバーサイド-3.4%、サンバーナディーノ-1.4%と緩やかな低下が続く。実勢家賃 (2025年秋) はオンタリオ2,010ドル、テメキュラ1,982ドル、ムリエタ1,815ドル、リバーサイド1,720ドル、サンバーナディーノ1,450ドル程度で、供給吸収が進むにつれて調整が続く構図だ。

▪️サンディエゴ郡オレンジ郡歴史的な供給制約が緩む
ロサンゼルスや内陸部と異なり、サンディエゴ郡とオレンジ郡は2026年にかけて物件数がさらに増える見通しで、今後12か月の供給増が70%超と全国でも例外的に大きい。すでに影響は家賃データに表れ、サンディエゴの1ベッドは前年比6.3%減、2ベッドも4.8%減。アナハイムでも1ベッド-1.9%、2ベッド-3.0%と下落している。但し、サンディエゴで1ベッド1,950ドル未満を探すのは難しい状況で、55歳以上向けコミュニティを除けば、安値帯はエルカホン周辺の1,700~1,950ドル程度に限られる。オレンジ郡ではアナハイム、ブレア、フラートン、サンタアナなどで2,000ドル未満の1ベッドが比較的見つけやすいとされ、同地域もロサンゼルス同様、2026年まで下落基調が続く可能性がある。

▪️見通しと生活コスト
秋冬のスローペース期には入居促進のディールが出やすく、タイミングを選べる借り手は好条件を狙いたい。一方で、CPIの「住居費指数」は前年9月比で3.6%上昇しており、家賃が下がっても生活コスト全体が劇的に軽くなるわけではない。供給増が続く2026年に向けて、地域差を見極めつつ、柔軟に動くことが重要になる。