5/4/2025トランプ大統領による関税政策が、所得の低いアメリカ人ほど大きな経済的打撃を受けることが、税制専門のシンクタンク「租税・経済政策研究所 (Institute on Taxation and Economic Policy=ITEP)」の最新分析で明らかになった。関税は輸入品に課される税であり、そのコストは企業によって最終的に消費者に転嫁されることが多い。
ITEPの試算によれば、現行の関税政策が2026年まで継続した場合、年収29,000ドル未満の世帯 (下位20%) は平均で所得の6.2%に相当する追加的な税負担を被るとされる。一方、年収91万5,000ドル超の層 (最上位1%) では、同年の税負担増は平均で所得の1.7%にとどまる。このように、低所得世帯は上位層の約4倍の負担を強いられることとなる。
保守系シンクタンク「ヘリテージ財団 (Heritage Foundation)」も2017年に「関税は名前を変えた税であり、特に食料や衣類のような、低所得層の生活費に占める割合が高い商品に影響する」と指摘していた。
また、イェール大学の「バジェット・ラボ (Budget Lab)」も関税が「逆進的」であると分析している。つまり、所得が低いほど負担が重くなる政策だという。特に、短期的には最貧層への税負担は富裕層の約2.5倍になるとした。バジェット・ラボの所長で、バイデン前政権時代にホワイトハウス経済諮問委員会のチーフエコノミストを務めたアーニー・テデスキー氏は「関税は低所得者ほど痛手を受ける」と警鐘を鳴らす。
スコット・ベセント財務長官は「関税によって一時的な物価上昇は起こりうる」と認めた一方で、ホワイトハウスは今後、減税法案を伴う包括的な経済政策の一環として関税政策を位置づけていると説明した。
なお、トランプ氏は現在、ほとんどの貿易相手国からの輸入品に10%の関税を課しており、メキシコおよびカナダの一部品目には25%、中国からの輸入品には最大145%の関税がかかっている。アルミニウム、鉄鋼、自動車など特定品目にも25%の関税が課されている。
このように、関税政策が低所得層に集中して重い負担を強いている現状は、今後の経済政策や選挙戦でも大きな争点となる可能性がある。